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8『シフォンケーキと桃太郎』
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ピボット高校アーカイ部
8『シフォンケーキと桃太郎』
「あれって、桃太郎だったんですよね?」
あくる日の部活、すっかり僕の仕事になった部活前のお茶を淹れている。
今日のお茶うけはコンビニで買ってきたらしいスポンジケーキだ。
けっこうボリュームがありそうで、こんなの食べたら晩御飯食べられるだろうかと心配になるが、口にはしない。
「まあ、食ってみろ」
口にしなくても読まれてる。
クポクポクポ……
お茶を淹れて、フォークでケーキを切る。
あれ?
フォークをいれたケーキは、押しつぶしたようにひしゃげてしまう。
「シフォンケーキというんだ、見かけの割には頼りない」
「はい……あ……」
口の中に入れると、頼りなく萎んでしまう。ケーキというよりは綿あめかマシュマロを食べているように頼りない。
「こういうソフトな感触がいいというので、街では、ちょっとしたブームでな。コンビニでも置くようになったんだ」
「はあ……」
これなら、晩ご飯の心配はしなくていいようだ。
「このソフトというか頼りな路線は、桃太郎の昔話にも及んでいてな……」
「先輩、美味しそうに食べますね」
「うん、でも、こんなものばかり食べていては咀嚼力も消化する力も弱ってしまう……で、桃太郎だ」
「あ、はい」
「お婆さんは洗濯に夢中になって、流れてきた桃に気付きませんでした……という異説がもてはやされてきた」
「ああ、それで、前回は桃を上流まで運んで、強引にお婆さんに気付かせたんですね」
「うん、ああでもしないと、桃はさらに下流まで運ばれて、別のお婆さんに拾われてしまう」
「別のお婆さんじゃダメなんですか?」
「いや、別のお婆さんでも構わないんだ。だがな、拾って持って帰ってお爺さんといっしょに桃を切るとな……」
先輩のフォークが停まってしまう。
「切ると……どうなるんですか?」
「腐りかけの桃太郎が出てくるんだ」
「ハハハ(^O^)」
「笑い事ではない、桃太郎のナニは腐って無くなってしまっているんだぞ。桃太郎ではなくて桃子になってしまう」
「だめなんですか?」
「だめだろ、そんなのが幅を聞かせたら、金太郎は金子、浦島太郎は浦島太子になってしまうぞ」
「アハハ(^O^)」
「ということで、もう一度、桃太郎の世界に行くぞ!」
そして、いつものように魔法陣の中に入って、前回と同じ田舎道に立った
「……やっぱり、お婆さんは桃を見過ごしてしまいますねえ」
「いくぞ!」
同じように下流にまわって桃を拾い、これまた気づかれないように上流に持って行って桃を流した。
ポチャン
桃のすぐ前に石を投げ入れて、お婆さんに気付かせる。
「「あれ?」」
お婆さんは、桃に一瞥はくれるんだけど、知らんふりして洗濯物を続けるではないか!
「ちょっと、お婆さん!」
あ、先輩(;'∀')!
「なんじゃ、おまえら?」
「ちゃんと桃を拾わなきゃダメじゃない!」
「フン」
鼻で笑われた!
「桃太郎なんぞ、つまらん……」
つ、つまらん!?
「拾って育てても、鬼退治に行くだけじゃ」
「そ、それが桃太郎じゃないですか!」
思わず声が大きくなってしまった。
「鋲!」
「すみません、でも……」
「『ノーモア鬼ヶ島』じゃ……おまえらも、これに署名せえ!」
バインダーに挟んだ署名用紙とボールペンを突き付けるお婆さん。
署名用紙には、こう書いてあった。
『桃太郎を二度と戦場に送らないための請願署名』
先輩は、署名のためのボールペンを握ると、署名はせずに、こう聞いた。
「このボールペンは、どこ製か知ってるかい?」
「ん、こんなものは、たいがいC国製じゃろが」
「そうだね。じゃあ、先っちょのボールはどこ製?」
「C国製じゃないのかい?」
「日本製なんだよ」
「おや、そうなのかい」
「じゃあね、ごめんね洗濯の邪魔して。いくぞ、鋲」
そして、僕と先輩は部室に戻って、お茶の後始末をした。
「わたしは、ちょっと残ってる。鋲は先に帰れ」
「あ、はい」
部室を出て昇降口に向かって校門を出たんだけど、桃太郎の事が気になって、駅の手前まで来て学校に戻った。
昇降口で上履きに履き替えていると、旧校舎から出てくる先輩が目に入った。
旧制服から今の制服に着替えた先輩は、なんだか眩しくて、けっきょく声も掛けずに下足に履き替え、校門を出る先輩を見送ってから家に帰ったよ。
☆彡 主な登場人物
田中 鋲(たなかびょう) ピボット高校一年 アーカイ部
真中 螺子(まなからこ) ピボット高校三年 アーカイブ部部長
8『シフォンケーキと桃太郎』
「あれって、桃太郎だったんですよね?」
あくる日の部活、すっかり僕の仕事になった部活前のお茶を淹れている。
今日のお茶うけはコンビニで買ってきたらしいスポンジケーキだ。
けっこうボリュームがありそうで、こんなの食べたら晩御飯食べられるだろうかと心配になるが、口にはしない。
「まあ、食ってみろ」
口にしなくても読まれてる。
クポクポクポ……
お茶を淹れて、フォークでケーキを切る。
あれ?
