魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ こ 小悪魔だけどな(≧ヘ≦)!

武者走走九郎or大橋むつお

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1『お早うございます』

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ こ 小悪魔だけどな(≧ヘ≦)! 


1『お早うございます』 




 校門をくぐると昇降口に着くまでの三十メートルほどが、ちょっとした森の小道みたいなアプローチになってるんだ。ナラとかブナとかトウヒとかが植えてあって「赤ずきんとか白雪姫とかが歩いていそう」と知井子なんかは言う。赤ずきんと白雪姫が似合うんなら、オオカミだって毒リンゴの魔女だって似合うんだけどな。口に出しては言わねえ。


「お早うございます」

 門衛のオジサンに、つものように朝の挨拶。

「おはよう」

 自衛隊を定年退職した門衛の田中さんは、きちんと姿勢よく挨拶を返してくれる。まだ、生活指導の先生が立つのには早い時間なんで気分がいいぜ。

 一度ちょっとしたことで遅刻寸前に登校したことがあるんだけどな。

 コンビニの角を曲がったところから、生活指導の先生たちが、ブタを追い立てるようにセカせているのに出くわしてイヤな思いをした。

 オラァ! 走れぇ! 閉めるぞぉ! 遅刻っ! オラオラ! 

 字にすると、ちょっと下品というていどだけどな。ちかごろの教師は「殺すぞ!」「しばくぞ!」「死ねぇ!」とかの定番の罵声を使えない分、籠められた気持ちがひでえ。 

 地獄の番犬ケルベロスだって、もう少し情があるぞ。もうちょっとでセンコウどもをゴキブリに変えて踏み潰……したらバッチイから、殺虫剤かけて殺してやろうと思ったけどな。補習中でA級魔法は禁止だから、グッと堪えたぞ。

 それから、マユはかなり余裕をもって登校するようにしてる。ブタ扱いもヤだし、つまらないことでキレる自分もヤダし、むろん補習に落ちるのもヤダしな。

 え、なんの補習かって?

 そりゃ、またあとでな。
 

 そのアプロ-チを半分ほど行くと、左の森の方で楽しげな声がしたぜ。

 森っていうのは、正門入った脇に木が固まって植えてあるとこな。外から見える学校のイメージを良くすんのにこさえてあって、学校案内の表紙にもなってるって聖城学院自慢の森だ。外から見るとアプローチの森と重なって、どっかから『魔弾の射手』の魔弾が飛んできそうな趣かあるんだ。

 で、その声が、沙耶と、里依紗と、知井子であることがすぐに分かったぜ。

マユ:「おはよう、なにしてんだ、そんなとこで?」

里依紗:「あ、おはよ!」

沙耶:「おはようマユ!」

知井子:「おは~(^▽^)/」

 三人は、ちょっとびっくりしたように挨拶を返してきたぞ。

「なんか、楽しいことでもあったのかぁ?」

 互いに顔を見交わす三人。


里依紗:「……マユならいっか」


 里依紗が言うと沙耶と知井子が頷いて、写メを見せてくれる。


マユ:「うお、カワイイじゃん!」

沙耶:「でしょでしょ、でしょ(´;ω;`)!」

 沙耶が、感情移入しすぎて、涙目で言いやがる。

知井子:「ほんと、こんなにかわいいのに……」

里依紗:「可哀そうだ……」


 知井子と里依紗のリアクションも変だ。

 写メには、生後五ヶ月ぐらいの赤ちゃんの笑顔が写っている。

マユ:「里依紗の隠し子か?」

 バカを言ってみた……いつもならオバカなリアクションが返ってくるのに、シンとしちまいやがる。

マユ:「な、なんだよ」

里依紗:「こ、これ、恵利先生の赤ちゃんなんだ……」

マユ:「恵利先生?」

沙耶:「マユが転校してくる前に、お産で休んだ先生。マユは知らないわよね」

知井子:「ほら、これが恵利先生だよ(´# ω #` ) 」

 唐突に切り替えられた写メには、赤ちゃんをダッコした幸せ満杯の女先生が写っていたぜ。

マユ:「お、聖母子(きらいだけどな)みてえじゃねえか!」

 うちはミッションスクールだから、一番の誉め言葉で例えてやった。

里依紗:「清美ちゃんていうんだ、この赤ちゃん(^_^;)」

 涙が止まらない沙耶に代わって、里依紗が言う。

 清くて美しい……ますます聖母子だ、クソ!

