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024『校舎裏の焼却炉』
しおりを挟む漆黒のブリュンヒルデ
024『校舎裏の焼却炉』
ダメもとで校舎裏の焼却炉に行ってみた。
こないだチラ見した時には投入口のハッチには鎖が巻かれて使用禁止の札が掛かっていたように思う。
あれ?
非常階段の脇から覗く煙突から煙が出ている。
近くまで行くと、投入口が半開きになっていて、チロチロと炎が立っているのが分かる。
長年使われていないはずなのに、通気口はきれいに掃除されていて、炉の中は様々なゴミが陽気な音を立てて燃えている。
いいのかなあ……?
逡巡していると、後ろから声が掛かって、不覚にもドキッとした。
「今日は特別だから、燃してもいいよ」
作業着姿の技能員さんが火かき棒を持って立っている。
「いいんですか?」
「ちょっと待って……」
技能員さんが火かき棒で炉をかき回して隙間を作ってくれる。
「はい、どうぞ」
「ありがとう、焼かせてもらいます」
バサバサ……ボウッ!!
「若い子たちの悪気(あっき)はよく燃えるねえ……」
「うん……でも、すぐに燃え尽きる」
「悪気は早く焼き清めるに限るね」
「底になってるのはなかなか燃え尽きないのね……」
「古い悪気は石炭みたいでね、火の付きは悪いけど、燃え始めると、いつまでも燃えている。だからね、燃え尽きるまでは目が離せない」
「そうなんだ……」
並の人間が悪気を燃やせるわけなど無い、無いどころか悪気を認識できるわけなど無いのだが、この時は不思議にも思わず廃棄された椅子に腰かけてしまった。
技能員のおじさんと悪気が燃える炎を眺める、グラズヘイムでやった冬至の火祭りを思い出す。
一年溜まった穢れを依り代に籠めて王宮の広場で焼くのだ。盛大に燃えるほど来年の実りが大きいとされていた。
心地よい火照りに眠気がさしてくる。おじさんも同様で、火かき棒を杖にしたまま舟をこいでいる。
おじさんの姿が変わってきた……作業服は古式ゆかしい甲冑になって、豊かな白髭が鼻の下を覆う。
「あ……スクネ?」
「あ、これはしたり。つい居ねむって本性を晒してしまいましたな」
「スクネが技能員さんだったのか」
「巡回しております。世田谷のあちこちを周って溜まった悪気やあれこれを清めるのが仕事ですわ、アハハハ。正月の三が日は姫の元に戻って休みを頂いておりました」
おきながさんのところで、写真を撮ってもらったのは、その休みの時だったのだろう。つい先日の事なのに懐かしく思い出す。
「実は、ひるで殿……」
いつのまにか、わたしのほうが眠ってしまっていた。スクネが優しいまなざしを向けている。
「姫が申されましたな……妖どもを懲らしめた後は名前を付けてやってほしいと」
「ああ。もう八人ほどになるかなあ、懲らしめてやると自然に名前が浮かんできてな。自分で言うのもなんだが、いい名前を付けられたと思う」
「妖の多くは戦争で焼け死んだ者たちです。名前の確認も出来ぬままに、あるいは、名前もろとも容も残さずに燃え尽きた者たち……七十余年の年月の間に妖になってしもうた、そういう者たちに名前を取り戻してやって欲しいと言うのが姫の願いなのです」
「そう言うことだったのか……みんな、自然な名前だったのは、そういう訳か。それならそうと、おきながさんも言ってくれればいいのに」
「言いづらかったのですよ……なんせ数が多い」
「どのくらいになるのだ?」
「ざっと、十万」
「十万!?」
「はい、だから言いそびれておられた。この爺からもお頼みします。どうか、妖たちに名前を取り戻してやってくだされ」
「あ、ああ。しかし十万とはなあ……」
「及ばずながら、この爺もお手伝いをいたしますれば……東京は古い都ですので、戦災以外の妖もわだかまっております。全貌は、この爺も姫も掴み切れてはおりませぬがなあ」
「この異世界に来たのは、そういう役目があっての事なのか……」
「そこまでは分かりませぬが、いえ、お伝え出来てホッといたしました。さ、炉の中にイモを仕込んで……よしよし、これなど食べごろ。お一つどうぞ」
スクネは仕込んでおいた焼き芋をくれた。
思いのほかおいしくて、ハフハフと食べているうちにスクネの姿は消えてしまった。
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