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009:ズィッヒャーブルグで宿を探す
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待ての勇者と急ぎの姫騎士
009:ズィッヒャーブルグで宿を探す
「おお、中はきれいなんだなぁ……」
城内は二重になっていて、奥の方に領主の城が聳えている。城までは一本道で日本の城下町のように道を複雑にして到達を困難にしようという発想は無いようだ。
俺たちが歩いているのはメインストリートのようで石畳で舗装され、両側には宿や大きな店、工房やギルドのような建物、役所のようなものも見える。いずれも、立派というかきれいで、黄昏が迫ろうというのに人の出入りが多い。
パ パ パ パパパパパパパパ…………
べつに音がするわけではないのだが、そんな擬音を付けてみたくなるような小気味よさで、街灯が点く。その点灯は順繰りに城に迫って、数秒後には城全体が人工の明かりに照らされて、ちょっとしたテーマパークだ。
「豊かな街なんだなあ、城門の外とは大違いだ……」
旅慣れた戦乙女のヒルデから見ても豪華なようで、修学旅行で初めてディズニーランドにやってきた女子高生のように目を輝かせている。
「フフ」
「なんだぁ?」
「いや、なんでもない。素敵な街だズィッヒャーブルグは」
今の感想を口にしたら怒るに違いないから誤魔化しておく。
「感動している場合じゃない、まずは宿だ宿……」
インタフェイスを開いて手際よく調べるヒルデ。チラ見するとスマホの覗き見防止フィルムのようなものが貼ってあるのだろう、文字や数字は読み取れない。
「スグル、貴様の所持金は?」
「ああ……155000ギル、どれくらいの値打ちなんだろう?」
「日本円で150万ちょっとだな、各種装備を整えてギルドの登録料やらアイテムを揃えても10万ギルは残るだろう、そこそこの宿に泊まっても大丈夫だな」
「ヒルデは、どれくらい持ってるんだ」
「これでも主神オーディンの娘だ、貴様よりは多い。カードもあるしな」
「え、異世界にカードがあるのか?」
「スグルは持っていないのか?」
「VISOなら」
「VISOなら、5%の割増で使えるぞ」
「そうなのか?」
「ただ、こっちから入金はできないからな。いずれ、こっちのカードを作ればいい……一筋奥に入ろうか、メインストリートは高い」
「おお」
通りの宿を二秒ほど見渡すと、さっさと、左の脇道に入っていった。
脇道はメインストリートの1/3ほどの幅員の簡易舗装で、道の中央に石ブタの暗渠。東京のように完全ではないが、一応下水のようになっている。堀のような臭いはしないから、そっちの方は別になっているんだろう。まあ及第点。
「あそこにしよう」
一言発すると、オレの意思は確認しないで進んでいく。
「いらっしゃいませ、お泊りでしょうか?」
「ああ、一泊したい。風呂付の部屋がいい」
「はい、風呂付ですと、一部屋しか空いておりませんが」
「ああ、それでいい」
「ちょっと待て」
思わず身を乗り出した。カウンターの親父はキーを取る手を戻して——どうぞご相談を——というような身振り。
「なんだ?」
「同じ部屋はまずいだろう」
「どうしてだ、夫婦だろうが」
「いや、それは……」
「二部屋とったら表通りの一部屋分になるぞ。オヤジ、風呂付一部屋で決まりだ」
「承知しました、では、こちらにサインを。こちらの奥が付属のレストランになっております、10時までお食事のご用意ができます」
「ああ、あとで利用するよ。いくぞ、ア・ナ・タ」
グフ(≧。≦)
あやうく咽かえるところだった。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・秀の友人たち アキ 田中
009:ズィッヒャーブルグで宿を探す
「おお、中はきれいなんだなぁ……」
城内は二重になっていて、奥の方に領主の城が聳えている。城までは一本道で日本の城下町のように道を複雑にして到達を困難にしようという発想は無いようだ。
俺たちが歩いているのはメインストリートのようで石畳で舗装され、両側には宿や大きな店、工房やギルドのような建物、役所のようなものも見える。いずれも、立派というかきれいで、黄昏が迫ろうというのに人の出入りが多い。
パ パ パ パパパパパパパパ…………
べつに音がするわけではないのだが、そんな擬音を付けてみたくなるような小気味よさで、街灯が点く。その点灯は順繰りに城に迫って、数秒後には城全体が人工の明かりに照らされて、ちょっとしたテーマパークだ。
「豊かな街なんだなあ、城門の外とは大違いだ……」
旅慣れた戦乙女のヒルデから見ても豪華なようで、修学旅行で初めてディズニーランドにやってきた女子高生のように目を輝かせている。
「フフ」
「なんだぁ?」
「いや、なんでもない。素敵な街だズィッヒャーブルグは」
今の感想を口にしたら怒るに違いないから誤魔化しておく。
「感動している場合じゃない、まずは宿だ宿……」
インタフェイスを開いて手際よく調べるヒルデ。チラ見するとスマホの覗き見防止フィルムのようなものが貼ってあるのだろう、文字や数字は読み取れない。
「スグル、貴様の所持金は?」
「ああ……155000ギル、どれくらいの値打ちなんだろう?」
「日本円で150万ちょっとだな、各種装備を整えてギルドの登録料やらアイテムを揃えても10万ギルは残るだろう、そこそこの宿に泊まっても大丈夫だな」
「ヒルデは、どれくらい持ってるんだ」
「これでも主神オーディンの娘だ、貴様よりは多い。カードもあるしな」
「え、異世界にカードがあるのか?」
「スグルは持っていないのか?」
「VISOなら」
「VISOなら、5%の割増で使えるぞ」
「そうなのか?」
「ただ、こっちから入金はできないからな。いずれ、こっちのカードを作ればいい……一筋奥に入ろうか、メインストリートは高い」
「おお」
通りの宿を二秒ほど見渡すと、さっさと、左の脇道に入っていった。
脇道はメインストリートの1/3ほどの幅員の簡易舗装で、道の中央に石ブタの暗渠。東京のように完全ではないが、一応下水のようになっている。堀のような臭いはしないから、そっちの方は別になっているんだろう。まあ及第点。
「あそこにしよう」
一言発すると、オレの意思は確認しないで進んでいく。
「いらっしゃいませ、お泊りでしょうか?」
「ああ、一泊したい。風呂付の部屋がいい」
「はい、風呂付ですと、一部屋しか空いておりませんが」
「ああ、それでいい」
「ちょっと待て」
思わず身を乗り出した。カウンターの親父はキーを取る手を戻して——どうぞご相談を——というような身振り。
「なんだ?」
「同じ部屋はまずいだろう」
「どうしてだ、夫婦だろうが」
「いや、それは……」
「二部屋とったら表通りの一部屋分になるぞ。オヤジ、風呂付一部屋で決まりだ」
「承知しました、では、こちらにサインを。こちらの奥が付属のレストランになっております、10時までお食事のご用意ができます」
「ああ、あとで利用するよ。いくぞ、ア・ナ・タ」
グフ(≧。≦)
あやうく咽かえるところだった。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
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