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155『フェンリル二世の事情』
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RE・かの世界この世界
155『フェンリル二世の事情』ポチ
トンネル小僧……フェンリル二世は静かに語った。
「世界樹ユグドラシルには、もともと世界の区別なんかなかった。九つの種族が、それぞれの習慣や個性をもって生きていて、人も聖霊もみんな自由に暮らしていた。おおざっぱに居住地は決まっていたけど、旅行や商売、聖地巡礼なんかでの往来はあった。まあ、旅行は見識を広めるために学者とか腕を磨く職人とかで、そういう人口は5%ほどだし、聖地巡礼は一生に一回、そんなに多い交通量じゃなかった。オオカミ族は放浪の種族で、九つの世界を行き来して自由に暮らしていた。他の部族たちが、それぞれに国を作っても『ま、そういう暮らし方もあるんだろう』くらいに思って、いちばん多くのオオカミ族が暮らしていたスヴァルトアルムヘイムに半神族が国を作っても、我々が自由に暮らせていれば好きにさせればいいと思っていた。ラタトスクたちは『オオカミ族も国を作った方がいい。これからは国を持たない者はのけ者にされていくよ』と忠告もしてくれた」
「ラタトスク……ああ、ナフタリンたちだね」
「でも、気が付いた時には遅くて、オオカミ族はスヴァルトアルムヘイムに小さな自治区での居住しか認められなくなった。父のフェンリル一世は神々に戒めを掛けられ、不遇なままに一生を終えた。このままでは、オオカミ族は絶滅すると気が気ではなかったんだ……そこに起こったのがヨトゥンヘイムの巨人どもの進撃だ。遠くまで進撃して帰れなくなった巨人たちの隙を狙って半神たちがヨトゥンヘイムを侵略し始めた。ラムノ、ノシホ、ノヤの三人の半神王はヨトゥンヘイムの経営のためにスヴァルトアルムヘイムを留守にすることが多くなって、多くの半神たちもヨトゥンヘイムに移り始めた。それで、ヨトゥンヘイムを偵察して、半神たちが当分帰ってこないようなら、スヴァルトアルムヘイムを僕たちの手に取り戻そうと思ったんだよ」
「ノヤってのは死んだよ」
「え……ノヤが死んだ!? ひょっとして、君たちがやっつけたの!?」
「ちがうちがう、事故だったんだ。ユグドラシルの近くまで来たら乗ってた戦車が吹き飛ばされて、落ちたのがノヤっていうのが居た神殿だったんだよ」
「え、たまたま落ちたのがノヤの神殿だったって言うのか!?」
「う、うん。最初はとんでもないことになったと驚いたんだけど、小さくなって若返った巨人族たちが喜んでくれて」
「そうか……それは、やっぱり君たちには力と神のご加護があるんだ。神殿と言うのはセキュリティー魔法がかかっていて、落下物なんかは避けられる仕組みになってるからな」
「そ、そうなんだ」
「キミたちには主神オーディンのご加護があるのかもしれないよ」
ご加護どころか、オーディンの姫が乗ってるんだけど、話がとんでしまいそうなので、スルーする。こっちにも聞きたいことがあるしね。
「ヨトゥンヘイムでは、死んだノヤ以外に半神は見かけなかったんだけど、なんか訳あり?」
「辺境の征伐に出ているやつが多いんだと思う。むろん、街にも居たんだろうけど、君たちが来たんで、隠れているんだよ」
「そうなんだ……とりあえず、一度カテンの森に戻るよ。何をするにしても、あたし一人でなんにもできないし、みんなも心配するだろうから」
「ああ、それがいい。時間がたってるから穴が小さくなってるかもしれない」
「それって、ヨトゥンヘイムが縮んでることと関係あるの?」
「説明はあとだ、とにかく穴に!」
穴の入り口に戻ると、小さくなっているような気がした。
「縮み始めてる、戻るのは危険だよ」
「どうしよう……」
「メッセンジャーを貸してあげるよ」
「メッセンジャー?」
「うん、ラタトスクたちにも気づかれずに通信できる、魔法石の小さい奴……」
そう言うと、フェンリル二世は無造作に小石を取り出した。
「石ころ?」
「祈るとメッセンジャーになる。さあ、手に取って想いを籠めるんだ」
「う、うん」
小石に想いを込めて、穴の中に、そろりと放り込んだ……。
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
ペギー 荒れ地の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
ナフタリン ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
フェンリル二世 狼族の王子
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
155『フェンリル二世の事情』ポチ
