163 / 230
164『瀕死のトール元帥』
しおりを挟む
RE・かの世界この世界
164『瀕死のトール元帥』テル
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!
少年巨人族のアドバイスで野営のテントを張り終えたとき、森の中央あたりでとんでもない音がした。
「え、なに?」
ペグを打つ手が止まって、目を向けた時にはヒルデもタングリスも駆け出している。
「ケイト、行くぞ!」
「うん!」
「わたし」
「ユーリアは少年と残れ! ロキもだ!」
ペグもハンマーも放り出し、ケイトと並んでカテンの森を奥に向かって走る。
ヒルデたちの姿は見えなくなっているけど、森の真ん中と思われるあたりから煙が立ち上っているので、それを目当てに奥を目指す。
奥に近づくにしたがって、鉄と油と肉の焼ける臭いが濃くなって息苦しく、目もシカシカしてくる。
うわあ……………………(;'∀')
言葉にならなかった。
学校の校庭ほどの範囲に木々がなぎ倒され、その木々を押しつぶしたり下敷きになったりして数十両の戦車が擱座している。煙や炎を噴き出しているものや、これでも戦車かと目を疑うようなひしゃげ方をしたものばかりで、まともなものは一両もないありさまだ。
そして、その戦車のことごとくがトール元帥の部隊の所属を示すミョルニルハンマーのマークがついている。火や煙を噴いている車両からは肉の焼ける臭いがして、戦車の周囲には半ば焦げた戦車兵たちの骸が転がっている。
「あ、あそこに!」
タングリスの声がして、わたしたちも、そこを目指した。
砲塔が吹き飛んだ五号戦車の横にトール元帥が横たわっている。
「元帥、しっかりしてください!」
タングリスが駆け寄ってトール元帥を抱き起す。ヒルデは比較的無事な車両からAEDを取り出して、元帥の軍服の胸をはだけようとする。
「姫、そのようなものでは、もう間に合いません……」
「元帥!!」
ヒルデの呼びかけに、元帥はようやく目を開けた。
「わたしの手にも負えないところまで来ております、なんとかカテンの森まで撤退してきましたが……ここまでです……姫たちはお逃げなされ……別の次元に……異世界に……」
「じい、死ぬな!」
「間もなく、敵の追手が……」
「元帥!」
ちょっと違和感……トール元帥が普通の人間の大きさになっているのだ。
そうか、デミゴッドの呪いめいたものが元帥にまで影響しているんだ。
若返って消えてしまわないのは、トール元帥の神性によるものなのかもしれない。
「元帥、タングニョーストは?」
「激戦の中で行方がしれません……おそらくは、退路を確保するために……」
「元帥、アルティメイトリカバリーを」
「タングリス(‘꒪д꒪’)!」
ヒルデが目をむき、元帥が息をのんだ。
「このために、自分は存在しているのです」
そう言うと、タングリスは軍服を脱ぎ始めた。
「タン……グリ……」
数秒で美しい裸身を晒したタングリスはトール元帥の上に覆いかぶさっていく。
「お、おまえらは見るな!」
わたしたちの存在に気付いたヒルデが体を張って隠そうとする。
「あ、あわわわ……((;゚Д゚))」
「すまない!」
ショックを受けているケイトを引きずって焦げた木の陰に隠れる。
ア! アッ! アア……アアアア……!
苦痛とも喜悦ともとれるタングリスの声が森の中に木霊する。
この声を聞いてはいけない! 聞かせてはいけない!
テルの頭を抱えるようにして木の陰に蹲った。
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
ペギー 荒れ地の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
ナフタリン ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
フェンリル二世 狼族の王子
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
164『瀕死のトール元帥』テル
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!
少年巨人族のアドバイスで野営のテントを張り終えたとき、森の中央あたりでとんでもない音がした。
「え、なに?」
ペグを打つ手が止まって、目を向けた時にはヒルデもタングリスも駆け出している。
「ケイト、行くぞ!」
「うん!」
「わたし」
「ユーリアは少年と残れ! ロキもだ!」
ペグもハンマーも放り出し、ケイトと並んでカテンの森を奥に向かって走る。
ヒルデたちの姿は見えなくなっているけど、森の真ん中と思われるあたりから煙が立ち上っているので、それを目当てに奥を目指す。
奥に近づくにしたがって、鉄と油と肉の焼ける臭いが濃くなって息苦しく、目もシカシカしてくる。
うわあ……………………(;'∀')
言葉にならなかった。
学校の校庭ほどの範囲に木々がなぎ倒され、その木々を押しつぶしたり下敷きになったりして数十両の戦車が擱座している。煙や炎を噴き出しているものや、これでも戦車かと目を疑うようなひしゃげ方をしたものばかりで、まともなものは一両もないありさまだ。
そして、その戦車のことごとくがトール元帥の部隊の所属を示すミョルニルハンマーのマークがついている。火や煙を噴いている車両からは肉の焼ける臭いがして、戦車の周囲には半ば焦げた戦車兵たちの骸が転がっている。
「あ、あそこに!」
タングリスの声がして、わたしたちも、そこを目指した。
砲塔が吹き飛んだ五号戦車の横にトール元帥が横たわっている。
「元帥、しっかりしてください!」
タングリスが駆け寄ってトール元帥を抱き起す。ヒルデは比較的無事な車両からAEDを取り出して、元帥の軍服の胸をはだけようとする。
「姫、そのようなものでは、もう間に合いません……」
「元帥!!」
ヒルデの呼びかけに、元帥はようやく目を開けた。
「わたしの手にも負えないところまで来ております、なんとかカテンの森まで撤退してきましたが……ここまでです……姫たちはお逃げなされ……別の次元に……異世界に……」
「じい、死ぬな!」
「間もなく、敵の追手が……」
「元帥!」
ちょっと違和感……トール元帥が普通の人間の大きさになっているのだ。
そうか、デミゴッドの呪いめいたものが元帥にまで影響しているんだ。
若返って消えてしまわないのは、トール元帥の神性によるものなのかもしれない。
「元帥、タングニョーストは?」
「激戦の中で行方がしれません……おそらくは、退路を確保するために……」
「元帥、アルティメイトリカバリーを」
「タングリス(‘꒪д꒪’)!」
ヒルデが目をむき、元帥が息をのんだ。
「このために、自分は存在しているのです」
そう言うと、タングリスは軍服を脱ぎ始めた。
「タン……グリ……」
数秒で美しい裸身を晒したタングリスはトール元帥の上に覆いかぶさっていく。
「お、おまえらは見るな!」
わたしたちの存在に気付いたヒルデが体を張って隠そうとする。
「あ、あわわわ……((;゚Д゚))」
「すまない!」
ショックを受けているケイトを引きずって焦げた木の陰に隠れる。
ア! アッ! アア……アアアア……!
苦痛とも喜悦ともとれるタングリスの声が森の中に木霊する。
この声を聞いてはいけない! 聞かせてはいけない!
テルの頭を抱えるようにして木の陰に蹲った。
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
ペギー 荒れ地の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
ナフタリン ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
フェンリル二世 狼族の王子
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる