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94『三人ともぶっ飛んだ』

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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

94『三人ともぶっ飛んだ』小松 





 マッジさんがいなければテニスは諦めていただろう。

 わたしたちに、マッチョ七人を相手に交渉する度胸は無い(^_^;)。

 で、その交渉の結果、仲良く一緒にプレイすることになった。



 ―― なんでじゃ!? ――



 コートの向こうとこっちに分かれてプレイ開始!

 袖口からタトゥーが覗いて、身長は190はあろうかというマッチョが進み出てきてネット越しの握手。

 ガシガシ!

 ボクシングのグローブくらいの手で握手され、振動で景色がブレて、わたしのちっこい手は完全に呑み込まれる。

「『我々は初心者なんで、どうぞお手柔らかに』だそうです」

 マッジさんが同時通訳。

 通訳が終わると、マッチョは一瞬サングラスをとった。

 意外に甘いマスク……というか子供っぽいスマイルに、ちょっと拍子抜け。

 アメリカ人というのは一般的に歳より老けて見える。それが、この童顔はいったい?

「アメリカには、ベビーなんちゃらとか、なんちゃらキッドとか童顔の悪もいるって云うよ(,,꒪꒫꒪,,)」

 もなかさんが小声で忠告。

 で、ゲームを始めると「おちょくってんのか!?」というくらいにマッチョたちはヘタクソだった。

 サーブは確かに力があるけど、力任せのためか、ことごとくがファウル。

 Goddamn!(こんちくしょー!!)

 わたしにも分かる英語で悔しがるマッチョたち。ラブ:フィフーティーンになるとさすがにコントロールを意識してきた。

 カッポーーーン

 意識すると、今度は極端に球速が落ちて簡単に打ち返せる。

 打ち返したボールは三回に一回くらいしか返ってこない。ヒットしたボールも力任せなので、明後日の方向に飛んでいき、あっという間に勝ってしまった!

 童顔マッチョだけかと思ったら、他の六人もことごとくヘタクソマッチョ。

「やっぱりインターハイに出るような女子高生は違うなあ~……だそうです」

「「「イ、インターハイ? 女子高生?」」」

 三人ともぶっ飛んだ。

「そう紹介したんです、インターハイに出るための練習に来てるって」

「はあ……で、こちらの方々は?」

「サンフランシスコのお巡りさんたちです、休暇でハワイに来られてるんです。テニスはEスポーツではグランドスラム級だそうですよ」

「Eスポーツ?」

「……これですよ」

 コントローラーを持つ仕草でアキバでもお馴染みのテレビゲームだと分かった。

 プレイが終わって七人のマッチョさんたちと改めて挨拶。

 サングラスをとった七人は、みんな人のいい顔をしていた。

 一人童顔のマッチョさんはトム・クランシーというなり立てホヤホヤの19歳だと分かった。

 マッジさんはマッチョさんたちにも種明かし。

 オオ! アメージング!!

 わたしたちがアキバのメイドだと知ると、驚いたり喜んだり。

「実は、ホノルルにもメイド喫茶がオープンしたんですよ。彼女たちは、その指導にやってきたんです」

 マッジさんが微妙に誇張し、ランチを食べた後、みんなでハワイ@ホームに出向くことになった。


 マッジさんの凄さを認識したのでした……。



☆彡 主な登場人物

妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
百地美子 (シグマ)     高校二年
妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
妻鹿幸一           祖父
妻鹿由紀夫          父
鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 小菊の文学上のカタキ


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