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119≪かまっちゃいらんない!≫
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新・ここは世田谷豪徳寺・22(さつき編)
119≪かまっちゃいらんない!≫
かっまちゃいらんない!
というのが正直な気持ちだった。
けれど、トムと最後に会ったのはあたしだ。
そのとき、あたしの聖地である山下公園で、焼き芋食べながら一発かましたクサイやつだけど、その何倍もトムの性格の弱さなんかを遠慮なくえぐってしまった。高坂先生も直々に電話されてきたことだし捨て置くこともできず、あたしは当たりをつけた。
イギリス大使館の前……ビンゴだった。
イギリス大使館は皇居に面する半蔵門から千鳥が淵公園沿い一番町の広大な敷地に建つ。高い建物は無く煙突のついた建物やテニスコートもあって、アメリカ大使館や二番町のイスラエル大使館などのように厳しい警備や重苦しい雰囲気は無い。 その閑静な大使館前にグデングデンになったトムが居た。
「あ、あなた知合いですか。じゃ、あとよろしくお願いします」
大使館前で、警備に当たっていたお巡りさんが渡りに船とばかり、あたしに押し付けてきた。
「あの、あなたの国の分裂寸前だったスコットランドの若者なんですけど、しばらくロビーの片隅にでも休ませてやっていただけませんか!?」
ダメ元で、門の向こうのイギリス人職員に怒鳴ってみた。
すると、あろうことかその中年のイギリスのオッサンが、門を開けて出てきてくれた。
「彼の身元は自主的に見せてくれた留学ビザで分かっています。昨日から何人もスコットランドを含む我が国民がいたので、とうに引き上げてくれたと思ったんですけどね……」
オッサンは、あたしに押し付けたそうに語尾を濁しながら、あたしの目をうかがった。
「第一義的にはイギリスの一部であることが確認されたばかりのスコットランド人なんです。大学にも連絡して引き取ってもらえるようにします。それまでの間でいいんです。もし拒否されるようなら、イギリスは心神耗弱なスコットランドの若者を路上に放置したって、直ちにFacebookに写真付きで投稿しますけど。拡散希望で!」
「オオ、もちろんですよ。スコットランド人は我が国民です。酔いがさめるまでお休みになってください」
イギリス大使館、苦悩のスコットランド青年を保護する!
キャプション付けて、Facebookに投稿した。むろんかいがいしくトムを介抱するオッサンとトムのツ-ショット付で。
控室みたいなとこで休ませてくれた。その間にあたしは高坂先生に電話。先生は30分ほどでやってきてくれた。トムは半分ほどしか覚めてなかったけど、オッサンが手伝ってくれて、なんとか先生のセダンに乗せた。
「イギリス大使館のセキュリティーは甘かっただろう」
「はい、ボディーチェックとか無かったでしたし」
「実は、最新式のセキュリティーになってて、入館者は全て特殊なカメラでチェックされてるんだ」
「え、どんな?」
バイトの取材者意識丸出しで、あたしは聞いた。
「三方向にカメラがあって、それが入館者の服を透かして3Dの映像で見えるようにしてあるんだ。ほら、これが駐仏大使館の映像」
先生は運転しながらパッドを見せてくれた。十秒ほどの動画だったけど、スッポンポンのオジサンやオネーサンが歩いているのがはっきり写っていた。ちゃんとブラやパンツの食い込んだとこまで写ってる!
「こ、これって、プライバシーの侵害じゃないですか!?」
「まあ、これだけテロがあると仕方ないね。それ、右方向に手をスライドしてごらん……」
「ギョエ!」
なんと、人の姿が骸骨になった!
「早すぎるんだ。もうちょっとゆっくりやると内臓が分かる。最近の自爆テロは体の中に爆弾入れてるやつもいるからね」
ゆっくり戻すと内臓に、さらに戻すと下着姿になった。
「こんな恥ずかしいもの撮られてたんですか!?」
イギリスはジェームスボンドの国だ、これくらいのことはやりかねない。すると先生は大笑いした。
「それはエープリルフールの日にBBCが流したイタズラだよ。教材のためにとっておいたんだ」
なるほど、わがゼミのテーマは『ユーモアの力』であった……。
119≪かまっちゃいらんない!≫
かっまちゃいらんない!
