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17[クレアの役割]
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宇宙戦艦三笠
17[クレアの役割]
宇宙戦艦三笠は4人で十分コントロールできるようになっている。
艦長:東郷修一 副長兼航海長:秋野樟葉 砲術長:山本天音 機関長:秋山昭利
これで十分だった。そこにボイジャーから変態したクレアが加わった。アナライズの補助ということになっているが、三笠にはAIの立派なアナライザーが付いていて、クレアにはやることがない。
クレアは、一見どうでもいいことをやりだした。
艦内のあちこちに、小ぶりな一輪挿しを付けて、コスモスのような小さな花を活けたりした。
「あら、コスモス」
樟葉が二日目に気づいて、それっきりで、なんの効果もないようだったが「あれクレアが活けてくれたの?」「はい……」それだけで、三笠の何かが温まった。
でも、三笠のどこにコスモスが咲いていたんだろう?
ちょっとだけ不思議になった。
樟葉が航路の確認をしようと宇宙海図を広げると、直ぐ上の戦闘指揮所でなにやら気配。
あら?
ラッタルを上がると、ネコメイドたちがしゃがんで何かを見ている。
邪魔しちゃ悪いと待っていると、反対側のラッタルを下りていく。
なんだろ……上がってみると東郷提督の標の前にフラワーポッド。いくつもの花が芽を出したり蕾を膨らませていたよって、目をへの字にしていた。
その話を聞いて、小学校で生き物係だったのを思い出した。ウサギとか飼いたかったんだけど、先生にダメだと言われて、樟葉は花の世話を始めた。あれ、すみれだったかな? 見に行こうかと思ったら、トシが叫んだ。
「おれグリンピース食っちゃった!」
夕食の肉じゃがにグリンピースが入っていた。トシはグリンピースが苦手だ。だから三笠のアナライザーはメニューの中にグリンピースは入れなかった。クレアは、それに干渉してグリンピースを入れたんだ。クレアと目が合うと、クレアは「え?」という顔をしている。
トシは考えた……というより思い出した。
トシは妹を亡くしてからグリンピースを食べなくなった。トシの母は、トシの食べるものにグリンピースを入れなくなった。
―― よかったね、一つ克服できた ――
クレアの小さな声が、直接心に響いてきた。
―― 克服……そうだ。グリンピースは由美が好きだったんだ ――
妹が死んでから、トシはグリンピースを食べなくなったことを思い出した。
「0・2パーセクの座標に船の残骸。モニターに出すわね」
樟葉がモニターに出した映像には、定遠の残骸が映し出されていた。テネシーの時とは違って、船の形を留めないほどに壊されていた。
「生命反応は?」
「ない……」
「全滅か……?」
「いや、痕跡もないから、元々無人の船だったようね」
「もともとハリボテのレプリカだったからね」
「贅沢なドローンだ」
天音が、無感動に締めくくった。
「じゃ、記録だけして、先を急ごう」
三笠のアナライザーは数秒で記憶し終えると、乗組員たちといっしょに定遠のことは忘れてしまった。三笠は絶えず前を向いている船なのだ。
「定遠から光子魚雷」
クレアが短く言った。
「え!?」
樟葉の手が反応した。後部バリアーを張り、フレアーを放ち、船を面舵に切った。その間0・2秒。
連携が良くなった。
ドーーン!
艦尾の方で大きな衝撃があった。
フレアーと艦尾のバリアーに光子魚雷が命中した。三笠自体には損傷はない。
「危ないところだった……」
「定遠の残骸をダミーにして、光子魚雷を仕込んでいたんです。シュトルフハーヘンの得意技です」
「クレア、よく知ってたわね」
「ボイジャーでいたころに、いろんなことを経験しましたから……」
チョコレートのような香りがしているのに気付いた。
調べてみるとコスモスの香りだった。コスモスはチョコレートのような香りを放つ。その香りには鎮静作用があることも分かった。クレアに目をやると、少しニコリとした。
トシは気づいた。
グリンピースが嫌いだったのは、妹が死んだのは親が新しくても身に合わない自転車を買ってやったから……トシは、妹の死は自分にあると思って引きこもりになってしまったと思っていた。
だけど意識の底で、妹が死んだのは、半分は親のせいだとも思っていた。
臆病と裏表のトシの優しさは、それを押し殺して、グリンピースが嫌いということで現していたのかもしれない。
でも、知らずにグリンピースを食べてしまった。
アハハハ
士官食堂のみんなが笑った。
☆ 主な登場人物
修一(東郷修一) 横須賀国際高校二年 艦長
樟葉(秋野樟葉) 横須賀国際高校二年 航海長
天音(山本天音) 横須賀国際高校二年 砲術長
トシ(秋山昭利) 横須賀国際高校一年 機関長
ミカさん(神さま) 戦艦三笠の船霊
メイドさんたち シロメ クロメ チャメ ミケメ
テキサスジェーン 戦艦テキサスの船霊
クレア ボイジャーが擬人化したもの
17[クレアの役割]
宇宙戦艦三笠は4人で十分コントロールできるようになっている。
艦長:東郷修一 副長兼航海長:秋野樟葉 砲術長:山本天音 機関長:秋山昭利
これで十分だった。そこにボイジャーから変態したクレアが加わった。アナライズの補助ということになっているが、三笠にはAIの立派なアナライザーが付いていて、クレアにはやることがない。
クレアは、一見どうでもいいことをやりだした。
艦内のあちこちに、小ぶりな一輪挿しを付けて、コスモスのような小さな花を活けたりした。
「あら、コスモス」
樟葉が二日目に気づいて、それっきりで、なんの効果もないようだったが「あれクレアが活けてくれたの?」「はい……」それだけで、三笠の何かが温まった。
でも、三笠のどこにコスモスが咲いていたんだろう?
