かの世界この世界

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
16 / 230

16『喫茶みかど』

RE・かの世界この世界

016『喫茶みかど』   

 


「先輩! 先輩なんですね!?」

 女神さまの声は中臣先輩だった!


 ほんの一時間足らずぶりなんだけど、海外のどこかで財布もスマホもパスポートも無くして知り合いに出会った感じ。

『どうやら、とても難しい世界に行ってしまったようね』

「はい、えと、わたしどうしたらいいんでしょう(;'∀')」

『あのね……ちょっと待って……』

 電話の向こうでボシャボシャと話声、どうやら志村先輩と話し合っているようだ。

『……わかった、うん……いい、みっちゃん。一つ課題を解決すれば、その世界から離脱できるの。いま、時美に探してもらってるから……うん、こっち? えと……みっちゃん』

「はい」

『駅一つ向こうに『みかど』って喫茶店があるの』

「あ、A駅の方ですね」

 リアルでっていうか元の世界のA駅前で見かけたことがある。

『その『みかど』の窓際の四人掛けシート、そこに三時半から四時までの間座っていてもらいたいの』

「座って何をするんですか?」

『意味はまだ分からない。ただ、座っていることで、そっちの世界が三十年後に大きな影響があるらしいの。お願いできるかなあ……』

 ひどく申し訳なさそうな口調、先輩にも詳しいことは分からないんだろう。

「分かりました、三時半なら余裕です!」

『じゃ、がんばってね!』

「はい、がんばります!」

 場所も分かっているので明るく応えて受話器をもどした。

『がんばってね』「がんばります」……女子の常套句。小説とか書いていたら、まず使わない月並みで上っ面な言葉。でも、とっさに出てくるのはこういう言葉なんだ。今だって先輩の『がんばってね!』を冷たいとは感じなかった。

 わたし、小説の表現なんか考えてるよ。ちょっと余裕? ううん、さっきまでは赤地に白丸とかニクソイ小学生とか変な参考書とかでアセアセになりかけて、先輩の電話でめっちゃ救われたんだ。やっぱり、先輩の人柄なんだ。


 自販機で切符を買うなんて久しぶり。


 行先ボタンとお金、どっちが先か? ちょっと悩んで、ボタンを押すけど反応なし。お金なんだと、百円と十円二枚を投入。

 すると、この駅を真ん中に上り下り二駅ずつのランプが点いてA駅を選ぶ。

 改札機ではふんだくられるように切符が吸い込まれるので、ちょっとビックリ。

 スイカとか定期はスイっと改札機を舐めるだけなので暴力的に感じてしまうんだ。

 
 寒!

 
 電車に乗ると、暴力的な冷房に震える。

 設定温度間違えてるんじゃないかと鳥肌といっしょに腹がたつけど、周囲のお客さんたちは平然としている。

「うわ!」

 進行方向の逆につんのめる。

 電車の加速が、ガックンガックンしていてびっくり。

 元の世界では、もっと滑らかに加速していたと思う。これじゃ、立っているお年寄りなんか……周囲を見ると、そのお年寄りも含め、みんな器用にショックをいなしている。

 スマホはおろか携帯を触っている人も居ない。お年寄りは三四人くらいで、乗客の平均年齢は、かなり若いように思える。

 そうか、昭和63年は、お年寄りの数は少ないんだ。

 驚いたり感心しているうちにA駅に着く。

 身構えて改札機へ……

 バシュ(;'∀')

 やっぱりふんだくられるのには慣れない。

 
 A駅の控え目な駅前を歩く。

 
 記憶では、もうちょっと賑やかなんだけど、三十年前はこんなものなのかもしれない。

 そして、『みかど』という喫茶店は見つからなかった……。



☆ 主な登場人物

 寺井光子  二年生
 二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
 中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
 志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
 
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています