ここは世田谷豪徳寺

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
21 / 139

21《早朝のピンポン》

しおりを挟む
ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)

第21話《早朝のピンポン》さくら 



 ピンポ~ン


 連ドラの録画を観ていたら、リビングのドアホンが鳴った。

「さくら、お願い」

 おせち料理の準備で手が離せないお母さんが背中で命令。

「え……あ……うん」

 弟が急病で、ケンカ相手だったカレとの距離が一気に縮まる山場だったんだけど、リモコンをポーズにする。ちょうどカレが目を剥いて「言ってる場合かあ!」と叫んで大写し。日ごろのイケメンがすごく三枚目のストップモーションで笑いそうになりながらドアホンに出る。

 で、ピンポンの画面には、テレビの画面みたく忠八のドアップが映っていた。

「篤子が@&%$#?@##@&%%!!?」

 なにか興奮しているようで、頭の篤子以外意味が分からない。仕方がないので玄関を開けた。

「どうしたのよ、こんな朝から?」

「篤子が腹痛で苦しんで、救急車呼んだんだけど、オレいっしょに乗っていくわけにはいかないんだ。悪い、篤子といっしょに救急車に乗ってくれないか!?」

「え、大変じゃないの!?」

 言いながら、なんで、忠八が救急車に乗れないのか不思議に思った。

「話は聞いたわ、昨日はどうも。さくら、コートとマフラー。お財布、コートのポケットに入れておいたから、急いで、救急車が来ちゃうわ!」

 お母さんの言葉が合図であったかのように救急車のサイレンが近づいてきた。


 年末で、どこの病院も混んでいて、四件目の病院が、ようやく受け入れてくれた。


 篤子さんは、急性盲腸炎だった。

 すぐにオペにかかるが、あたしは困った。

「君は、病人さんの身内?」

「あ……」

 ドクターの質問にあたしは絶句した。篤子さんは忠八の彼女だとは思うんだけど、素性が全く分からない。

「困ったな、同意書がなきゃオペできないよ」

 救急車に乗るとき忠八から聞いた番号に電話した。

――大丈夫、二三分で、篤子の母親が、そっちいくから。それまで頼む――

 後を聞こうとしたら、切れてしまった。


 あんまり失礼で薄情なので、かけ直そうとしたら、高そうなコートを着たオバサンがやってきた。

「篤子の母親です。必要な書類、それから様態などお伺いします。あなたが佐倉さんね、どうもありがとう。佐倉さんに言うのもなんだけど、忠八に言っておいてくださるかしら。こういうことまで人任せにするんじゃないって」

「ほんとですね、男として最低です!」

「その一言も付け加えてやって!」

 オバサンは高そうなコートを翻し、高そうな香水の匂いをまき散らして、ドクターといっしょに行ってしまった。

――男としても最低だって!――

 忠八にメール一本打って家に戻ろうとした。

 で、病院を出ると、忠八が湯気をたてながら、道路の左側に立っている。

「なにさ、ここまで来てるんだったら、病院寄りなさいよ。篤子さんは大切な人なんでしょ!」

「家まで送る。後ろ乗りなよ」

「いい、電車で帰る」

 忠八は、無言で自転車を押しながら付いてきた。

「……オレ、お袋には会えないんだ」

「チュウクンね……」

 そう言いかけて、違和感を感じた。

「彼女の母親をお袋って……」

「え、だって、オレの母親だし」

「え……チュウクンと篤子さんて?」

「妹だよ……」

「え?」

「あれ、言ってなかったっけ?」


 あたしは、地球の自転が止まって宇宙空間に自分だけ放り出されたようなショックを受けた……!

 連ドラの続きを観ようと思ったけど、ヤメタ!


☆彡 主な登場人物
佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
佐倉  さつき       さくらの姉
佐倉  惣次郎       さくらの父
佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
秋元            さつきのバイト仲間
四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
四ノ宮 篤子        忠八の妹
香取            北町警察の巡査
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】メインヒロインとの恋愛フラグを全部ブチ壊した俺、サブヒロインと付き合うことにする

エース皇命
青春
《将来ヤンデレになるメインヒロインより、サブヒロインの方が良くね?》  16歳で自分が前世にハマっていた学園ドラマの主人公の人生を送っていることに気付いた風野白狼。しかしそこで、今ちょうどいい感じのメインヒロインが付き合ったらヤンデレであることを思い出す。  告白されて付き合うのは2か月後。  それまでに起こる体育祭イベント、文化祭イベントでの恋愛フラグを全てぶち壊し、3人の脈ありサブヒロインと付き合うために攻略を始めていく。  3人のサブヒロインもまた曲者揃い。  猫系ふわふわガールの火波 猫音子に、ツンデレ義姉の風野 犬織、アニオタボーイッシュガールの空賀 栗涼。  この3人の中から、最終的に誰を選び、付き合うことになるのか。てかそもそも彼女たちを落とせるのか!?  もちろん、メインヒロインも黙ってはいない!  5人の癖強キャラたちが爆走する、イレギュラーなラブコメ、ここに誕生! ※カクヨム、小説家になろうでも連載中!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...