ちょっとだけ不思議になった。
樟葉が航路の確認をしようと宇宙海図を広げると、直ぐ上の戦闘指揮所でなにやら気配。
あら?
ラッタルを上がると、ネコメイドたちがしゃがんで何かを見ている。
邪魔しちゃ悪いと待っていると、反対側のラッタルを下りていく。
なんだろ……上がってみると東郷提督の標の前にフラワーポッド。いくつもの花が芽を出したり蕾を膨らませていたよって、目をへの字にしていた。
その話を聞いて、小学校で生き物係だったのを思い出した。ウサギとか飼いたかったんだけど、先生にダメだと言われて、樟葉は花の世話を始めた。あれ、すみれだったかな? 見に行こうかと思ったら、トシが叫んだ。
「おれグリンピース食っちゃった!」
夕食の肉じゃがにグリンピースが入っていた。トシはグリンピースが苦手だ。だから三笠のアナライザーはメニューの中にグリンピースは入れなかった。クレアは、それに干渉してグリンピースを入れたんだ。クレアと目が合うと、クレアは「え?」という顔をしている。
トシは考えた……というより思い出した。
トシは妹を亡くしてからグリンピースを食べなくなった。トシの母は、トシの食べるものにグリンピースを入れなくなった。
―― よかったね、一つ克服できた ――
クレアの小さな声が、直接心に響いてきた。
―― 克服……そうだ。グリンピースは由美が好きだったんだ ――
妹が死んでから、トシはグリンピースを食べなくなったことを思い出した。
「0・2パーセクの座標に船の残骸。モニターに出すわね」
樟葉がモニターに出した映像には、定遠の残骸が映し出されていた。テネシーの時とは違って、船の形を留めないほどに壊されていた。
「生命反応は?」
「ない……」
「全滅か……?」
「いや、痕跡もないから、元々無人の船だったようね」
「もともとハリボテのレプリカだったからね」
「贅沢なドローンだ」
天音が、無感動に締めくくった。
「じゃ、記録だけして、先を急ごう」
三笠のアナライザーは数秒で記憶し終えると、乗組員たちといっしょに定遠のことは忘れてしまった。三笠は絶えず前を向いている船なのだ。
「定遠から光子魚雷」
クレアが短く言った。
「え!?」
樟葉の手が反応した。後部バリアーを張り、フレアーを放ち、船を面舵に切った。その間0・2秒。
連携が良くなった。
ドーーン!
艦尾の方で大きな衝撃があった。
フレアーと艦尾のバリアーに光子魚雷が命中した。三笠自体には損傷はない。
「危ないところだった……」
「定遠の残骸をダミーにして、光子魚雷を仕込んでいたんです。シュトルフハーヘンの得意技です」
「クレア、よく知ってたわね」
「ボイジャーでいたころに、いろんなことを経験しましたから……」
チョコレートのような香りがしているのに気付いた。
調べてみるとコスモスの香りだった。コスモスはチョコレートのような香りを放つ。その香りには鎮静作用があることも分かった。クレアに目をやると、少しニコリとした。
トシは気づいた。
グリンピースが嫌いだったのは、妹が死んだのは親が新しくても身に合わない自転車を買ってやったから……トシは、妹の死は自分にあると思って引きこもりになってしまったと思っていた。
だけど意識の底で、妹が死んだのは、半分は親のせいだとも思っていた。
臆病と裏表のトシの優しさは、それを押し殺して、グリンピースが嫌いということで現していたのかもしれない。
でも、知らずにグリンピースを食べてしまった。
アハハハ
士官食堂のみんなが笑った。
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