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238『目にはさやかに見えねども』
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せやさかい
238『目にはさやかに見えねども』頼子
ソフィーは優秀なガードだ。
来日一年で完ぺきに日本語をマスターしたし、散策部という私の我がままで作った部活にも付き合ってくれているのに、片手間にやっている剣道でも三段の腕前になった。
何度か危ない目にも遭ったけど、その都度ソフィーの活躍で切り抜けてきている。
そんなマイディアガード・ソフィーの活躍をご披露したいんだけど、警備上の問題があるので、時効になったら本にしようと思ってます。
きっとAMAZONのトップのランキングになるに違いないと思うわ。
化粧っ気のない子なんだけど、その気になって磨けば、わたしより光ると思う。
「ヨリコが優位に立てているのは、王位継承者という一点だけです、精進しなさい!」
物事に公平なお祖母ちゃんは言う。
その通りなんだろうけど、わたしは自分が王位継承者であることをアドバンテージだとは思っていない。
だけど言わない。
そんなソフィーに勝った!
昨日の朝のことよ。
いつもの散策というか散歩に出て、例の神社の前に来た時。
「あ……」
「なにか?」
わたしが立ち止まったので、ソフィーは周囲を警戒する。
ジョン・スミスみたいな公的ガードならサングラスしてるんだけど、ソフィーはご学友という立場でもあるのでサングラスはしない。
薄く微笑んだまま、周囲にガンを飛ばす。
ガンを飛ばしても、けしてキョロキョロはしない。
視野の端っこで探って、怪しいとなって、初めてガン見する。
ほんの二秒ほどなんだけど、異変に気付かないので、視線をわたしに戻す。
「ね、気づかない?」
「はい?」
「蝉の声がしないのよ」
「ハ……そう言えば!?」
「ふふふ、気づかなかったのね?」
「ふ、不覚でした(;'∀')」
「仕方ないわよ、蝉の声なんて、単なる環境音。脅威にはならないから」
「はい、しかし……」
「ジョン・スミスが言ってた『ガードは全てのものに注意を払っているわけではありません。脅威、あるいは脅威の兆候には敏感ですが、無害な環境音は、ほとんど意識から外しています』って」
「はい……確かに、鳥の声などには敏感です。鳥は、人が近くにいると鳴きませんが、虫は人が居ても居なくても好きに鳴いていますから、自然と外していたのかもしれません。殿下はどうして……」
「うん、蝉は夏のシンボルなのよ。セミの声がしなくなってトンボが飛び始めると秋の始まり」
「そ、そうなのですか(^_^;)、毎朝、天気予報、気温、湿度のチェックはしているのですが、数値的には相変わらず温帯モンスーン真っ盛りの数値を現しています」
「ふふん」
「なんでしょうか殿下?」
「こんな和歌があるのよ……」
ソフィーは真剣な目になって、間合いを詰めてきた。なんか怖いぐらいなんだけど、涼し気に続ける。
「秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ 驚かれぬる (藤原敏行) 」
「え、秋は絹……絹はシルク……さやかは、クラスで出席番号13番の坂下さんのファーストネームで……」
「あ、ごめん(^_^;)」
ソフィーは古典は苦手なんだ。
「えとね……目に見えるほどには分からないけど、吹く風の音に、なんとなく秋の気配を感じてビックリしたよ……てな意味なのよ」
「それは、忍者が詠んだ和歌なのですか!?」
「い、いや、藤原のなんとかさん、ただの貴族さんよ」
「なんと……ただの貴族でも、忍者並の感覚を持っているのですね!」
「アハハ……」
「恐るべし、日本人……ソフィーは精進いたします、殿下!」
領事館に戻ると、さくらからメール。
―― 先週からセミの声が弱くなって、そろそろかと思ったら、トンボがいっぱい。夏もおしまいですね! ――
これを見たソフィーが、また傷ついた。
「で、殿下ならともかく、さくらに負けるなんて……!」
いやはや……。
そして、今日から二学期。
久々に通学路を学校に向かっていると、ソフィーが警告を発した。
「ウンコ!」
「!?」
珍しいことに犬の〇ンコが落ちていて、危うく踏みそうになったのを注意してくれた。
でも、微妙にタイミングが遅くてタタラを踏む。
まあ、すぐに手を取って助けてくれたんだけどね。
微妙に遅れたのは、ひょっとして意趣返し?
