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320『古紙回収の朝』
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せやさかい
320『古紙回収の朝』さくら
ミーンミンミン ミイ……ミーンミンミン ミイ
二週に一回の古紙回収、留美ちゃんと二人で古新聞と段ボールを蝉の声かまびすしい中、回収場所に持っていく。
今日はテイ兄ちゃんの当番やねんけど、「すまん、寺の用事で、ちょっと出るさかい!」言うて、ついさっき原チャで出て行きよった。
回収場所は、うちのお寺の角。
うちの角やから、めっちゃ近い印象かもしれへんけど、けっこうある。
廊下の隅にまとめてある古新聞と段ボールを玄関に持っていくのに10メートル、玄関から山門まで25メートル、山門から角まで15メートル、合計50メートル!
曇り空やから、まだええねんけどね、これが日ぃ照っててたら、この50メートルは、ちょっときつい。
新聞はサンケイと朝日。なんや両極端の新聞やねんけど、これはお寺の事情。
意外かもしれへんけど、お寺は、あんがい左翼が多い。
うちはやってへんけど『安倍政治を許さない!』いう習字の見本みたいな標語を貼ってるお寺もけっこうある。過去帳とかの日付は西暦が多いしね。檀家さんもお年寄りが多くて、年寄りの半分以上は左っぽい。
むろん、そうでない人も居てるし、せやから、バランスとるために朝日とサンケイ。
坊主というのは、法事とか月々の檀家周りで法話、まあ、仏さんに絡めた話をせんとあかんのです。世間話もあるしね。それで、檀家さんやら世間にあわせた話がでけんとあかんのです。
せやさかいに、朝日とサンケイ。
やっぱりねえ……
古新聞を置きながら留美ちゃん。
「え、なにがやっぱり?」
「新聞の一面、みんな安倍さんのことだよ」
「あ、ああ……」
安倍さんが暗殺されて一週間、どこの新聞も一面は安倍さん関連。
「きっと時代の境目にいるんだよ、わたしたち」
「せやねえ……」
思わず、ふたりで古新聞の山に手を合わせてしまいました。
気配を感じて振り返ると、ビックリ。
「「頼子さん!?」」
「おはよう」
「「おはようございます」」
頼子さんの後ろには見覚えのある青色ナンバーがバックで境内に入って行く。
運転席で片手振ってるのはソフィー。
「きのう、現場に献花してきたんだけどね。きちんとお参りしたくて、芝の増上寺って阿弥陀様でしょ。如来寺もご本尊阿弥陀様だし、思い立って来ちゃった」
たしかに、増上寺は浄土宗、うちは浄土真宗。開祖の法然さんと親鸞さんは師弟の間柄。
「お花を供えたいんですけど」
ソフィーから花束を受けとる。花屋さんで売ってる仏花とちごて、領事館の庭で見たことのある花。
頼子さん、自分で摘んできたんやねえ。
ドロロロ……
花瓶を持って本堂の階段を上がると、山門に入って来る原チャの音。
「あ、頼子さ~ん!」
テイ兄ちゃんが、花束とケーキの箱をぶら下げて走って来よる。
わが従兄ながら、ちょっとキショイ。武士の情け、思てても言わへんけどね。
せやけど、腹立つ。
「ちょ、お寺の用事て、これやったん!?」
「まあ、いいじゃないの、さくら」
留美ちゃんは人格者です。
手回しのええ従兄は、写真たてに入った安倍さんの写真も用意して、用意周到。
「さっき、お電話したばかりなのに、ありがとうございます!」
頼子さんも感激で、まあ良しとしとこう。
テイ兄ちゃんが五分ほどお経をあげてるうちにお焼香。
気が付いた詩(ことは)ちゃんもやってきて、ささやかやけど、きちんとした法要になった。
「で、こっちはついでなんだけどね」
頼子さんが出したタブレットには、この夏休みに行く三年ぶりのヤマセンブルグ旅行の日程が出てた。
そして、頼子さんと詩ちゃんが互いに触発されて、なんと、詩ちゃんもいっしょにヤマセンブルグに行くことになった!