トンネル小僧……フェンリル二世は静かに語った。
「世界樹ユグドラシルには、もともと世界の区別なんかなかった。九つの種族が、それぞれの習慣や個性をもって生きていて、人も聖霊もみんな自由に暮らしていた。おおざっぱに居住地は決まっていたけど、旅行や商売、聖地巡礼なんかでの往来はあった。まあ、旅行は見識を広めるために学者とか腕を磨く職人とかで、そういう人口は5%ほどだし、聖地巡礼は一生に一回、そんなに多い交通量じゃなかった。オオカミ族は放浪の種族で、九つの世界を行き来して自由に暮らしていた。他の部族たちが、それぞれに国を作っても『ま、そういう暮らし方もあるんだろう』くらいに思って、いちばん多くのオオカミ族が暮らしていたスヴァルトアルムヘイムに半神族が国を作っても、我々が自由に暮らせていれば好きにさせればいいと思っていた。ラタトスクたちは『オオカミ族も国を作った方がいい。これからは国を持たない者はのけ者にされていくよ』と忠告もしてくれた」
「ラタトスク……ああ、ナフタリンたちだね」
「でも、気が付いた時には遅くて、オオカミ族はスヴァルトアルムヘイムに小さな自治区での居住しか認められなくなった。父のフェンリル一世は神々に戒めを掛けられ、不遇なままに一生を終えた。このままでは、オオカミ族は絶滅すると気が気ではなかったんだ……そこに起こったのがヨトゥンヘイムの巨人どもの進撃だ。遠くまで進撃して帰れなくなった巨人たちの隙を狙って半神たちがヨトゥンヘイムを侵略し始めた。ラムノ、ノシホ、ノヤの三人の半神王はヨトゥンヘイムの経営のためにスヴァルトアルムヘイムを留守にすることが多くなって、多くの半神たちもヨトゥンヘイムに移り始めた。それで、ヨトゥンヘイムを偵察して、半神たちが当分帰ってこないようなら、スヴァルトアルムヘイムを僕たちの手に取り戻そうと思ったんだよ」
「ノヤってのは死んだよ」
「え……ノヤが死んだ!? ひょっとして、君たちがやっつけたの!?」
「ちがうちがう、事故だったんだ。ユグドラシルの近くまで来たら乗ってた戦車が吹き飛ばされて、落ちたのがノヤっていうのが居た神殿だったんだよ」
「え、たまたま落ちたのがノヤの神殿だったって言うのか!?」
「う、うん。最初はとんでもないことになったと驚いたんだけど、小さくなって若返った巨人族たちが喜んでくれて」
「そうか……それは、やっぱり君たちには力と神のご加護があるんだ。神殿と言うのはセキュリティー魔法がかかっていて、落下物なんかは避けられる仕組みになってるからな」
「そ、そうなんだ」
「キミたちには主神オーディンのご加護があるのかもしれないよ」
ご加護どころか、オーディンの姫が乗ってるんだけど、話がとんでしまいそうなので、スルーする。こっちにも聞きたいことがあるしね。
「ヨトゥンヘイムでは、死んだノヤ以外に半神は見かけなかったんだけど、なんか訳あり?」
「辺境の征伐に出ているやつが多いんだと思う。むろん、街にも居たんだろうけど、君たちが来たんで、隠れているんだよ」
「そうなんだ……とりあえず、一度カテンの森に戻るよ。何をするにしても、あたし一人でなんにもできないし、みんなも心配するだろうから」
「ああ、それがいい。時間がたってるから穴が小さくなってるかもしれない」
「それって、ヨトゥンヘイムが縮んでることと関係あるの?」
「説明はあとだ、とにかく穴に!」
穴の入り口に戻ると、小さくなっているような気がした。
「縮み始めてる、戻るのは危険だよ」
「どうしよう……」
「メッセンジャーを貸してあげるよ」
「メッセンジャー?」
「うん、ラタトスクたちにも気づかれずに通信できる、魔法石の小さい奴……」
そう言うと、フェンリル二世は無造作に小石を取り出した。
「石ころ?」
「祈るとメッセンジャーになる。さあ、手に取って想いを籠めるんだ」
「う、うん」
小石に想いを込めて、穴の中に、そろりと放り込んだ……。
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)
☆ 主な登場人物
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テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
ペギー 荒れ地の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
ナフタリン ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
フェンリル二世 狼族の王子
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
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