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183『詩ちゃんと大掃除』
しおりを挟むせやさかい
183『詩ちゃんと大掃除』さくら
きょうは自分の部屋の大掃除。
来週になると本堂とかの大掃除になるので、まずは自分の部屋から。
お寺の大掃除はたいへんなんです。
なんせ、敷地だけでも五百坪。本堂の内陣と外陣で百坪。とても一日では終わりません。
去年は、まずはお寺が先と思て、自分のを後回しにしたら、ヘゲヘゲでなんにもできませんでした。
まあ、その年の四月に引っ越してきたから、大掃除いうほどのこともないこともあったんやけどね。
せやさかい、今年は、まずは自分の部屋から。
わたしの部屋は玄関上がって、リビングの外の廊下をL字型に進んだどん詰まりの階段を上がった二階。
廊下を挟んで詩(ことは)ちゃんと向かい合わせの八畳間。
「「よし、やるぞ!」」
詩ちゃんと、気合いを入れて、それぞれの部屋にかかる。
たった一年と九カ月やねんけど、本棚の後ろとかベッドの下は埃だらけ(^_^;)
床のカーペットを半分まくって、本堂用の掃除機をガアアアアって感じでかけまくる。
ガアアアアア グガガガガガアアアアアア ガッガッガッガガアアアアアアア
え、え、なんか音がおかしい(;゜Д゜)
「ゴミが溜まってるんだよ」
詩ちゃんが廊下まで出てきて忠告してくれる。
「えと……(掃除機の開け方が分からへん)」
「あ、こうやるんだよ」
バッチンていうんやろか、トランクの金具みたいなんをバッチンと開けて、グニっと回してカパッと開ける。むろん開けたのは詩ちゃん。
「「うっわあああ!」」
ゴミ袋がパンパン。
「このまま取り出したら、埃だらけになっちゃうよ(^_^;)」
「窓、あけよか」
詩ちゃんの提案で、越してきた時に一回開けただけの窓を開ける。
うちの部屋は、あたしが越してくるまでは、ずっと物置になってて、あたしが使う分だけ片づけただけやから、窓を半分隠すようにして、屏風みたいなもんが突っ込んである。それをどけて、どっこいしょ!
グァラリ!
「うっわああ!」
開けてビックリ。
窓の外は、お寺の裏通りになってて、四メートルの生活道路を挟んでお隣りさん。
ほら、去年火事が起こった、あのお家。
お隣りとは、町会の班が違うので日常的なお付き合いはない。
お隣りに行くには、階段を下りて、L字の廊下を通って玄関に出て、本堂と釣鐘堂の前を通って山門を出て、お寺の外周を半分回ったとこ。
ちょっと遠い感じやったんやけど、こうやって窓を開けると、ちょっとジャンプしたらお隣りの玄関先。
ちょっと変な感じ。
「去年の火事、大事になってたら、ここから燃え移ってるね……」
詩ちゃんが怖いことを言う。
「さ、ゴミ袋」
「本堂やったね」
「あ、この部屋にもあるよ」
「ほんま?」
「うん……」
詩ちゃんはデリカシーのある子ぉで、さすがに元物置とは言わへん。
「こっちのクローゼットにね……」
これも思いやり。ただの納戸やねんけど、クローゼットと優しく言うてくれる。
「ええと、たしか……こっちに」
「あ、これ?」
「あ、そうそう」
その時、ちょっと無精して、手前の段ボール箱をどけへんかったんで、バランスを崩した段ボール箱がドサドサっと落ちてきた。
「あっちゃあ」
オッサンみたいな声あげて、片づけようと思ったら、箱が崩れて中身が出てきてしもた(^_^;)。
「あ、これ、お祖父ちゃんのだ」
中身はノートやら原稿用紙やらがびっしりと詰まってた。
チラリと見ると、原稿みたい。
「お祖父ちゃん、昔は小説家になりたかったとか言ってたから……」
「すごい、みんな手書きやんか!」
ビッシリ入ってる原稿、あんまり多いんで読んでみよういう気にはなれへん。とりあえず、ビックリ。
その中に、厳重に封印されて巻いた麻ひもの結び目も蝋で固めてあるという特別そうなのが目に入る。
「え、うそお!?」
袋に筆書きしてあるタイトルを見てビックリした。
「『鬼滅の刃』!?」
「ちょっと、違うみたい……」
詩ちゃんと落ち着いて読み直すと……タイトルは……
「『滅鬼の刃』!?」
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