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042: 奴はエマのストレージに飛び込んだ!
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待ての勇者と急ぎの姫騎士
042: 奴はエマのストレージに飛び込んだ!
ガラ!
露天風呂への引き戸を開ける……が、すぐには飛び込まない。
名うての幻影魔術師、どんな仕掛けがあるか分からない。ついさっき、討伐隊全員をエマの姿にされて騙されたからな。ヒルデも同じと見えて、ソードを脇構えにして壁に背を預けている。
なにか省略してるだろうって?
あ、ええと……背に腹は代えられない……というか、緊急事態だからな……婆さんには口移しでポーションを飲ませてやったさ、とっておきのハイポーション。
で、ちゃんと効き目があって、婆さんは元気になったさ。
た、ただな……回復効果が新幹線並みに早くて、トルクビルトの魔法が解ける前に効果が表れて正気になった……ま、まあ、そのあとすぐに元の婆さんに戻ったから全然問題はないんだけどな。
で、それで、爺さん婆さんから話を聞くと、トルクビルトはエマを連れて露天風呂の方に戻ったらしい。
「なにか、あのメイドさんに使い道があると思った感じだったわぁ……」
「あのメイド、美人だったからなあ……」
デリカシーのないことを言う二人の老人。
「危ういなあ……」
ヒルデも物騒な呟きを漏らしやがる。
——中の様子を見てもらえませんか——
で、これくらいはやってもらってもいいだろう……と、婆さんに身振りで伝えると、コクンと頷く。たぶらかされていたとは言え、すまない気持ちがあるんだろう、爺さんと二人で露天風呂を覗いてくれる。
『娘さんが倒れていますよぉ』『お連れのメイドさんじゃろ』
二人の声に露天風呂に飛び込むと、湯浴着のままのエマが倒れている。
「エマ、大丈夫か、しっかりしろ!」
頬をペチペチしするヒルデ——俺の時よりも優しいじゃねえか——と思ったけど、エマが目を開けたんで文句は言わん。
「二人ともありがとう、あとは自分たちでやるから」
そう言うと、老人二人は名残惜しそうにしながらも脱衣所に姿を消した。
「……あ、ヒルデさま! スグルさま!」
「大丈夫か、痛むところとか気分がわるかったりとかないか?」
「はい、大丈夫でございます。それよりもトルクビルトさまが……」
「そうだ、トルクビルト!?」「どっちに逃げた!?」
「いいえ、逃げたのでは……」
「え?」「なにかに化けたか!?」
ヒルデと周囲を見渡すが、見た限り奴の痕跡も幻術の残滓も感じられなかった。
「それが……」
エマは指を振ってストレージを呼び出した。
「ストレージ?」「なにか取られたのか?」
「ストレージの中に幻影封じのお札があったのを思い出したんです。前のご主人様が旅の用心のためにお求めになったのですが、使わずじまいだったのを……」
「ああ、ズィッヒャーブルグで朽ち果てた奴だな」
あそこでは、ゴブリンとかの武闘系の魔物が多かった、役にはたたなかっただろう。それに相手はトルクビルト、効き目は薄い。
「それが、名うての幻術士、わたしのストレージの深さを見抜いておしまいになって……」
「奴は、エマのストレージを覗いてしまったんだなぁ (≖͈́ㅂ≖͈̀ )」
「ヒルデ、人相悪くなってるぞ(^^;)」
そうだ、エマのストレージは無限大。見てしまったら覗いてみたくはなるだろう。その広さ大きさはエマ自身も掌握できていないので、普段は掌握できている一部分しか使っていない。その一部分だけでも124万立方メートルで東京ドームと同じ容積なんだ。
欲を出して奥に進んだらなかなか出てこられないだろう。
「我々も中に入ってみよう」
腰を低くして突入姿勢をとるヒルデ!
「待て! 出口が分からなくなったらどうするんだ!」
「シルベを打ちながら進めばいい、ある程度進んで見つからなければ、そこから先は空のストレージだ、封印して戻ればいいだろう」
「わたしもトレースしておきます。でも、くれぐれも深入りなさいませんよう、お気をつけください」
「よし、決まりだ! ストレージを開いてくれ!」
「は、はい!」
「行くぞ!」
「お、おお!」
ヒルデと二人、ストレージの中に飛び込んだ……。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・秀の友人たち アキ 田中
・魔物たち ガイストターレン
042: 奴はエマのストレージに飛び込んだ!
