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135≪💀 髑髏ものがたり・7≫
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新 VARIATIONS*さくら*37(さつき編)
135≪💀 髑髏ものがたり・7≫
イケメン中尉さんが戸惑ったような顔して桜子さんのやや後ろに立った……ところで目が覚めた。
新聞の反応は直ぐには出なかったが、翌週、うちの雑誌が出たころから反応があった。
反応は二種類。
戦死者の首を切って骨格見本のようにした猟奇性と残虐性への表面的な興味。いわゆる怖いもの見たさ。
それと戦争犯罪とまで主張するラディカルな反応。戦闘地域や時期がはっきりしているので、当時のオーストラリアの部隊や兵士まで明らかになった。
オーストラリア政府は、当初は否定していたが、当時部隊にいた兵士が生きていて「本当だった」と証言した。この証言は証拠写真が付いていた。鍋の中で煮られる首と兵士たちの飯盒炊爨のように喜んでいる姿が生々しく写っていた。当然兵士の名前まで分かったが、すでに故人になっていた。
「父がやったこととはいえ、これは死者に対する冒涜です。たいへん残念に思います。父に代わってお詫びします」
年老いた故人の娘さんが涙ながらに謝っていた。
「写真は、野生のノブタを煮ているところ。言いがかりだ!」
という人もいた。
科学技術というものは凄いもので、写真を鮮明にし、鍋の中の首と、頭蓋骨の特徴から90%の確率で同一人物のものであるということが分かり、オーストラリア政府が声明を発表するところまで行った。
あたしは山下公園に来ている。
阿部中尉が「山下公園に行きたい」と夢の中で言ったから。
「ここはね、関東大震災の瓦礫を埋め立てて造った公園なんだよ。子供の頃から、よくここで遊んだもんだ」
阿部中尉が言う。もう目が覚めていても姿が見える。あたしは人が見たら独り言を言っているように見えたかもしれない。
「あんまり嬉しそうなお顔には見えないんですけど、ひょっとして、あたしがやっていることって、余計なことだったですか?」
「……さつきさんや、惣一君には感謝している……」
「なんですか?」
「あれは異常な戦争だった、我々も褒められたことばかりやってきたわけじゃないしね……敵の兵隊を恨む気持ちは、自分にはない」
「そうなんですか……」
「あれは氷川丸だね、アメリカ航路の豪華客船だ」
あやうく「大人二枚」と言うところだった。
二人で氷川丸に乗った。陸軍中尉さんは子供のようにデッキを走り、タラップを上り下りした。
「そうだ、タイタニックごっこをしよう!」
「タイタニックごっこ?」
「ほら、二十世紀の終わりごろに映画になったじゃないか。アメリカでテレビ放送されるのを観ていた」
「案外ミーハーなんですね」
「ME HER? 英語かい?」
「いや、そうじゃなくて……」
案外俗語の説明というのは難しい。
「ああ、思い出した。ミーハーのことか!」
「分かるんですか?」
「ああ、昭和の初めにはあったからね。ある事象に対して(それがメディアなどで取り上げられ)世間一般で話題になってから飛びつくことだ。ミーはみつまめのことで、ハーは林長次郎のことだ」
「林長次郎?」
「ああ、僕らの時代の二枚目スターさ。女の子の好きな、その二つをくっつけてミーハーになったんだ」
「そうなんだ」
「さあ、舳先に行こう」
「あそこ立ち入り禁止ですよ。監視カメラもあるし」
「なあに、五分ほど見えないようにすればいいんだ」
阿部さんの言うことを信じて舳先の方へ。すると、動かないはずの氷川丸が白波を立てて、いっぱいに向かい風を受け大海原を走り始めた。あたしたちは、無邪気にタイタニックごっこをやった。
不思議なことに、映画と同じアングルでスマホに映像が残された。
誰にも見せない、あたしだけの宝物になった。
135≪💀 髑髏ものがたり・7≫
イケメン中尉さんが戸惑ったような顔して桜子さんのやや後ろに立った……ところで目が覚めた。
新聞の反応は直ぐには出なかったが、翌週、うちの雑誌が出たころから反応があった。
反応は二種類。
戦死者の首を切って骨格見本のようにした猟奇性と残虐性への表面的な興味。いわゆる怖いもの見たさ。
それと戦争犯罪とまで主張するラディカルな反応。戦闘地域や時期がはっきりしているので、当時のオーストラリアの部隊や兵士まで明らかになった。
オーストラリア政府は、当初は否定していたが、当時部隊にいた兵士が生きていて「本当だった」と証言した。この証言は証拠写真が付いていた。鍋の中で煮られる首と兵士たちの飯盒炊爨のように喜んでいる姿が生々しく写っていた。当然兵士の名前まで分かったが、すでに故人になっていた。
「父がやったこととはいえ、これは死者に対する冒涜です。たいへん残念に思います。父に代わってお詫びします」
年老いた故人の娘さんが涙ながらに謝っていた。
「写真は、野生のノブタを煮ているところ。言いがかりだ!」
という人もいた。
科学技術というものは凄いもので、写真を鮮明にし、鍋の中の首と、頭蓋骨の特徴から90%の確率で同一人物のものであるということが分かり、オーストラリア政府が声明を発表するところまで行った。
あたしは山下公園に来ている。
阿部中尉が「山下公園に行きたい」と夢の中で言ったから。
「ここはね、関東大震災の瓦礫を埋め立てて造った公園なんだよ。子供の頃から、よくここで遊んだもんだ」
阿部中尉が言う。もう目が覚めていても姿が見える。あたしは人が見たら独り言を言っているように見えたかもしれない。
「あんまり嬉しそうなお顔には見えないんですけど、ひょっとして、あたしがやっていることって、余計なことだったですか?」
「……さつきさんや、惣一君には感謝している……」
「なんですか?」
「あれは異常な戦争だった、我々も褒められたことばかりやってきたわけじゃないしね……敵の兵隊を恨む気持ちは、自分にはない」
「そうなんですか……」
「あれは氷川丸だね、アメリカ航路の豪華客船だ」
あやうく「大人二枚」と言うところだった。
二人で氷川丸に乗った。陸軍中尉さんは子供のようにデッキを走り、タラップを上り下りした。
「そうだ、タイタニックごっこをしよう!」
「タイタニックごっこ?」
「ほら、二十世紀の終わりごろに映画になったじゃないか。アメリカでテレビ放送されるのを観ていた」
「案外ミーハーなんですね」
「ME HER? 英語かい?」
「いや、そうじゃなくて……」
案外俗語の説明というのは難しい。
「ああ、思い出した。ミーハーのことか!」
「分かるんですか?」
「ああ、昭和の初めにはあったからね。ある事象に対して(それがメディアなどで取り上げられ)世間一般で話題になってから飛びつくことだ。ミーはみつまめのことで、ハーは林長次郎のことだ」
「林長次郎?」
「ああ、僕らの時代の二枚目スターさ。女の子の好きな、その二つをくっつけてミーハーになったんだ」
「そうなんだ」
「さあ、舳先に行こう」
「あそこ立ち入り禁止ですよ。監視カメラもあるし」
「なあに、五分ほど見えないようにすればいいんだ」
阿部さんの言うことを信じて舳先の方へ。すると、動かないはずの氷川丸が白波を立てて、いっぱいに向かい風を受け大海原を走り始めた。あたしたちは、無邪気にタイタニックごっこをやった。
不思議なことに、映画と同じアングルでスマホに映像が残された。
誰にも見せない、あたしだけの宝物になった。
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