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139≪豪徳寺駅の向こうの温故知新≫
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新・ここは世田谷豪徳寺・42(さくら編)
139≪豪徳寺駅の向こうの温故知新≫
前々から言ってるけど勉強は好きじゃない。
だから、中間テストも後半だっちゅうのに身が入らない。
日本史のテストなんか、暗記したこと全部書いたら、見直しもしないでい眠ってしまう。そんで蟻さんとお話しする夢なんか見てしまう。一昨日は、試験の後、家の近所まで帰りながら、公園に寄って、ガキンチョのころから乗り慣れたブランコに腰かけて二時間。アンニュイに身を任せながら、結論も出ない考え事をもてあそんでいた。
来週残っている教科は昨日すませた。ノートやプリント見て、出そうなところを熟読てかゆっくり読んで。一回ずつ紙に書いておしまい。印象に残ったのは国語。
太宰治の『富岳百景』がメイン。漢字の読み、代名詞の「それ」とか「あれ」が何を指すか。読書力というか本を読む馬力はあるから、一回読み直しておしまい。「富士には月見草がよく似合う」「棒状の素朴さ」「富士はなんの象徴か」「単一表現」とはなにか。プリントの答えを丸のまま頭に入れる。こういうことの答えを全部集めても、『富岳百景』は分からない。
例えば「富士」というのは「軍国主義・封建主義・当時の文学などの権威」などと書けば正解。だけど、あたしは、これでは収まらない。権威の否定だけで納得できるほど人生は甘くない。太宰だって、そう思っている。それでも掴みきれない自分のいらだちが見えてこない。でも、そんなことを書いたって減点されるだけ。だから考えない。
軍国主義への反対? 笑わせちゃいけない。太宰は、そこまで考えて書いていない。御坂峠の茶屋の母子に癒される……とんでもない。
あの茶屋の主人は戦争に行って中国大陸で戦っている。もし、戦争というものの権威に反対するなら、太宰ほどの文才があれば、別の形で書いている。失礼だけど、教えてくれた国語の先生は、こんな事実も見落としたまま授業をしたんだ。あの先生の授業からは太宰の苦悩も、そこから出てくる命がけのユーモアも分からない。
今日は録画したまま見てなかった『エヴァンゲリオン』を見た。
なんで中学生が、ここまで苦しんでエヴァに乗り込んで、正体不明の「使徒」と戦わなければならないのか? 観ても読み込んでも出てこない。碇シンジが痛々しい。
あたしの勝手な思い込みかもしれないけど、作者も「使徒」の意味よく分かってないんじゃないだろうか。分かっていないからこそ、面白いと思っちゃうんだろうな。太宰の「不安」と共通する曖昧さ、漠然さ。それが「青春なんだよ」と言われても、あたしは納得しない。
「あ、しまった!」
お母さんが台所で叫んだ。どうやら生協に注文しておいた食材に、注文のし忘れがあったみたい。
「あたし、行ってくるよ」
エヴァも最後まで観て「思わせぶり」を納得。当然消化不良。で買い物に行く。
買い物は良い。メモしてもらったものを駅前のスーパーまで買いに行って、帰ってくる。お母さんが感謝してくれる。そして晩ご飯は滞りなく食卓に並ぶ。
あたしは、こういう単純な問題と、問題解決が好き。
一度はアイドルとか俳優になる夢を見た。確かに夢なんだろうけど、実際に、そんな人生を途中まで生きていたような気がするけど、あれは長い白昼夢。でなかったらパラレルワールドのわたし。なんかの拍子で、あっちへ行って戻ってきたんだろう。もしくは、向こうに戻っていないか。言えることは、どっちも生まれ育った世田谷は豪徳寺で起こったということ。どんな生き方をしようと、生まれ育った豪徳寺から道が伸びていくんだ。あんがい不器用なのかもしれないね。
長い話に付き合ってくださってありがとう、中間テストが終わったら豪徳寺名物の招き猫を買いに行きます。
めったに行かない豪徳寺駅の向こう側、新しいファンシーショップが出来ているのを発見。そのウィンドウに可愛い招き猫があるのを発見したから。むろんレトロに作られた新製品。ひょっとしたら焼き物でさえなくてプラスチックかもしれない、高校生が、ふと買ってみようかと思うくらいの値段だしね。でも、なんちゅうか、温故知新風の感じがいいんだ。
それを机の上に置いて、新しい温故知新が湧いてきたらね、またお目にかかります。