ガラ!
露天風呂への引き戸を開ける……が、すぐには飛び込まない。
名うての幻影魔術師、どんな仕掛けがあるか分からない。ついさっき、討伐隊全員をエマの姿にされて騙されたからな。ヒルデも同じと見えて、ソードを脇構えにして壁に背を預けている。
なにか省略してるだろうって?
あ、ええと……背に腹は代えられない……というか、緊急事態だからな……婆さんには口移しでポーションを飲ませてやったさ、とっておきのハイポーション。
で、ちゃんと効き目があって、婆さんは元気になったさ。
た、ただな……回復効果が新幹線並みに早くて、トルクビルトの魔法が解ける前に効果が表れて正気になった……ま、まあ、そのあとすぐに元の婆さんに戻ったから全然問題はないんだけどな。
で、それで、爺さん婆さんから話を聞くと、トルクビルトはエマを連れて露天風呂の方に戻ったらしい。
「なにか、あのメイドさんに使い道があると思った感じだったわぁ……」
「あのメイド、美人だったからなあ……」
デリカシーのないことを言う二人の老人。
「危ういなあ……」
ヒルデも物騒な呟きを漏らしやがる。
——中の様子を見てもらえませんか——
で、これくらいはやってもらってもいいだろう……と、婆さんに身振りで伝えると、コクンと頷く。たぶらかされていたとは言え、すまない気持ちがあるんだろう、爺さんと二人で露天風呂を覗いてくれる。
『娘さんが倒れていますよぉ』『お連れのメイドさんじゃろ』
二人の声に露天風呂に飛び込むと、湯浴着のままのエマが倒れている。
「エマ、大丈夫か、しっかりしろ!」
頬をペチペチしするヒルデ——俺の時よりも優しいじゃねえか——と思ったけど、エマが目を開けたんで文句は言わん。
「二人ともありがとう、あとは自分たちでやるから」
そう言うと、老人二人は名残惜しそうにしながらも脱衣所に姿を消した。
「……あ、ヒルデさま! スグルさま!」
「大丈夫か、痛むところとか気分がわるかったりとかないか?」
「はい、大丈夫でございます。それよりもトルクビルトさまが……」
「そうだ、トルクビルト!?」「どっちに逃げた!?」
「いいえ、逃げたのでは……」
「え?」「なにかに化けたか!?」
ヒルデと周囲を見渡すが、見た限り奴の痕跡も幻術の残滓も感じられなかった。
「それが……」
エマは指を振ってストレージを呼び出した。
「ストレージ?」「なにか取られたのか?」
「ストレージの中に幻影封じのお札があったのを思い出したんです。前のご主人様が旅の用心のためにお求めになったのですが、使わずじまいだったのを……」
「ああ、ズィッヒャーブルグで朽ち果てた奴だな」
あそこでは、ゴブリンとかの武闘系の魔物が多かった、役にはたたなかっただろう。それに相手はトルクビルト、効き目は薄い。
「それが、名うての幻術士、わたしのストレージの深さを見抜いておしまいになって……」
「奴は、エマのストレージを覗いてしまったんだなぁ (≖͈́ㅂ≖͈̀ )」
「ヒルデ、人相悪くなってるぞ(^^;)」
そうだ、エマのストレージは無限大。見てしまったら覗いてみたくはなるだろう。その広さ大きさはエマ自身も掌握できていないので、普段は掌握できている一部分しか使っていない。その一部分だけでも124万立方メートルで東京ドームと同じ容積なんだ。
欲を出して奥に進んだらなかなか出てこられないだろう。
「我々も中に入ってみよう」
腰を低くして突入姿勢をとるヒルデ!
「待て! 出口が分からなくなったらどうするんだ!」
「シルベを打ちながら進めばいい、ある程度進んで見つからなければ、そこから先は空のストレージだ、封印して戻ればいいだろう」
「わたしもトレースしておきます。でも、くれぐれも深入りなさいませんよう、お気をつけください」
「よし、決まりだ! ストレージを開いてくれ!」
「は、はい!」
「行くぞ!」
「お、おお!」
ヒルデと二人、ストレージの中に飛び込んだ……。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
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