テイ兄ちゃんも行きたそうな顔してたけど、却下されたのは言うまでもありません(^_^;)。
ミーンミンミン ミイ……ミーンミンミン ミイ……
蝉の声が、いっそうかまびすしい如来寺の朝でした……。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
320『古紙回収の朝』さくら
ミーンミンミン ミイ……ミーンミンミン ミイ
二週に一回の古紙回収、留美ちゃんと二人で古新聞と段ボールを蝉の声かまびすしい中、回収場所に持っていく。
今日はテイ兄ちゃんの当番やねんけど、「すまん、寺の用事で、ちょっと出るさかい!」言うて、ついさっき原チャで出て行きよった。
回収場所は、うちのお寺の角。
うちの角やから、めっちゃ近い印象かもしれへんけど、けっこうある。
廊下の隅にまとめてある古新聞と段ボールを玄関に持っていくのに10メートル、玄関から山門まで25メートル、山門から角まで15メートル、合計50メートル!
曇り空やから、まだええねんけどね、これが日ぃ照っててたら、この50メートルは、ちょっときつい。
新聞はサンケイと朝日。なんや両極端の新聞やねんけど、これはお寺の事情。
意外かもしれへんけど、お寺は、あんがい左翼が多い。
うちはやってへんけど『安倍政治を許さない!』いう習字の見本みたいな標語を貼ってるお寺もけっこうある。過去帳とかの日付は西暦が多いしね。檀家さんもお年寄りが多くて、年寄りの半分以上は左っぽい。
むろん、そうでない人も居てるし、せやから、バランスとるために朝日とサンケイ。
坊主というのは、法事とか月々の檀家周りで法話、まあ、仏さんに絡めた話をせんとあかんのです。世間話もあるしね。それで、檀家さんやら世間にあわせた話がでけんとあかんのです。
せやさかいに、朝日とサンケイ。
やっぱりねえ……
古新聞を置きながら留美ちゃん。
「え、なにがやっぱり?」
「新聞の一面、みんな安倍さんのことだよ」
「あ、ああ……」
安倍さんが暗殺されて一週間、どこの新聞も一面は安倍さん関連。
「きっと時代の境目にいるんだよ、わたしたち」
「せやねえ……」
思わず、ふたりで古新聞の山に手を合わせてしまいました。
気配を感じて振り返ると、ビックリ。
「「頼子さん!?」」
「おはよう」
「「おはようございます」」
頼子さんの後ろには見覚えのある青色ナンバーがバックで境内に入って行く。
運転席で片手振ってるのはソフィー。
「きのう、現場に献花してきたんだけどね。きちんとお参りしたくて、芝の増上寺って阿弥陀様でしょ。如来寺もご本尊阿弥陀様だし、思い立って来ちゃった」
たしかに、増上寺は浄土宗、うちは浄土真宗。開祖の法然さんと親鸞さんは師弟の間柄。
「お花を供えたいんですけど」
ソフィーから花束を受けとる。花屋さんで売ってる仏花とちごて、領事館の庭で見たことのある花。
頼子さん、自分で摘んできたんやねえ。
ドロロロ……
花瓶を持って本堂の階段を上がると、山門に入って来る原チャの音。
「あ、頼子さ~ん!」
テイ兄ちゃんが、花束とケーキの箱をぶら下げて走って来よる。
わが従兄ながら、ちょっとキショイ。武士の情け、思てても言わへんけどね。
せやけど、腹立つ。
「ちょ、お寺の用事て、これやったん!?」
「まあ、いいじゃないの、さくら」
留美ちゃんは人格者です。
手回しのええ従兄は、写真たてに入った安倍さんの写真も用意して、用意周到。
「さっき、お電話したばかりなのに、ありがとうございます!」
頼子さんも感激で、まあ良しとしとこう。
テイ兄ちゃんが五分ほどお経をあげてるうちにお焼香。
気が付いた詩(ことは)ちゃんもやってきて、ささやかやけど、きちんとした法要になった。
「で、こっちはついでなんだけどね」
頼子さんが出したタブレットには、この夏休みに行く三年ぶりのヤマセンブルグ旅行の日程が出てた。
そして、頼子さんと詩ちゃんが互いに触発されて、なんと、詩ちゃんもいっしょにヤマセンブルグに行くことになった!
テイ兄ちゃんも行きたそうな顔してたけど、却下されたのは言うまでもありません(^_^;)。
ミーンミンミン ミイ……ミーンミンミン ミイ……
蝉の声が、いっそうかまびすしい如来寺の朝でした……。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
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