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77〔そう言われても……〕
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明神男坂のぼりたい
77〔そう言われても……〕
これで四冊目……。
大学の入学案内。
「明日香が、行きたいって言うからよ」
ブスっとしていたら、お母さんに苦い顔された。
元はと言えば、あたしが悪い。
先週の懇談で「演劇やりたいです」なんて、苦し紛れに言うたもんだから、お父さんとお母さんが相談して、あちこちの演劇科のある大学から入学案内を取り寄せたんだ。それもネットで申し込むもんだから、あたしは、ほんと寝耳にミミズ……ミスタッチ。寝耳に水です。
「OG大学……KI大学……KZ大学……OS大学」
「こんなんも来てるぞ」
「ゲ……!」
大手劇団の研究生募集のプリントアウトしたやつが三枚。
「まあ、なにも、この中から決めなさいってことじゃないわよ。懇談のあと、明日香がなんにもしないで、紫陽花がドータラ、ウンコ踏んでコータラて、全然その気になってないみたいだから、刺激を与えるつもりで取り寄せたものだから、気楽に見ればいいよ」
と、母上はおっしゃる。
仕方ないんで、三階の自分の部屋に戻って、パラパラとめくってみる。
――豪華講師陣!――
――舞台で、もう一人の自分を見つけよう!――
――ここに、君の新世界!――
――人生の第一幕が、今始まる!――
四冊目で嫌になった。
考えてみなくても分かる。この四大学の定員合わせただけで1000人は超える。それに大学は四年制。つまり、入学しても、先輩が同じ数だけ居て、他の短大やら専門学校、劇団の養成所あわせたら、もう自宅通学可能な範囲の中だけでも10000人近い演劇科の学生やら研究生が居る。
これだけの需要が、この業界には無い。絶対!
プロでやっていけるのは、まあアルバイトみたいなのも含めて一割。専業でやれるのは……考えただけで恐ろしくなる。
「ビビっとるだけじゃ、いつまでたっても決心できないぞ」
寝るとき以外は上がってこないお父さんが、いつの間にか後ろに立ってる。
「人生と言うのは、石橋叩いていくもんじゃない。その時その時の出来心で分岐していくんだ。ま、明日香には、めったに人生訓めいたことは言わないけど、人生はやって失敗した後悔よりも、やらなかった後悔の方が大きい……と言うな」「そう言われても……」
「人生は短いぞ。こないだ女子高生だと思ってたのが、いつのまにか還暦前のオバハンだ」
ハックション! 二階のリビングで、お母さんがクシャミをした。
「まあ、ゆっくり考え……言っても秋の進路選択には決めなきゃだけどな……」
それだけ言って、お父さんは下に降りて行った。
―― 楽しい選択ではないか、命がかかってるわけじゃなし、ちょっとでもやりたかったら飛び込んでみろ ――
さつきも勝手なことを言う。
確かに、おとうさんの言うことにも一理ある。生まれて、まだ17年と2か月の人生だけど、思い返すと小学校、保育所の時代なんか、ついこないだだった。
関根先輩のことも頭に浮かぶ。関根先輩の気持ちが揺れてるのは、あたしの錯覚だけではないと思う。そうでなきゃ呼びもしないのに運動会観にきたりしないだろ。麻友に鼻の下伸ばしたのも照れ隠し。踏み切れないのは、あたしの方かもしれない。
ちがう、あたしの進路のことだ。
確かに、コンクール出た時も、他の学校の子は大根だった。舞台で、その場所に立ってるということは、みんな役として理由か目的があるからだ。台詞は思考や行動の結果で、演技で一番大切なのは対象を、ちゃんと見て聞くこと。その結果自然に台詞が出てくるまで読み込んで演りこまなきゃならない。
ダメ、今は自分のことだ。
「明日香、こんなのきたぞ!」
また、お父さん。今度はプリントアウトした紙一枚。
読んでびっくりした!