 三人の心が開いて、ぜんぶ分かった。

マユ:「……恵利先生って病気なんだなぁ(-_-;)」


 登校する生徒達のさんざめきが一瞬途絶えたような気がした。


知井子:「ん? どうして分かったの……?」

 知井子が不思議な顔をした。

マユ:「あ……なんとなく。だってよ、とっても嬉しい話しなのに、三人とも涙流したり、悲しそうにしてるじゃねえか」

沙耶:「そ、そうよね、こんな顔してたんじゃね。ワケありだって分かっちゃうよね」

知井子:「骨髄性ナントカって病気で、あと二年ほどしか生きられないんだ」

里依紗:「妊娠中に分かったんだけど、それでも恵利先生は清美ちゃんを産むことにしたんだよ」

沙耶:「中絶すれば、放射線治療とかもできたらしいんだけど……ね……」

 沙耶が、また言葉につまりやがった。

知井子:「で、やっと心の整理もついたんで、昨日会いに行ったのよさ、三人で」

沙耶:「先生、清美ちゃんが三歳になるまでは生きてられないって……」

知井子:「でも、心はずっと清美ちゃんといっしょだって言うのよさ、先生」

里依紗:「この写メ撮ったあと、先生、ポツンと言ってた……せめて、この子があなた達ぐらいになるのを見届けたかった……って」
 
 生活指導の先生達が、校門に向かい始めた。

 二年の学年担当の梅崎が、チラリとこちらを見やがる。

「なにやってんだ、そんなとこで! スマホで変なサイト見てんじゃないだろうな。授業中だったら没収だぞ!」

マユ:「始業には、まだ十分あるしぃ」

 梅崎の命を縮めてやりたい衝動に駆られたぞ。むろん、今のマユには、そんな力はねえ。A級魔法は禁止だしな。

 校門に向かう梅崎の背中に、四人で思い切りイーダ!をしてやった。

マユ:「その写メ、マユのに送って」

里依紗:「いいよ。ね?」

 里依紗は、沙耶と知井子の顔をうかがった。ボーイッシュだけどこういうさりげないところで、友だちを大事にする里依紗をマユは好きだぞ。

マユ:「ほい、チョイ待ってね……」

 送られてきた写メにちょっと手を加えた。

マユ:「送り直すぞ……ほい!」

沙耶:「どうかした?」

マユ:「@マーク出して、二回クリックしてみ」

 トントン

「「「……わあ、なにこれ!?」」」

 里依紗たち三人は、画面に釘付けになりやがったぜ。

マユ:「清美ちゃんの十七歳の姿だ」

知井子:「わあ、カワイイ……ってか、美人なのよさ!」

里依紗:「すごい変換機能がついてんだね……」

沙耶:「あ、もとの赤ちゃんにもどっちゃった!」

 三人は、ちょっぴりしぼんだ顔になりやがった。

マユ:「一日一回、十秒間しか見られねえんだ。それと、三回コピーしたらコピーガードがかかっちまうから、必ず最初に恵利先生に送ってあげるんだぞ」


 そのとき、無情な予鈴が鳴った。

 チャラーンポラーン チャランポラーン……と、マユには聞こえてしまう。


――あの写メ、一回見れば一日寿命が延びる。そういう魔法がかけられている――


 ギリギリギリ……

 頭のカチューシャがギュっと締まってきやがる。

 イテ……!

 このカチューシャ、悪魔としてやってはいけないことをすると頭を締め付ける仕組みになってやがる。

 でも、痛みは一瞬だった。

――フフ、魔界としても今のは判断に苦しんだんだな。しっかりしろよデーモン先生、マユは魔界の補習のためにこの世界にきてるんだぞ――


 靴を履きかえるとき、マユが顔をしかめたのに知井子は気づいた。


――チ、お仕置きすんのはいいけど、気づかれっちまうじゃねえか!――


 デーモン先生からは返事は無くて、何事もない聖城学院の一日が始まったぜ。




☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
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