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407『バンシーとリャナンシー』
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せやさかい
407『バンシーとリャナンシー』ソフィー
愛用のホンダで宮殿を目指している。
ついさっきまで、王室病院で詩(ことは)さんを見舞っていた。
「……あの子の枕もとに何かいるみたいなんです」
詩さんのお母さんが、そっと教えてくれた。
ハッとして、詩さんの枕もとに目を向けると、バンシーとリャナンシーのシルエットが見えた。
バンシーは人の死を予告する妖精、リャナンシーは愛を囁く妖精。
二人とも道路標識の妖精のシルエットで、まだ本性を現していない。
霊感の無い人には見えない。勘の鋭い人には気配が、魔法使いには気配を消していても分かってしまう。
そして、わたしは王女のガードであると同時に王室魔法使。
「カーテンが揺れて、日差しが揺れたんでしょう……ほら」
「あ、ほんと、レースの影がそう見えたんだ。ごめんなさい、変なこと言って(^_^;)」
軽い暗示をかけてごまかした。二人の妖精も気づいていない様子だ。
なにも無ければ、お見舞いで済まそうと思ったが、そうはいかなくなった。
その足で病室を出て王宮を目指した。
王宮も王室病院もヤマセン湖の畔に立っていて、厳密に言うとヤマセン湖とその周囲は王宮の敷地。
今は、大半を国立公園に指定されている。通行や立ち入り制限が王室領と国立公園のそれと似ているので、そういうことにしてある。
公用車以外の自動車の乗り入れは、一部を除いて禁止されている。
わたしが乗っているホンダは660CCのアクティー、つまり軽トラックだ。
ミッドシップで安定性は抜群、リッター18キロの燃費で、なによりも小回りがきいて可愛い。
ボスのジョン・スミスはケッテンクラートというキャタピラ式のバイクを使っていたが、ナチスドイツの軽車両。
本国任務になって、ボスはシュビムワーゲンを勧めたが、王宮に二台もナチの車両があるのは問題だ。
トントン
ノックすると「お入りなさい」と陛下のお声。
「失礼します」
「来ると思ったわ」
「陛下も?」
これだけで通じた。
陛下もご存知なのだ、詩さんの枕もとにバンシーとリャナンシーが来ているのを。
「事は急を要します」
「そうね、バンシーが居たんじゃ放ってはおけない……それもこれも、わたしが……」
「陛下のせいではありません、詩さんを病院に搬送するときに、魔法で信号を青にしてしまいました。その魔法の痕が呼びこんでしまったんだと思います」
「そうなの、でも思い詰めないでね。そのお蔭で初期治療がうまくいったんだし。コトハ自身もそういう感覚が鋭いようだし……鋭くさせてしまったのはわたしかもしれない……」
「陛下」
「あ、ごめんなさい。用件は、あれかしら?」
「はい、国王と国家の一大事にしか使ってはいけないものですが」
「いいわよ、十分、国王と国家の一大事です」
そうおっしゃると、陛下は「よっこらしょ」と腰をお上げになる。
「陛下、今回は王女殿下にお願いしようと思います」
「え、でもヨリコは初めてよ、レクチャーもしていないし」
コンコン
「お入りなさい」
「失礼します」
入ってきたのは、メイド長にして女王秘書であるサリバンさんと付き従うメイド。メイドは王家の紋章の入った車付きの箱を押している。
ガチャガチャ……箱の中で音がする。
「クィーンズアーマー!?」
思わず口走ってしまった。
「そうよ、デーモンズホールに入るには、これくらいの武装が必要でしょう」
「バトルになるとは限りませんし、バトルにはしません」
「あらそう……」
「殿下には扉を開けていただくだけです、魔法石はわたしが一人で取りに行きます」
「でもね……」
「ありがとう、ソフィー」
サリバンさんにお礼を言われて、わたしと王女殿下の冒険が決まってしまった。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
407『バンシーとリャナンシー』ソフィー
愛用のホンダで宮殿を目指している。
ついさっきまで、王室病院で詩(ことは)さんを見舞っていた。
「……あの子の枕もとに何かいるみたいなんです」
詩さんのお母さんが、そっと教えてくれた。
ハッとして、詩さんの枕もとに目を向けると、バンシーとリャナンシーのシルエットが見えた。
バンシーは人の死を予告する妖精、リャナンシーは愛を囁く妖精。
二人とも道路標識の妖精のシルエットで、まだ本性を現していない。
霊感の無い人には見えない。勘の鋭い人には気配が、魔法使いには気配を消していても分かってしまう。
そして、わたしは王女のガードであると同時に王室魔法使。
「カーテンが揺れて、日差しが揺れたんでしょう……ほら」
「あ、ほんと、レースの影がそう見えたんだ。ごめんなさい、変なこと言って(^_^;)」
軽い暗示をかけてごまかした。二人の妖精も気づいていない様子だ。
なにも無ければ、お見舞いで済まそうと思ったが、そうはいかなくなった。
その足で病室を出て王宮を目指した。
王宮も王室病院もヤマセン湖の畔に立っていて、厳密に言うとヤマセン湖とその周囲は王宮の敷地。
今は、大半を国立公園に指定されている。通行や立ち入り制限が王室領と国立公園のそれと似ているので、そういうことにしてある。
公用車以外の自動車の乗り入れは、一部を除いて禁止されている。
わたしが乗っているホンダは660CCのアクティー、つまり軽トラックだ。
ミッドシップで安定性は抜群、リッター18キロの燃費で、なによりも小回りがきいて可愛い。
ボスのジョン・スミスはケッテンクラートというキャタピラ式のバイクを使っていたが、ナチスドイツの軽車両。
本国任務になって、ボスはシュビムワーゲンを勧めたが、王宮に二台もナチの車両があるのは問題だ。
トントン
ノックすると「お入りなさい」と陛下のお声。
「失礼します」
「来ると思ったわ」
「陛下も?」
これだけで通じた。
陛下もご存知なのだ、詩さんの枕もとにバンシーとリャナンシーが来ているのを。
「事は急を要します」
「そうね、バンシーが居たんじゃ放ってはおけない……それもこれも、わたしが……」
「陛下のせいではありません、詩さんを病院に搬送するときに、魔法で信号を青にしてしまいました。その魔法の痕が呼びこんでしまったんだと思います」
「そうなの、でも思い詰めないでね。そのお蔭で初期治療がうまくいったんだし。コトハ自身もそういう感覚が鋭いようだし……鋭くさせてしまったのはわたしかもしれない……」
「陛下」
「あ、ごめんなさい。用件は、あれかしら?」
「はい、国王と国家の一大事にしか使ってはいけないものですが」
「いいわよ、十分、国王と国家の一大事です」
そうおっしゃると、陛下は「よっこらしょ」と腰をお上げになる。
「陛下、今回は王女殿下にお願いしようと思います」
「え、でもヨリコは初めてよ、レクチャーもしていないし」
コンコン
「お入りなさい」
「失礼します」
入ってきたのは、メイド長にして女王秘書であるサリバンさんと付き従うメイド。メイドは王家の紋章の入った車付きの箱を押している。
ガチャガチャ……箱の中で音がする。
「クィーンズアーマー!?」
思わず口走ってしまった。
「そうよ、デーモンズホールに入るには、これくらいの武装が必要でしょう」
「バトルになるとは限りませんし、バトルにはしません」
「あらそう……」
「殿下には扉を開けていただくだけです、魔法石はわたしが一人で取りに行きます」
「でもね……」
「ありがとう、ソフィー」
サリバンさんにお礼を言われて、わたしと王女殿下の冒険が決まってしまった。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
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