それは、AKR47の書類選考合格の書類だった……。
77〔そう言われても……〕
これで四冊目……。
大学の入学案内。
「明日香が、行きたいって言うからよ」
ブスっとしていたら、お母さんに苦い顔された。
元はと言えば、あたしが悪い。
先週の懇談で「演劇やりたいです」なんて、苦し紛れに言うたもんだから、お父さんとお母さんが相談して、あちこちの演劇科のある大学から入学案内を取り寄せたんだ。それもネットで申し込むもんだから、あたしは、ほんと寝耳にミミズ……ミスタッチ。寝耳に水です。
「OG大学……KI大学……KZ大学……OS大学」
「こんなんも来てるぞ」
「ゲ……!」
大手劇団の研究生募集のプリントアウトしたやつが三枚。
「まあ、なにも、この中から決めなさいってことじゃないわよ。懇談のあと、明日香がなんにもしないで、紫陽花がドータラ、ウンコ踏んでコータラて、全然その気になってないみたいだから、刺激を与えるつもりで取り寄せたものだから、気楽に見ればいいよ」
と、母上はおっしゃる。
仕方ないんで、三階の自分の部屋に戻って、パラパラとめくってみる。
――豪華講師陣!――
――舞台で、もう一人の自分を見つけよう!――
――ここに、君の新世界!――
――人生の第一幕が、今始まる!――
四冊目で嫌になった。
考えてみなくても分かる。この四大学の定員合わせただけで1000人は超える。それに大学は四年制。つまり、入学しても、先輩が同じ数だけ居て、他の短大やら専門学校、劇団の養成所あわせたら、もう自宅通学可能な範囲の中だけでも10000人近い演劇科の学生やら研究生が居る。
これだけの需要が、この業界には無い。絶対!
プロでやっていけるのは、まあアルバイトみたいなのも含めて一割。専業でやれるのは……考えただけで恐ろしくなる。
「ビビっとるだけじゃ、いつまでたっても決心できないぞ」
寝るとき以外は上がってこないお父さんが、いつの間にか後ろに立ってる。
「人生と言うのは、石橋叩いていくもんじゃない。その時その時の出来心で分岐していくんだ。ま、明日香には、めったに人生訓めいたことは言わないけど、人生はやって失敗した後悔よりも、やらなかった後悔の方が大きい……と言うな」「そう言われても……」
「人生は短いぞ。こないだ女子高生だと思ってたのが、いつのまにか還暦前のオバハンだ」
ハックション! 二階のリビングで、お母さんがクシャミをした。
「まあ、ゆっくり考え……言っても秋の進路選択には決めなきゃだけどな……」
それだけ言って、お父さんは下に降りて行った。
―― 楽しい選択ではないか、命がかかってるわけじゃなし、ちょっとでもやりたかったら飛び込んでみろ ――
さつきも勝手なことを言う。
確かに、おとうさんの言うことにも一理ある。生まれて、まだ17年と2か月の人生だけど、思い返すと小学校、保育所の時代なんか、ついこないだだった。
関根先輩のことも頭に浮かぶ。関根先輩の気持ちが揺れてるのは、あたしの錯覚だけではないと思う。そうでなきゃ呼びもしないのに運動会観にきたりしないだろ。麻友に鼻の下伸ばしたのも照れ隠し。踏み切れないのは、あたしの方かもしれない。
ちがう、あたしの進路のことだ。
確かに、コンクール出た時も、他の学校の子は大根だった。舞台で、その場所に立ってるということは、みんな役として理由か目的があるからだ。台詞は思考や行動の結果で、演技で一番大切なのは対象を、ちゃんと見て聞くこと。その結果自然に台詞が出てくるまで読み込んで演りこまなきゃならない。
ダメ、今は自分のことだ。
「明日香、こんなのきたぞ!」
また、お父さん。今度はプリントアウトした紙一枚。
読んでびっくりした!
それは、AKR47の書類選考合格の書類だった……。
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