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154『ギョウザパーティー・1』
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154『ギョウザパーティー・1』頼子
新入部員が入るまでという約束にした。
だって、もう高校生なんだから、いつまでも中学の文芸部に通うわけにはいかないでしょ。
ソフィアは放課後は領事館で過ごしている。
彼女の仕事は、学校に居る間は警護を兼ねた留学生としての勉強。放課後は領事館で諜報員としての訓練を受けている……らしい。
らしいというのは、王女であるわたしが知ってはいけないことであるかららしい。
知っていれば、いざという時に場合によっては、わたしも責任をとらなければならないことになるからという説明。
「どんな子が入って来るかなあ」
ボールの中身をかき混ぜながら留美ちゃんに振る。
「さあ……」
「男の子だといいわね」
「はい!」
さくらは元気に返事してくれるけど、留美ちゃんは頬を染めて俯きながらボールをかき混ぜている。
留美ちゃんは今のままがいいんだ。
放課後お寺の部室に集まって好きな本を読んだり、三人でウダウダお喋りしたり、時には檀家のお婆ちゃんたちと昔話したりマッサージしてあげたり。そういう、しみじみとかホノボノした部活がいいんだ。
でも、籠り気味の部活と言うのは感心しない。感心しないなんてはっきり言ったら、きっと留美ちゃんは傷つく。だからね、そっと間接的にね、時々言ってやる。
今日はね、さくらの『葷酒山門に入るを許さず』のスカタンから出た瓢箪から駒で、お婆ちゃんたちとギョウザを作っている。
『葷酒山門に入るを許さず』のお寺でギョウザを作るのは罰当たりなことだと思うんだけど、浄土真宗と言うのは寛容な仏教で、「あ、檀家のお婆ちゃんらも好きやで!」とテイ兄ちゃんも賛成して、本堂の外陣でギョウザの具をかき混ぜている。
「葷酒山門にどーたら言うのんは、禅宗とかの古い仏教やねえ。檀家と坊主が楽しくやってたら、阿弥陀さんも喜んでくれはる」
「終戦後闇市でギョウザ屋やったら、よう売れてねえ(^^♪」
手際よくギョウザの皮を包んでいくのは、今年95歳になる勲子(いさこ)おばあちゃん。
フルネームは浜田勲子さんと言うんだけど、檀家の皆さんからは『イサネエ』とか『イサちゃん』と呼ばれている。「あんたらも『イサちゃん』でええよ(^▽^)/」って言うけど、田中さんのお婆ちゃんでさえ『イサネエ』なんだから、そう着やすくは呼べない。だから『勲子さん』。
「なんや、皇族のお嬢様みたいやなあ」
と、照れているけどまんざらでもないようなので、これで通してます。
「イサネエの餃子は奉天仕込みやさかいなあ」
檀家の婦人部ではボス格の田中さんが少し甘えるように勲子さんに接しているのも麗しい。
「奉天て、今の瀋陽のですか?」
留美ちゃんも顔を上げる。
「信用はあったよ、奉天言うたら満州の都やったさかいねえ」
「え?」
トンチンカンだけど、話は進む。
「ほんまの餃子は水餃子やねんよ。売れ残りの水餃子は硬なるから、二級品として蒸し焼きにして売ってたんよ。だれが発明したんか、十四師団の兵隊さんは『固くなったフランスパンをラスクにして売るようなもんだ』言うてはったけど、フランスパンなんちゃらハイカラなパンは食べたことないよって『きっと、そうですねえ!』なんてよそ行きの言葉で答えたりしてねえ」
「十四師団の兵隊さんて?」
「そら、猪口兵長に決まってるやんか! シューっとしてはって、そら男前のにいさん。『勲子ちゃんのキビキビしたところは江戸っ子みたいだねえ』言うてくれはってえ」
「ええ、ほんでイサネエは、どない答えましたんや?」
「うちは大阪生まれですけど、親は関東大震災でこっちに越してきたんです。だから、血統的には江戸っ子かもしれません」
「その話、初めて聞くわあ!」
鈴木さんのお婆ちゃんも身を乗り出してきた。
「ほんの昨日までは、半ボケで寝てはったんやけどねえ、餃子で思い出さはったんやねえ……なんや、昔のイサネエに戻らはったみたい」
田中さんのお婆ちゃんがかっぽう着の袖で涙を拭う。
「ほんまに、文芸部のみんなには感謝やねえ、こんな年寄りの相手してもろて、イサネエも元気になって」
「いや、あたしらがしたいことに、お婆ちゃんら巻き込んでるだけやしい(n*´ω`*n)」
さくらが照れる。さくらも一年前に比べると柔らかい笑顔をするようになった。
ピンポーン……
ドアホンが鳴って、テイ兄ちゃんがお手拭きで手を拭いながら玄関へ。
「頼子さーん、ご学友が来てくれはったよー」
たぶんソフィアだ、餃子焼くから、領事館に断ってからおいでよと言ってある。
そのソフィアが真理愛の制服で入ってきた時に、ちょっと驚くことが起こった。
「いやあ、ソフィアやないのおおおおおおお!」
なんと勲子さんが一大感激を発してしまった!
え? なぜ? なんで?
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