フォークをいれたケーキは、押しつぶしたようにひしゃげてしまう。
「シフォンケーキというんだ、見かけの割には頼りない」
「はい……あ……」
口の中に入れると、頼りなく萎んでしまう。ケーキというよりは綿あめかマシュマロを食べているように頼りない。
「こういうソフトな感触がいいというので、街では、ちょっとしたブームでな。コンビニでも置くようになったんだ」
「はあ……」
これなら、晩ご飯の心配はしなくていいようだ。
「このソフトというか頼りな路線は、桃太郎の昔話にも及んでいてな……」
「先輩、美味しそうに食べますね」
「うん、でも、こんなものばかり食べていては咀嚼力も消化する力も弱ってしまう……で、桃太郎だ」
「あ、はい」
「お婆さんは洗濯に夢中になって、流れてきた桃に気付きませんでした……という異説がもてはやされてきた」
「ああ、それで、前回は桃を上流まで運んで、強引にお婆さんに気付かせたんですね」
「うん、ああでもしないと、桃はさらに下流まで運ばれて、別のお婆さんに拾われてしまう」
「別のお婆さんじゃダメなんですか?」
「いや、別のお婆さんでも構わないんだ。だがな、拾って持って帰ってお爺さんといっしょに桃を切るとな……」
先輩のフォークが停まってしまう。
「切ると……どうなるんですか?」
「腐りかけの桃太郎が出てくるんだ」
「ハハハ(^O^)」
「笑い事ではない、桃太郎のナニは腐って無くなってしまっているんだぞ。桃太郎ではなくて桃子になってしまう」
「だめなんですか?」
「だめだろ、そんなのが幅を聞かせたら、金太郎は金子、浦島太郎は浦島太子になってしまうぞ」
「アハハ(^O^)」
「ということで、もう一度、桃太郎の世界に行くぞ!」
そして、いつものように魔法陣の中に入って、前回と同じ田舎道に立った
「……やっぱり、お婆さんは桃を見過ごしてしまいますねえ」
「いくぞ!」
同じように下流にまわって桃を拾い、これまた気づかれないように上流に持って行って桃を流した。
ポチャン
桃のすぐ前に石を投げ入れて、お婆さんに気付かせる。
「「あれ?」」
お婆さんは、桃に一瞥はくれるんだけど、知らんふりして洗濯物を続けるではないか!
「ちょっと、お婆さん!」
あ、先輩(;'∀')!
「なんじゃ、おまえら?」
「ちゃんと桃を拾わなきゃダメじゃない!」
「フン」
鼻で笑われた!
「桃太郎なんぞ、つまらん……」
つ、つまらん!?
「拾って育てても、鬼退治に行くだけじゃ」
「そ、それが桃太郎じゃないですか!」
思わず声が大きくなってしまった。
「鋲!」
「すみません、でも……」
「『ノーモア鬼ヶ島』じゃ……おまえらも、これに署名せえ!」
バインダーに挟んだ署名用紙とボールペンを突き付けるお婆さん。
署名用紙には、こう書いてあった。
『桃太郎を二度と戦場に送らないための請願署名』
先輩は、署名のためのボールペンを握ると、署名はせずに、こう聞いた。
「このボールペンは、どこ製か知ってるかい?」
「ん、こんなものは、たいがいC国製じゃろが」
「そうだね。じゃあ、先っちょのボールはどこ製?」
「C国製じゃないのかい?」
「日本製なんだよ」
「おや、そうなのかい」
「じゃあね、ごめんね洗濯の邪魔して。いくぞ、鋲」
そして、僕と先輩は部室に戻って、お茶の後始末をした。
「わたしは、ちょっと残ってる。鋲は先に帰れ」
「あ、はい」
部室を出て昇降口に向かって校門を出たんだけど、桃太郎の事が気になって、駅の手前まで来て学校に戻った。
昇降口で上履きに履き替えていると、旧校舎から出てくる先輩が目に入った。
旧制服から今の制服に着替えた先輩は、なんだか眩しくて、けっきょく声も掛けずに下足に履き替え、校門を出る先輩を見送ってから家に帰ったよ。
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