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150『青信号になるまで……』
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せやさかい
150『青信号になるまで……』ソフィア
任務なのだからウキウキなんかしてはいけない。
自分を戒めてみるのだけど、制服に身を包んでプリンセスと並んで歩くと、日本での生活に心が弾んでしまう。
そのうち慣れるからとプリンセスはおっしゃるのだけれど、狎れてはいけないと意訳して胸に収める。
あくまでもプリンセスのガーディアンなのだ。
プリンセスの身に万一のことがあれば、この身を挺してお守りしなければならない。
狙撃の気配があれば、果敢にプリンセスの前に立ち我が身を盾にして凶弾を受けなければならない。道行く車に、万一テロリストの車が混じってひき殺そうとすれば、プリンセスを突き飛ばして、わが身をテロリストの贄(にえ)としなければならない。
制服の内ポケットには家伝のニンバス。
ハリーが持っていたのと同型の魔法の杖。目立ってはいけないので万年筆に擬態してある。スマホはバッテリーの容量が大きく、いざとなればスタンガンの働きをする。ローファーの爪先には十二ミリの刃が仕込んであって、回し蹴りをすれば一閃で敵の頸動脈を切ることができる。指輪とピアスには毒針が仕込んであるが、学校の規定で装身具を身に着けることは叶わない。
他にも任務遂行のため、日本の忍者には負けないくらいの装備は身に着けているが、この数日通学して、そういうものは使わなくて済みそうな感触。
コ□ナに関する備えと緊張感は感じるが、プリンセスの身に及ぶような危機感は一ミリもない。
このままでは、先祖代々ヤマセンブルグ公国に仕えてきたガーディアンとしての技術も魔法も失ってしまうのではないか?
身も心も引き締めなければ!
「また、任務の事考えてる」
今まさに渡ろうとした横断歩道の信号が赤になって、立ち止まると同時にプリンセスが呟く。
「いえ、そんなことは……」
「ソフィアはご学友なのよ」
「ご学友? 友? いえ、友などと横並びの存在ではありません。あくまで、ソフィアはプリンセスの臣下であります、ガーディアンであります」
「Stalking horseとも云う」
「ストーキングホースですか!?」
「そう、当て馬。わたしを一人前の王位継承者にするためのね。ソフィアが楽しく日本で過ごしてくれて、勉強の上でも生活の上でも実り多い経験をしてくれたら、わたしの良い競争相手になるってお婆様の企み」
「は、はあ」
「だから、もっと気楽に、留学生として……ううん、女子高生としてやってちょうだい。遊びとか……遊びとか……遊びとか」
「遊びばっかりですか?」
「たまにはお勉強とか……も?」
「疑問形ですか」
「そうそう、いろんなことに疑問もってチャレンジしてみる。わたしもソフィアもね」
「はい、それがプリンセスのお為になるのなら」
「なるわ、なります。できたら、その『プリンセスのため』っていうのは領事館の金庫にでもしまってね」
「はい、でも……」
「デモは無し。ほら、青になったわ」
「はい、ありがとうございます。こういう話をするために、赤信号にひっかかるように歩調を合わせてくださったんですね。さすがはプリンセス!」
「あー、友だちと喋るためのテクニックよ、プリンセスじゃなく女子高生としてのたしなみ」
「はい」
「ああ、やっぱヤマセンブルグの言葉は微妙に時間がかかる。これからは日本語でいくからね」
「承知しました! です!」
信号を渡り終えると、交差点角のベーカリーショップから焼き立てパンのいい匂いが漂ってくる。
「ね、焼き立てパン買っていこうか!?」
「あ、はい、です!」
どうも、読まれているのはわたしの方のようだ。
プリンセス、恐るべし。
150『青信号になるまで……』ソフィア
任務なのだからウキウキなんかしてはいけない。
自分を戒めてみるのだけど、制服に身を包んでプリンセスと並んで歩くと、日本での生活に心が弾んでしまう。
そのうち慣れるからとプリンセスはおっしゃるのだけれど、狎れてはいけないと意訳して胸に収める。
あくまでもプリンセスのガーディアンなのだ。
プリンセスの身に万一のことがあれば、この身を挺してお守りしなければならない。
狙撃の気配があれば、果敢にプリンセスの前に立ち我が身を盾にして凶弾を受けなければならない。道行く車に、万一テロリストの車が混じってひき殺そうとすれば、プリンセスを突き飛ばして、わが身をテロリストの贄(にえ)としなければならない。
制服の内ポケットには家伝のニンバス。
ハリーが持っていたのと同型の魔法の杖。目立ってはいけないので万年筆に擬態してある。スマホはバッテリーの容量が大きく、いざとなればスタンガンの働きをする。ローファーの爪先には十二ミリの刃が仕込んであって、回し蹴りをすれば一閃で敵の頸動脈を切ることができる。指輪とピアスには毒針が仕込んであるが、学校の規定で装身具を身に着けることは叶わない。
他にも任務遂行のため、日本の忍者には負けないくらいの装備は身に着けているが、この数日通学して、そういうものは使わなくて済みそうな感触。
コ□ナに関する備えと緊張感は感じるが、プリンセスの身に及ぶような危機感は一ミリもない。
このままでは、先祖代々ヤマセンブルグ公国に仕えてきたガーディアンとしての技術も魔法も失ってしまうのではないか?
身も心も引き締めなければ!
「また、任務の事考えてる」
今まさに渡ろうとした横断歩道の信号が赤になって、立ち止まると同時にプリンセスが呟く。
「いえ、そんなことは……」
「ソフィアはご学友なのよ」
「ご学友? 友? いえ、友などと横並びの存在ではありません。あくまで、ソフィアはプリンセスの臣下であります、ガーディアンであります」
「Stalking horseとも云う」
「ストーキングホースですか!?」
「そう、当て馬。わたしを一人前の王位継承者にするためのね。ソフィアが楽しく日本で過ごしてくれて、勉強の上でも生活の上でも実り多い経験をしてくれたら、わたしの良い競争相手になるってお婆様の企み」
「は、はあ」
「だから、もっと気楽に、留学生として……ううん、女子高生としてやってちょうだい。遊びとか……遊びとか……遊びとか」
「遊びばっかりですか?」
「たまにはお勉強とか……も?」
「疑問形ですか」
「そうそう、いろんなことに疑問もってチャレンジしてみる。わたしもソフィアもね」
「はい、それがプリンセスのお為になるのなら」
「なるわ、なります。できたら、その『プリンセスのため』っていうのは領事館の金庫にでもしまってね」
「はい、でも……」
「デモは無し。ほら、青になったわ」
「はい、ありがとうございます。こういう話をするために、赤信号にひっかかるように歩調を合わせてくださったんですね。さすがはプリンセス!」
「あー、友だちと喋るためのテクニックよ、プリンセスじゃなく女子高生としてのたしなみ」
「はい」
「ああ、やっぱヤマセンブルグの言葉は微妙に時間がかかる。これからは日本語でいくからね」
「承知しました! です!」
信号を渡り終えると、交差点角のベーカリーショップから焼き立てパンのいい匂いが漂ってくる。
「ね、焼き立てパン買っていこうか!?」
「あ、はい、です!」
どうも、読まれているのはわたしの方のようだ。
プリンセス、恐るべし。
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