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43[宇宙戦艦グリンハーヘン・5]
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宇宙戦艦三笠
43[宇宙戦艦グリンハーヘン・5] 修一
「ミネアさん、無理するのはよそうよ」
ミカさんの言葉に、ミネア司令は微かにたじろいだが、それはミカさんにしか分からなかった。
俺たちは、ミネアがミカさんの挑発に一歩前に出たようにしか見えなかった。
「そうやって、なにかあると、いつも一歩前に出てしまうのよね」
「なに……!?」
ミカさんは、ミネアの厳しい視線と言葉をサラリと躱して言葉を続けた。
「グリンハーヘンというのは悲しい名前ね。グリンヘルドにもなれずシュトルハーヘンにもなれない人たちのアイデンティティー。両方の母星から疎外された人たち。二つの母星は、地球侵略については共同戦線を張っているけど、内心では信じあっていない。だから、二つの母星の間に生まれたあなたたちは疎外され、軍の中でも、遊撃隊でしかいられないんでしょ?」
「わたしたちは選ばれた真のエリート部隊だ。だから、本隊が暗黒星雲の両脇を固めているのに、ドンピシャ三笠の真正面に出てくることができた」
「でも、だれも応援にこない」
「ステルスの三笠を見抜けたのは、このミネアだけだ!」
「でも、グリンハーヘンが停船して、動きがおかしいことは、グリンヘルドもシュトルハーヘンの艦隊も分かっている。だのに助けにもこないし、この船も応援要請をしない」
「三笠捕獲の栄誉は、このグリンハーヘンだけにある。味方と云えど邪魔はさせない」
「今の状況は逆でしょ。いくら遊撃部隊でも、こんな状況なら、なんらかの連絡や、作戦行動があって当たり前じゃないかしら?」
その時、グリンハーヘンの艦体が身震いするように揺れた。
ワ!? ウワ! ニャ!?
双方のクルーが仲良く驚いた。
ミネア一人、足を踏ん張りなおすだけで顔色も変えない。
「三笠を修理しているの。資材が足りないから、グリンハーヘンから少しいただいてるの。今のは、その衝撃」
ミネアの表情が微かに動いた。
「大丈夫、この船がダメになるほどには頂かないから。じゃあ、三笠の仲間は解放させてもらうわね。艦長、そこのタラップを上がって。三笠の第二デッキに出るわ。順番は、わたしが最後。いいわね」
ミネアは、最後まで視線を外さないミカさんに対抗して身動き一つしなかった。三笠に閉じ込められていたミネアの兵士たちは、逆に通路が開いてグリンハーヘンに戻ってきた。
ミカさんの帰艦は少し遅れた。
「ちょっと遅すぎない?」
天音が腰を上げる。
三十分過ぎても、我らが船霊さまは戻ってこず、開きっぱなしの通路からは三笠を修理するオートメカの音がくぐもって聞こえるだけだ。
ニャンケンポン ニャンケンポン アイコデニャ!
ネコメイドたちがジャンケンを始めた。
「なにしてんだ、おまえら?」
「ミカさんの様子を見に行くニャ!」「順番を決めてるニャ!」「「ニャニャ!」」
「順番て、そんなの、だれか一人行けばいい話だろ」
「そうだ、同じ乗組員だろ、僕たちもジャンケンに入れてよ」
トシの申し出なんか無視して勝負がついた。
ニャンパラリン!!
四人のネコメイドが揃ってジャンプすると、一匹の半透明の猫に変わったぞ!
