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163『フギンとムニン』
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RE・かの世界この世界
163『フギンとムニン』ポチ
……ちょっと予定が狂った。
オーナーのオジサンがうつむいたまま呟いたよ。
あんまり密やかな声なんで、どこかに人が隠れていて、思わず漏れた声かと思ったくらい。
でも、すぐに顔を上げて、あたしとダグ(フェンリル二世)の顔を見たんで、オーナーだと分かった。
「仕方がありません、ここで処理しましょう」
オバサンもゆっくりと顔を上げたよ。
ダグはどうしているのかとチラ見したよ。
「え……ダグ?」
ダグは「ところで、オーナーさんたちは半神族じゃありませんね……」の、最後の「ね……」の顔のまま固まってしまっている。
「いやはや、おどかしてごめんね、ポチ」
「ポ、ポチ( ゚Д゚)!?」
いきなり真名で呼ばれてしまったんで、思わず両手で頬っぺを挟んで、ムンクの『叫び』みたいに驚いてしまったよ。
「あなた、この子の今の名前はポナですよ」
「ああ、そうだったな。ポナ……」
「いえ、わたしはルポライターのエリザベス……」
「もういいのよ、あなたは素直な子だから、フェンの言うままに、ここまで来てしまったのよね」
「フェンは悪い奴じゃないんだけど、思い込みがきつくて、自分の目的の為に人を巻き込んでしまう」
「もう、フェンの力だけで立て直せるほどユグドラシル(世界樹)は簡単じゃないのよ」
「フェンには、少し眠ってもらって、ポナは姫のところに戻ってもらう」
「でも……いえ、あの、いったい、お二人は?」
「主神オーディンに仕える者だよ」
「あなた、それは……」
オバサンがオジサンの手を握った。なんだか、あたしが聞いてはいけない話のようだ。
「いいじゃないか、また出会うこともあるだろう。わたしはフギン。家内はムニンという」
「おじさんがフギン、おばさんがムニン」
「もともとはトール元帥の部隊に居たんだけどね。さまざまな異世界に飛んで情報を集めるのが仕事なんだ」
「時の女神は、もうユグドラシルには居ないわ」
「え、ええ(꒪ȏ꒪)!?」
「姫が、このままブァルハラに進まれても何も解決しない。オーディンから姫の進むべき道を示すように命じられてきたんだけどね、わたしたちの姿は、もう姫には見えないんだ。それで、こちらの世界にやってきたポチ(ポナだって(^_^;))に頼もうと思ったんだけどね、フェンが先に……」
「それで、ここに宿を作って、ね……」
「今夜、眠っている間にケリをつけるつもりだったんだがね」
「フェンが余計なことを言うから」
「まだまだ、こいつは子どもだからな」
「じゃ、あなた」
オバサンがカウンターからトンカチのようなものを取り出した。
「釘でも打つんですか(^^;)?」
「まあ、釘をさすってとこかな」
オジサンが釘を出して、オバサンに差し出した……そのトンカチ、見覚えがあるよ。
「ミョルニルハンマー・プチ」
「トール元帥の部下だったって言ったでしょ」
釘はオバサン、ハンマーはオジサンに持ち替えられた。ちょっと儀式めいている。
「これから起こること、しっかり見ておくんだよ。ポチが人形になって、そして、原寸大になったのは意味のある事なんだから」
「う、うん」
「じゃ……」
オバサンが目の高さに持ち上げた釘をオジサンがハンマーで打ち付けた。
ガシッ!