というのが正直な気持ちだった。
けれど、トムと最後に会ったのはあたしだ。
そのとき、あたしの聖地である山下公園で、焼き芋食べながら一発かましたクサイやつだけど、その何倍もトムの性格の弱さなんかを遠慮なくえぐってしまった。高坂先生も直々に電話されてきたことだし捨て置くこともできず、あたしは当たりをつけた。
イギリス大使館の前……ビンゴだった。
イギリス大使館は皇居に面する半蔵門から千鳥が淵公園沿い一番町の広大な敷地に建つ。高い建物は無く煙突のついた建物やテニスコートもあって、アメリカ大使館や二番町のイスラエル大使館などのように厳しい警備や重苦しい雰囲気は無い。 その閑静な大使館前にグデングデンになったトムが居た。
「あ、あなた知合いですか。じゃ、あとよろしくお願いします」
大使館前で、警備に当たっていたお巡りさんが渡りに船とばかり、あたしに押し付けてきた。
「あの、あなたの国の分裂寸前だったスコットランドの若者なんですけど、しばらくロビーの片隅にでも休ませてやっていただけませんか!?」
ダメ元で、門の向こうのイギリス人職員に怒鳴ってみた。
すると、あろうことかその中年のイギリスのオッサンが、門を開けて出てきてくれた。
「彼の身元は自主的に見せてくれた留学ビザで分かっています。昨日から何人もスコットランドを含む我が国民がいたので、とうに引き上げてくれたと思ったんですけどね……」
オッサンは、あたしに押し付けたそうに語尾を濁しながら、あたしの目をうかがった。
「第一義的にはイギリスの一部であることが確認されたばかりのスコットランド人なんです。大学にも連絡して引き取ってもらえるようにします。それまでの間でいいんです。もし拒否されるようなら、イギリスは心神耗弱なスコットランドの若者を路上に放置したって、直ちにFacebookに写真付きで投稿しますけど。拡散希望で!」
「オオ、もちろんですよ。スコットランド人は我が国民です。酔いがさめるまでお休みになってください」
イギリス大使館、苦悩のスコットランド青年を保護する!
キャプション付けて、Facebookに投稿した。むろんかいがいしくトムを介抱するオッサンとトムのツ-ショット付で。
控室みたいなとこで休ませてくれた。その間にあたしは高坂先生に電話。先生は30分ほどでやってきてくれた。トムは半分ほどしか覚めてなかったけど、オッサンが手伝ってくれて、なんとか先生のセダンに乗せた。
「イギリス大使館のセキュリティーは甘かっただろう」
「はい、ボディーチェックとか無かったでしたし」
「実は、最新式のセキュリティーになってて、入館者は全て特殊なカメラでチェックされてるんだ」
「え、どんな?」
バイトの取材者意識丸出しで、あたしは聞いた。
「三方向にカメラがあって、それが入館者の服を透かして3Dの映像で見えるようにしてあるんだ。ほら、これが駐仏大使館の映像」
先生は運転しながらパッドを見せてくれた。十秒ほどの動画だったけど、スッポンポンのオジサンやオネーサンが歩いているのがはっきり写っていた。ちゃんとブラやパンツの食い込んだとこまで写ってる!
「こ、これって、プライバシーの侵害じゃないですか!?」
「まあ、これだけテロがあると仕方ないね。それ、右方向に手をスライドしてごらん……」
「ギョエ!」
なんと、人の姿が骸骨になった!
「早すぎるんだ。もうちょっとゆっくりやると内臓が分かる。最近の自爆テロは体の中に爆弾入れてるやつもいるからね」
ゆっくり戻すと内臓に、さらに戻すと下着姿になった。
「こんな恥ずかしいもの撮られてたんですか!?」
イギリスはジェームスボンドの国だ、これくらいのことはやりかねない。すると先生は大笑いした。
「それはエープリルフールの日にBBCが流したイタズラだよ。教材のためにとっておいたんだ」
なるほど、わがゼミのテーマは『ユーモアの力』であった……。
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