漆黒のブリュンヒルデ

武者走走九郎or大橋むつお

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053『……ハメられたか?』

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漆黒のブリュンヒルデ

053『……ハメられたか?』 

 

 
 鹿児島からやってきた従姉妹ということになった。

 
 天文館高校の同級生という設定で一日行動を共にしたが、張り切る度に桜島を噴火させてしまうので、とても鹿児島には置いておけない。

 そこで、わたし武笠ひるでの従姉妹という触れ込みで、豪徳寺の家に同居して同じ学校に通うことになったのだ。東京にも21の火山があるが、都心から遠く離れた島しょ部の火山なので、噴火させることはなさそうだ。

 ちょっと広くなってない?

 一階のリビングは、その気になればビリヤードができそうなくらいになっていたし、二階のわたしの部屋の隣には同じ間取りの玉代さんの部屋が出来ていた。

「はい、玉ちゃんにも同じリュック作っといたわ」

 お祖母ちゃんが、誕生日にわたしにくれたのと同じリュックを玉代に渡した。

「あいがと、お祖母ちゃん。大切に使いもす!」

 適応レベルを下げてあるので、ちょっと鹿児島弁が残ってる。

「この際だから、表札も新調しておいたよ。掛けてきてくれるかい」

 なんとお祖父ちゃんは表札まで作り直している。玉ちゃんの名前だけ書き足したら『ワケアリ』って感じになってしまうから、これも正解だ。

 よし!

 表札も一新し、先に振り返った玉ちゃんが別のものに注目した。

「ねね子ちゃん!」

 なんと、お向かいの啓介の部屋の窓でねね子が頬杖突いて、見下ろしているではないか。

「ヤッホー! いま行くからね! ニイニもたまには……」

 なにか妙なことを言いながら消えると、アイスを三本もって玄関から出てきた。

「はい、食べながらトークしよ!」

 アイスをくれると、自分もぺろぺろやり始める。

「なんで、ねね子がお向かいにいるんだ?」

「表札に名前が書いてあっわ!」

 玉ちゃんの視線を追うと、お向かいの表札。ご主人とおばさんと啓介に並んで『寧々子』と書いてある。

「一足先に替えたのよ」

「おまえ、住み着くのか?」

「やだなあ、ひるでったら、ねね子はずっと昔からひるでのお向かいだよ(^▽^)/」

「ねね子、ネコ語の訛もないんだなあ」

「なんでネコ語? ちょ、なにすんのよ!?」

 スカートをめくっても尻尾の痕跡もないし、ヘッドロックをかましてもネコミミを格納した様子もない。

「あ、二階に男ん子がおっ!」

「あいつ、引きこもってるから、めったには出てこないよ」

「そうと……なんかもってなか」

「なんか、玉ちゃんのギャップって可愛いよ」

「あは、そう、あいがと(^▽^)/」

 なんで、これだけの変化を自然に受け入れられてるんだ?

 
 視線を感じて振り返ると、曲がり角の所にスクネ老人が頭を掻きながら済まなさそうにお辞儀する。

 
 どうやら……ハメられたか?

 
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