アハハと笑い合って、二学期の始まり始り……
238『目にはさやかに見えねども』頼子
ソフィーは優秀なガードだ。
来日一年で完ぺきに日本語をマスターしたし、散策部という私の我がままで作った部活にも付き合ってくれているのに、片手間にやっている剣道でも三段の腕前になった。
何度か危ない目にも遭ったけど、その都度ソフィーの活躍で切り抜けてきている。
そんなマイディアガード・ソフィーの活躍をご披露したいんだけど、警備上の問題があるので、時効になったら本にしようと思ってます。
きっとAMAZONのトップのランキングになるに違いないと思うわ。
化粧っ気のない子なんだけど、その気になって磨けば、わたしより光ると思う。
「ヨリコが優位に立てているのは、王位継承者という一点だけです、精進しなさい!」
物事に公平なお祖母ちゃんは言う。
その通りなんだろうけど、わたしは自分が王位継承者であることをアドバンテージだとは思っていない。
だけど言わない。
そんなソフィーに勝った!
昨日の朝のことよ。
いつもの散策というか散歩に出て、例の神社の前に来た時。
「あ……」
「なにか?」
わたしが立ち止まったので、ソフィーは周囲を警戒する。
ジョン・スミスみたいな公的ガードならサングラスしてるんだけど、ソフィーはご学友という立場でもあるのでサングラスはしない。
薄く微笑んだまま、周囲にガンを飛ばす。
ガンを飛ばしても、けしてキョロキョロはしない。
視野の端っこで探って、怪しいとなって、初めてガン見する。
ほんの二秒ほどなんだけど、異変に気付かないので、視線をわたしに戻す。
「ね、気づかない?」
「はい?」
「蝉の声がしないのよ」
「ハ……そう言えば!?」
「ふふふ、気づかなかったのね?」
「ふ、不覚でした(;'∀')」
「仕方ないわよ、蝉の声なんて、単なる環境音。脅威にはならないから」
「はい、しかし……」
「ジョン・スミスが言ってた『ガードは全てのものに注意を払っているわけではありません。脅威、あるいは脅威の兆候には敏感ですが、無害な環境音は、ほとんど意識から外しています』って」
「はい……確かに、鳥の声などには敏感です。鳥は、人が近くにいると鳴きませんが、虫は人が居ても居なくても好きに鳴いていますから、自然と外していたのかもしれません。殿下はどうして……」
「うん、蝉は夏のシンボルなのよ。セミの声がしなくなってトンボが飛び始めると秋の始まり」
「そ、そうなのですか(^_^;)、毎朝、天気予報、気温、湿度のチェックはしているのですが、数値的には相変わらず温帯モンスーン真っ盛りの数値を現しています」
「ふふん」
「なんでしょうか殿下?」
「こんな和歌があるのよ……」
ソフィーは真剣な目になって、間合いを詰めてきた。なんか怖いぐらいなんだけど、涼し気に続ける。
「秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ 驚かれぬる (藤原敏行) 」
「え、秋は絹……絹はシルク……さやかは、クラスで出席番号13番の坂下さんのファーストネームで……」
「あ、ごめん(^_^;)」
ソフィーは古典は苦手なんだ。
「えとね……目に見えるほどには分からないけど、吹く風の音に、なんとなく秋の気配を感じてビックリしたよ……てな意味なのよ」
「それは、忍者が詠んだ和歌なのですか!?」
「い、いや、藤原のなんとかさん、ただの貴族さんよ」
「なんと……ただの貴族でも、忍者並の感覚を持っているのですね!」
「アハハ……」
「恐るべし、日本人……ソフィーは精進いたします、殿下!」
領事館に戻ると、さくらからメール。
―― 先週からセミの声が弱くなって、そろそろかと思ったら、トンボがいっぱい。夏もおしまいですね! ――
これを見たソフィーが、また傷ついた。
「で、殿下ならともかく、さくらに負けるなんて……!」
いやはや……。
そして、今日から二学期。
久々に通学路を学校に向かっていると、ソフィーが警告を発した。
「ウンコ!」
「!?」
珍しいことに犬の〇ンコが落ちていて、危うく踏みそうになったのを注意してくれた。
でも、微妙にタイミングが遅くてタタラを踏む。
まあ、すぐに手を取って助けてくれたんだけどね。
微妙に遅れたのは、ひょっとして意趣返し?
アハハと笑い合って、二学期の始まり始り……
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