佐倉 さくら
139≪豪徳寺駅の向こうの温故知新≫
前々から言ってるけど勉強は好きじゃない。
だから、中間テストも後半だっちゅうのに身が入らない。
日本史のテストなんか、暗記したこと全部書いたら、見直しもしないでい眠ってしまう。そんで蟻さんとお話しする夢なんか見てしまう。一昨日は、試験の後、家の近所まで帰りながら、公園に寄って、ガキンチョのころから乗り慣れたブランコに腰かけて二時間。アンニュイに身を任せながら、結論も出ない考え事をもてあそんでいた。
来週残っている教科は昨日すませた。ノートやプリント見て、出そうなところを熟読てかゆっくり読んで。一回ずつ紙に書いておしまい。印象に残ったのは国語。
太宰治の『富岳百景』がメイン。漢字の読み、代名詞の「それ」とか「あれ」が何を指すか。読書力というか本を読む馬力はあるから、一回読み直しておしまい。「富士には月見草がよく似合う」「棒状の素朴さ」「富士はなんの象徴か」「単一表現」とはなにか。プリントの答えを丸のまま頭に入れる。こういうことの答えを全部集めても、『富岳百景』は分からない。
例えば「富士」というのは「軍国主義・封建主義・当時の文学などの権威」などと書けば正解。だけど、あたしは、これでは収まらない。権威の否定だけで納得できるほど人生は甘くない。太宰だって、そう思っている。それでも掴みきれない自分のいらだちが見えてこない。でも、そんなことを書いたって減点されるだけ。だから考えない。
軍国主義への反対? 笑わせちゃいけない。太宰は、そこまで考えて書いていない。御坂峠の茶屋の母子に癒される……とんでもない。
あの茶屋の主人は戦争に行って中国大陸で戦っている。もし、戦争というものの権威に反対するなら、太宰ほどの文才があれば、別の形で書いている。失礼だけど、教えてくれた国語の先生は、こんな事実も見落としたまま授業をしたんだ。あの先生の授業からは太宰の苦悩も、そこから出てくる命がけのユーモアも分からない。
今日は録画したまま見てなかった『エヴァンゲリオン』を見た。
なんで中学生が、ここまで苦しんでエヴァに乗り込んで、正体不明の「使徒」と戦わなければならないのか? 観ても読み込んでも出てこない。碇シンジが痛々しい。
あたしの勝手な思い込みかもしれないけど、作者も「使徒」の意味よく分かってないんじゃないだろうか。分かっていないからこそ、面白いと思っちゃうんだろうな。太宰の「不安」と共通する曖昧さ、漠然さ。それが「青春なんだよ」と言われても、あたしは納得しない。
「あ、しまった!」
お母さんが台所で叫んだ。どうやら生協に注文しておいた食材に、注文のし忘れがあったみたい。
「あたし、行ってくるよ」
エヴァも最後まで観て「思わせぶり」を納得。当然消化不良。で買い物に行く。
買い物は良い。メモしてもらったものを駅前のスーパーまで買いに行って、帰ってくる。お母さんが感謝してくれる。そして晩ご飯は滞りなく食卓に並ぶ。
あたしは、こういう単純な問題と、問題解決が好き。
一度はアイドルとか俳優になる夢を見た。確かに夢なんだろうけど、実際に、そんな人生を途中まで生きていたような気がするけど、あれは長い白昼夢。でなかったらパラレルワールドのわたし。なんかの拍子で、あっちへ行って戻ってきたんだろう。もしくは、向こうに戻っていないか。言えることは、どっちも生まれ育った世田谷は豪徳寺で起こったということ。どんな生き方をしようと、生まれ育った豪徳寺から道が伸びていくんだ。あんがい不器用なのかもしれないね。
長い話に付き合ってくださってありがとう、中間テストが終わったら豪徳寺名物の招き猫を買いに行きます。
めったに行かない豪徳寺駅の向こう側、新しいファンシーショップが出来ているのを発見。そのウィンドウに可愛い招き猫があるのを発見したから。むろんレトロに作られた新製品。ひょっとしたら焼き物でさえなくてプラスチックかもしれない、高校生が、ふと買ってみようかと思うくらいの値段だしね。でも、なんちゅうか、温故知新風の感じがいいんだ。
それを机の上に置いて、新しい温故知新が湧いてきたらね、またお目にかかります。
佐倉 さくら
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みんなの感想(1件)
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