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91『帰港』
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ここは世田谷豪徳寺
91『帰港』 (惣一編)
佐世保に一週間ほど足止めされたあと、横須賀に移動することになった。
『たかやす』は佐世保に係留されたままだったが、昨日護衛艦籍を解かれることを前提に横須賀に回航されることになった。『いこま』と『かつらぎ』も同様だ。回航員は元の乗組員が、そのままあてられた。
佐世保沖の海戦がもとで、C国は三つの国に分裂してしまった。むろんC国が長年溜めこんだ国内の経済的な矛盾と、政治的な無理の結果なのだが、世間は、そうは見ない。ポンコツのたかやす艦隊がC国の息の根を止めたと思っており。船にも人にも風当たりが強い。実際C国が分裂したことで、東アジアの軍事・政治的なバランスが崩れ、経済的な混乱は東アジアでは深刻になりつつあった。
『たかやす』以下の三隻は、その元凶のように思われた。
国会では、あろうことか、野党が、この東アジアの混乱は日本のせいであり、日本は相応の責任を果たすべきだと鼻息が荒く、それを支持する世論は意外に多かった。
「昔なら、戦勝艦として記念の観艦式なんかやってもらって、『たかやす』なんか記念艦で永久保存だよ」
出航の前夜、眠れぬままに船務長がベッドでボヤイていた。
あくる朝の出航は、佐世保基地の司令以下数十名の見送りがあっただけで、恒例の「軍艦マーチ」の演奏すら無かった。
しかし、よく見ると基地の建物の中から、みんな挙手の敬礼で見送ってくれていた。近くの岸壁では、元のC国人たち数百人が抗議のデモにきていて、マスコミが彼らを中心に、取材しているのがブリッジにいても分かった。
「艦長が人身御供になって退役しただけでも足らんようだな」
「ま、我々だけでも日系日本人でいましょう」
一瞬意味の分からない顔をした船務長だったが、ブリッジのみんなには分かったようで、ブリッジは笑いに満ち、遅れて船務長も笑った。
瀬戸大橋の下をくぐると、数百個の生卵が『たかやす』目がけて落とされた。大半は海に落ちたが数十個が艦体に当たった。
「ここまでやるか……」
もう怒りを通り越して苦笑が出てくる。
「今の様子は記録しておきました。橋の上の人物と車も撮影しておきました」
両舷の見張り員が報告にきた。
「船舶往来妨害だな。一応映像をつけて海保に通報」
艦内は淡々としていた。
さすがに、紀伊水道を抜けて外海に出ると妨害もなくなった。そしてあくる日浦賀を抜けて、横須賀に近づくと、第七艦隊の艦艇4隻が、前に立ちふさがった。
「え、アメリカまでも……」
そう思うと、三隻のポンコツが近づくにしたがって道をあけてくれ、四隻ともども登舷礼で出迎えてくれているのが分かった。そして自衛隊ですら遠慮していた軍艦マーチが演奏された。
「外交的なジェスチャーやねんやろけど、感動するなあ」
艦長と同郷の航海長が、関西訛りでため息をついた。
「手すきの者、最上甲板。登舷礼に応えよ!」
艦長代わりの船務長が命じた。佐世保沖海戦から初めての晴れがましい出迎えだった。
「船務長。速力を微速に落としませんか」
この話は、直ぐに通じた。
横須賀基地隊に歓迎の準備をさせるためだ。
アメリカがやらなければ、なにもできない日本を可笑しく情けなく思った。
そして、横須賀では公私両面で、めでたいとも厄介とも言えることが待っていた惣一だった。
91『帰港』 (惣一編)
佐世保に一週間ほど足止めされたあと、横須賀に移動することになった。
『たかやす』は佐世保に係留されたままだったが、昨日護衛艦籍を解かれることを前提に横須賀に回航されることになった。『いこま』と『かつらぎ』も同様だ。回航員は元の乗組員が、そのままあてられた。
佐世保沖の海戦がもとで、C国は三つの国に分裂してしまった。むろんC国が長年溜めこんだ国内の経済的な矛盾と、政治的な無理の結果なのだが、世間は、そうは見ない。ポンコツのたかやす艦隊がC国の息の根を止めたと思っており。船にも人にも風当たりが強い。実際C国が分裂したことで、東アジアの軍事・政治的なバランスが崩れ、経済的な混乱は東アジアでは深刻になりつつあった。
『たかやす』以下の三隻は、その元凶のように思われた。
国会では、あろうことか、野党が、この東アジアの混乱は日本のせいであり、日本は相応の責任を果たすべきだと鼻息が荒く、それを支持する世論は意外に多かった。
「昔なら、戦勝艦として記念の観艦式なんかやってもらって、『たかやす』なんか記念艦で永久保存だよ」
出航の前夜、眠れぬままに船務長がベッドでボヤイていた。
あくる朝の出航は、佐世保基地の司令以下数十名の見送りがあっただけで、恒例の「軍艦マーチ」の演奏すら無かった。
しかし、よく見ると基地の建物の中から、みんな挙手の敬礼で見送ってくれていた。近くの岸壁では、元のC国人たち数百人が抗議のデモにきていて、マスコミが彼らを中心に、取材しているのがブリッジにいても分かった。
「艦長が人身御供になって退役しただけでも足らんようだな」
「ま、我々だけでも日系日本人でいましょう」
一瞬意味の分からない顔をした船務長だったが、ブリッジのみんなには分かったようで、ブリッジは笑いに満ち、遅れて船務長も笑った。
瀬戸大橋の下をくぐると、数百個の生卵が『たかやす』目がけて落とされた。大半は海に落ちたが数十個が艦体に当たった。
「ここまでやるか……」
もう怒りを通り越して苦笑が出てくる。
「今の様子は記録しておきました。橋の上の人物と車も撮影しておきました」
両舷の見張り員が報告にきた。
「船舶往来妨害だな。一応映像をつけて海保に通報」
艦内は淡々としていた。
さすがに、紀伊水道を抜けて外海に出ると妨害もなくなった。そしてあくる日浦賀を抜けて、横須賀に近づくと、第七艦隊の艦艇4隻が、前に立ちふさがった。
「え、アメリカまでも……」
そう思うと、三隻のポンコツが近づくにしたがって道をあけてくれ、四隻ともども登舷礼で出迎えてくれているのが分かった。そして自衛隊ですら遠慮していた軍艦マーチが演奏された。
「外交的なジェスチャーやねんやろけど、感動するなあ」
艦長と同郷の航海長が、関西訛りでため息をついた。
「手すきの者、最上甲板。登舷礼に応えよ!」
艦長代わりの船務長が命じた。佐世保沖海戦から初めての晴れがましい出迎えだった。
「船務長。速力を微速に落としませんか」
この話は、直ぐに通じた。
横須賀基地隊に歓迎の準備をさせるためだ。
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