せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
251 / 432

251『銀之助からの手紙』

しおりを挟む
せやさかい

251『銀之助からの手紙』さくら      




 酒井先輩、榊原先輩、申し訳ありません。

 父の仕事の都合で突然転校することになってしまいました。

 きちんとご挨拶しなくてはいけなかったのですが、その暇もありませんでした。

 せめて高校生なら、一人で大阪に残ることもできたのかもしれませんが、まだ小学生の妹を沖縄で鍵っ子にするのも憚られ、中学二年では親に付いて行かざるを得ませんでした。

 四五年は沖縄からは出られないと思います。僕は、文学関係の勉強をして、将来は、その方向の進路に進みたいと思っていますので、大学は大阪か京都と決めています。まあ、それも父の仕事と家の事情次第ということになるでしょうか。

 二年に満たない部活、それも今年に入ってからはコ□ナのために十分な活動ができなくて残念でしたが、楽しく有意義な部活でした。

 夕陽丘先輩とは入れ違いでしたが、運よく部活でご一緒させていただいて、文学への造詣の深さだけではなく、美しい好奇心に大いに触発されました。お会いになったら、よろしくお伝えください。

                             夏目銀之助


 那覇郵便局の消印が押してある手紙は、きちんと万年筆で書かれてた。

「ふん、大人ぶって……」

 留美ちゃんは口をとがらせてるけど、寂しそうで、残念そうで、何回も手紙を読み返した。

「お礼言われるほどの部活はしてあげられへんかったね」

「仕方ないわよ、コ□ナだったんだから」

「せやね……」

 うちも留美ちゃんも口にはせえへんけど、銀之助の家も片親の家庭やったみたい。

 妹がおったのも知らんかった。

「きっと、家の事とか、かなり銀ちゃんがやってたんだろうね……」

 わが身と重ね合わせてため息をつく留美ちゃん。

「しかし、同じ学校なんだから、スマホなくても、せめて電話ぐらいしてくれば良かったのに」

 固定電話で先輩とはいえ女子の家に電話するのは敷居が高かったと思う……けど、留美ちゃんも分かってて言うてるさかいね。

 さて、頼子先輩にも伝えならあかんやろなあ……と思てたら、その頼子さんから電話がかかってきた(^_^;)。

『もしもし、ちょっと調べてみたんだけどね、防衛施設庁の辺野古基地担当の偉いポジションに夏目って人が今月付で任命されてる。たぶん、夏目君のお父さん。コ□ナも収まって、新内閣になって、そっち方面は大変みたいだよ……ま、夏目君が大変だったってことの説明にしかならないんだけどね。まあ、理解してあげよう』

「はい、分かってます、大丈夫ですよ、うちも留美ちゃんも」

『そっか、そだよね。ね、コ□ナも下火になってきたし、また、なにか楽しいこと企画しようよ!』

「はい、そうですね。言うても、スグには思い浮かばへんけど、心がけときます」

『うん。あっと、留美ちゃん居たら替わってくれないかなあ』

「ああ、ええですよ。留美ちゃん、頼子先輩」

「あ、わたし?」

「はい」

 スマホを渡すと、ちょっと緊張の留美ちゃん。

 でも、頼子さんがいろいろ喋ってくれてるうちに、目に見えて元気になっていく。

 まだ、高校二年生やけど、頼子さんの気配りの力はなかなかや。

 頼子さんにはプレッシャーかもしれへんけど、ええ王女様になると思う。

 電話の邪魔したらあかんので、本堂の縁側に出る。

 朝のうち残ってた雨も上がって、堺の空に日差しが戻ってきた。

 クチュン!

 Tシャツ一枚では、ちょっと涼しすぎでした。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

孤児が皇后陛下と呼ばれるまで

香月みまり
ファンタジー
母を亡くして天涯孤独となり、王都へ向かう苓。 目的のために王都へ向かう孤児の青年、周と陸 3人の出会いは世界を巻き込む波乱の序章だった。 「後宮の棘」のスピンオフですが、読んだことのない方でも楽しんでいただけるように書かせていただいております。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

親愛なる後輩くん

さとう涼
恋愛
「神崎部長は、僕と結城さんがつき合っているのを知りながら彼女に手を出したんですよ」 雨宮一紗(33歳)。離婚して3年。 同じ会社に勤める元夫・神崎敦朗と復縁したくて、ある日食事に誘ったら、神崎から恋人がいると知らされる。相手は20代の部下・結城史奈だという。 さらに神崎のもうひとりの部下である蓮見閑《しずか》から、彼女(結城)を神崎に略奪されたと聞かされてしまい、大きなショックを受ける……。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

処理中です...