「「「「ステルスネコにゃ! 頭と前脚と後ろ脚と尻尾を四人でやってるニャ!」」」」
なるほど、その順番を決めてたってわけか(^_^;)
ステルスネコが飛び込もうとしたら、その通路からミカさんが戻ってきた。
「「「「いまから行くところだったニャ!」」」」
「ごめんなさいね、帰ろうと思ったら、ラッタル上がらなきゃだめでしょ、ねえ東郷君」
「え、あ……(#^皿^#)」
「ミネア司令以下100人の目が見てるし、モジモジしてたら、ミネア司令が特急で、通路の高さを下げてくれて。その作業が終わるの待ってたから……アハハ」
いつも、すっと現れてすっと消えてるじゃないか……思っていても言わない。
「追ってきませんね、グリンハーヘン」
「ミネアさんは分かっているのよ。地球侵略がいかに無謀なことかを……」
「だったら」
「ただね、地球の温暖化が常識で抗いがたいように、グリンヘルドもシュトルハーヘンでも地球侵略が侵しがたい目的になっている。でも、グリンハーヘンの力は弱いから……いろいろあるのよ」
神さまがいろいろと言うんだ、それ以上の詮索はできない。
「しかし、どうして三笠にステルス機能が付いたんですかぁ。そんなもの無いはずなのに」
クレアが不思議そうに聞いた。
「三笠もニャンパラリンなのかニャ?」
「アクアリンドのクリスタルのおかげよ」
「アクアリンドの?」
「アクアリンドがグリンヘルドにもシュトルハーヘンにも見つからないのは、暗黒星雲のためだけじゃない。このクリスタルが、外界から、あの星を隠す大きな力になっていたの。クリスタルも学習したと思う。隠れて引きこもっていることの危うさを……」
そう言うと、ミカさんは微かに微笑んで神棚に戻って行った。
「あとは、オレたちでやれって目だったな……」
「ピレウスまで、8パーセク。二回のワープで到着。いいわね?」
樟葉が決意を促すように宣言。
それを受けて俺は小さく頷いた。
三笠のクルーの結束は、いっそう強くなっていった。
☆ 主な登場人物
修一(東郷修一) 横須賀国際高校二年 艦長
樟葉(秋野樟葉) 横須賀国際高校二年 航海長
天音(山本天音) 横須賀国際高校二年 砲術長
トシ(秋山昭利) 横須賀国際高校一年 機関長
レイマ姫 暗黒星団の王女 主計長
ミカさん(神さま) 戦艦三笠の船霊
メイドさんたち シロメ クロメ チャメ ミケメ
テキサスジェーン 戦艦テキサスの船霊
クレア ボイジャーが擬人化したもの
ウレシコワ 遼寧=ワリヤーグの船霊
こうちゃん ろんりねすの星霊
43[宇宙戦艦グリンハーヘン・5] 修一
「ミネアさん、無理するのはよそうよ」
ミカさんの言葉に、ミネア司令は微かにたじろいだが、それはミカさんにしか分からなかった。
俺たちは、ミネアがミカさんの挑発に一歩前に出たようにしか見えなかった。
「そうやって、なにかあると、いつも一歩前に出てしまうのよね」
「なに……!?」
ミカさんは、ミネアの厳しい視線と言葉をサラリと躱して言葉を続けた。
「グリンハーヘンというのは悲しい名前ね。グリンヘルドにもなれずシュトルハーヘンにもなれない人たちのアイデンティティー。両方の母星から疎外された人たち。二つの母星は、地球侵略については共同戦線を張っているけど、内心では信じあっていない。だから、二つの母星の間に生まれたあなたたちは疎外され、軍の中でも、遊撃隊でしかいられないんでしょ?」
「わたしたちは選ばれた真のエリート部隊だ。だから、本隊が暗黒星雲の両脇を固めているのに、ドンピシャ三笠の真正面に出てくることができた」
「でも、だれも応援にこない」
「ステルスの三笠を見抜けたのは、このミネアだけだ!」
「でも、グリンハーヘンが停船して、動きがおかしいことは、グリンヘルドもシュトルハーヘンの艦隊も分かっている。だのに助けにもこないし、この船も応援要請をしない」
「三笠捕獲の栄誉は、このグリンハーヘンだけにある。味方と云えど邪魔はさせない」
「今の状況は逆でしょ。いくら遊撃部隊でも、こんな状況なら、なんらかの連絡や、作戦行動があって当たり前じゃないかしら?」
その時、グリンハーヘンの艦体が身震いするように揺れた。
ワ!? ウワ! ニャ!?