「え!?」
息をのんだ。
釘を打つ音は、ごく小さい『カツン』という音なんだけど、『ガシ』って音は、となりで固まってるフェンの頭からしたんだよ。
「え、ええええ!」
直接釘が撃ち込まれたわけでもないのに、フェンの額にヒビが入って、みるみる全身に広がって行ったかと思うと。
パリン
儚い音を立てて、フェンは無数のポリゴンになって崩れていってしまった。
「さあ、こんどはポチの番だ」
「え?」
「大丈夫、死ぬわけじゃないから」
オジサンがハンマーを一振り……目の前が真っ白になった……。
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
ペギー 荒れ地の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
ナフタリン ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
フェンリル二世 狼族の王子
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
163『フギンとムニン』ポチ
……ちょっと予定が狂った。
オーナーのオジサンがうつむいたまま呟いたよ。
あんまり密やかな声なんで、どこかに人が隠れていて、思わず漏れた声かと思ったくらい。
でも、すぐに顔を上げて、あたしとダグ(フェンリル二世)の顔を見たんで、オーナーだと分かった。
「仕方がありません、ここで処理しましょう」
オバサンもゆっくりと顔を上げたよ。
ダグはどうしているのかとチラ見したよ。
「え……ダグ?」
ダグは「ところで、オーナーさんたちは半神族じゃありませんね……」の、最後の「ね……」の顔のまま固まってしまっている。
「いやはや、おどかしてごめんね、ポチ」
「ポ、ポチ( ゚Д゚)!?」
いきなり真名で呼ばれてしまったんで、思わず両手で頬っぺを挟んで、ムンクの『叫び』みたいに驚いてしまったよ。
「あなた、この子の今の名前はポナですよ」
「ああ、そうだったな。ポナ……」
「いえ、わたしはルポライターのエリザベス……」
「もういいのよ、あなたは素直な子だから、フェンの言うままに、ここまで来てしまったのよね」
「フェンは悪い奴じゃないんだけど、思い込みがきつくて、自分の目的の為に人を巻き込んでしまう」
「もう、フェンの力だけで立て直せるほどユグドラシル(世界樹)は簡単じゃないのよ」
「フェンには、少し眠ってもらって、ポナは姫のところに戻ってもらう」
「でも……いえ、あの、いったい、お二人は?」
「主神オーディンに仕える者だよ」
「あなた、それは……」
オバサンがオジサンの手を握った。なんだか、あたしが聞いてはいけない話のようだ。
「いいじゃないか、また出会うこともあるだろう。わたしはフギン。家内はムニンという」
「おじさんがフギン、おばさんがムニン」
「もともとはトール元帥の部隊に居たんだけどね。さまざまな異世界に飛んで情報を集めるのが仕事なんだ」
「時の女神は、もうユグドラシルには居ないわ」
「え、ええ(꒪ȏ꒪)!?」
「姫が、このままブァルハラに進まれても何も解決しない。オーディンから姫の進むべき道を示すように命じられてきたんだけどね、わたしたちの姿は、もう姫には見えないんだ。それで、こちらの世界にやってきたポチ(ポナだって(^_^;))に頼もうと思ったんだけどね、フェンが先に……」
「それで、ここに宿を作って、ね……」
「今夜、眠っている間にケリをつけるつもりだったんだがね」
「フェンが余計なことを言うから」
「まだまだ、こいつは子どもだからな」
「じゃ、あなた」
オバサンがカウンターからトンカチのようなものを取り出した。
「釘でも打つんですか(^^;)?」
「まあ、釘をさすってとこかな」
オジサンが釘を出して、オバサンに差し出した……そのトンカチ、見覚えがあるよ。
「ミョルニルハンマー・プチ」
「トール元帥の部下だったって言ったでしょ」
釘はオバサン、ハンマーはオジサンに持ち替えられた。ちょっと儀式めいている。
「これから起こること、しっかり見ておくんだよ。ポチが人形になって、そして、原寸大になったのは意味のある事なんだから」
「う、うん」
「じゃ……」
オバサンが目の高さに持ち上げた釘をオジサンがハンマーで打ち付けた。
ガシッ!
「え!?」
息をのんだ。
釘を打つ音は、ごく小さい『カツン』という音なんだけど、『ガシ』って音は、となりで固まってるフェンの頭からしたんだよ。
「え、ええええ!」
直接釘が撃ち込まれたわけでもないのに、フェンの額にヒビが入って、みるみる全身に広がって行ったかと思うと。
パリン
儚い音を立てて、フェンは無数のポリゴンになって崩れていってしまった。
「さあ、こんどはポチの番だ」
「え?」
「大丈夫、死ぬわけじゃないから」
オジサンがハンマーを一振り……目の前が真っ白になった……。
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
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ポチ シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
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