双方のクルーが仲良く驚いた。
ミネア一人、足を踏ん張りなおすだけで顔色も変えない。
「三笠を修理しているの。資材が足りないから、グリンハーヘンから少しいただいてるの。今のは、その衝撃」
ミネアの表情が微かに動いた。
「大丈夫、この船がダメになるほどには頂かないから。じゃあ、三笠の仲間は解放させてもらうわね。艦長、そこのタラップを上がって。三笠の第二デッキに出るわ。順番は、わたしが最後。いいわね」
ミネアは、最後まで視線を外さないミカさんに対抗して身動き一つしなかった。三笠に閉じ込められていたミネアの兵士たちは、逆に通路が開いてグリンハーヘンに戻ってきた。
ミカさんの帰艦は少し遅れた。
「ちょっと遅すぎない?」
天音が腰を上げる。
三十分過ぎても、我らが船霊さまは戻ってこず、開きっぱなしの通路からは三笠を修理するオートメカの音がくぐもって聞こえるだけだ。
ニャンケンポン ニャンケンポン アイコデニャ!
ネコメイドたちがジャンケンを始めた。
「なにしてんだ、おまえら?」
「ミカさんの様子を見に行くニャ!」「順番を決めてるニャ!」「「ニャニャ!」」
「順番て、そんなの、だれか一人行けばいい話だろ」
「そうだ、同じ乗組員だろ、僕たちもジャンケンに入れてよ」
トシの申し出なんか無視して勝負がついた。
ニャンパラリン!!
四人のネコメイドが揃ってジャンプすると、一匹の半透明の猫に変わったぞ!
「「「「ステルスネコにゃ! 頭と前脚と後ろ脚と尻尾を四人でやってるニャ!」」」」
なるほど、その順番を決めてたってわけか(^_^;)
ステルスネコが飛び込もうとしたら、その通路からミカさんが戻ってきた。
「「「「いまから行くところだったニャ!」」」」
「ごめんなさいね、帰ろうと思ったら、ラッタル上がらなきゃだめでしょ、ねえ東郷君」
「え、あ……(#^皿^#)」
「ミネア司令以下100人の目が見てるし、モジモジしてたら、ミネア司令が特急で、通路の高さを下げてくれて。その作業が終わるの待ってたから……アハハ」
いつも、すっと現れてすっと消えてるじゃないか……思っていても言わない。
「追ってきませんね、グリンハーヘン」
「ミネアさんは分かっているのよ。地球侵略がいかに無謀なことかを……」
「だったら」
「ただね、地球の温暖化が常識で抗いがたいように、グリンヘルドもシュトルハーヘンでも地球侵略が侵しがたい目的になっている。でも、グリンハーヘンの力は弱いから……いろいろあるのよ」
神さまがいろいろと言うんだ、それ以上の詮索はできない。
「しかし、どうして三笠にステルス機能が付いたんですかぁ。そんなもの無いはずなのに」
クレアが不思議そうに聞いた。
「三笠もニャンパラリンなのかニャ?」
「アクアリンドのクリスタルのおかげよ」
「アクアリンドの?」
「アクアリンドがグリンヘルドにもシュトルハーヘンにも見つからないのは、暗黒星雲のためだけじゃない。このクリスタルが、外界から、あの星を隠す大きな力になっていたの。クリスタルも学習したと思う。隠れて引きこもっていることの危うさを……」
そう言うと、ミカさんは微かに微笑んで神棚に戻って行った。
「あとは、オレたちでやれって目だったな……」
「ピレウスまで、8パーセク。二回のワープで到着。いいわね?」
樟葉が決意を促すように宣言。
それを受けて俺は小さく頷いた。
三笠のクルーの結束は、いっそう強くなっていった。
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