せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

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422『毎朝テレビ』

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せやさかい

422『毎朝テレビ』留美   





 生まれついてのコミュ障はだいぶマシになった。


 普通に学校に通えてるし、クラスメートとも普通に喋ることができる。

 ときどき来られる檀家の方々との応対でも「留美ちゃんがいちばんええなあ」とテイ兄さんに言ってもらえるようになった。むろん人あたりの良さとか元気さでは、さくらに敵わない。

 でも、お寺の応対って、法事や月参りのこと、時どきお葬式や報恩講などのお寺の行事やお付き合いの話。

 きちんと内容をお聞きして、メモを取って住職のおじさんや副住職のテイ兄さんにお伝えすること。あらかじめ分かっていることなら、それに沿ってご返事をしておくこと。連絡係り、大げさに言うと秘書的な感じ。

 それに、お寺の人間として対応の型というのがあって、それを身に付けてしまえば、さほど難しくはない。

 メインはもちろん坊守さんのおばさんと隠居されたお爺ちゃん。

 でも、この春にヤマセンブルグに留学中の詩(ことは)さんが大けがをして、その看病のため二か月近くお寺を留守にされ、その間実質おばさんの代わりを務めたことが大きかった。

 おばさんは、地域のコミュニティーや、ボランティアの仕事も引き受けて「そっちの方に力を注げるようになったわ」と喜んでくださっている。

 コミュ障のわたしがお寺や人の役に立ってると思うと、中学入学時までは考えられないくらい充実して自信がついた。



 でも、今日は無理!



 無理!って拒絶の言葉は使いたくないんだけど、やっぱり無理!

「だから、わたしたちが付いてきたんじゃない」「しっかりしろ!」

 メグリンとソニーが脇を固める。

 177センチのメグリン(高校に入って2センチ伸びたらしい)と、母国に帰ったら現役軍人のソニーに付いて来てもらうと、なんかVIP的な感じ。

 この二人が居なかったら毎朝テレビの正面玄関なんかには踏み込めない。

「本日、『たこやきテレビ』に出演を依頼された榊原留美のガードだ。本人は、あそこに控えている。ディレクターを呼んでもらいたい」

「は、はい、榊原留美さまですね。少々お待ちください」

 受付のオネエサンが笑顔のまま緊張している。

 ナリは女子高生だけど、現役軍人の押し出しに圧倒されている。メグリンの視線の方向に目をやると、女子高生戦士が悪をやっつけるアニメの等身大ポップが立っている。

「ちょっと、似てるかも……」

 ポップはデコボコの三人組で、ボレロ風の上着的なところが似てる。一人は外人風の三白眼、一人は高身長、一人は眼鏡のボブ。それが、そろって軍用拳銃を持ってポーズを決めている。

 慌てて眼鏡をはずす。

 受付のもう一人のおねえさんが「あ!」っという顔をする。

 やっぱり面が割れている。

 今日は、例の自転車ヘルメット啓発ポスターに関する出演。

 あのポスターが人気で、警察に問い合わせが殺到し、ネットでは背景の景色と一緒に写っている女性警官の瀬川さんの装備から所轄署を割り出した人も居て、一昨日はとうとう学校まで特定されてしまった。

『これは、もう露出した方が身を護れますよ』

 毎朝テレビは、テイ兄さんという搦手から攻めてきて、今日の出演となった。

 眼鏡を取ったのが薮蛇で、ロビーの視線が集中して来て昔のコミュ障に戻りそう!

 その時、ロビーにいる人たちの視線が微妙にズレた。

 視界の端で捉えると、女性警官の立ち姿。

「あ、瀬川さん!」

 ピシッと敬礼を決めると、わたしの傍に寄ってきた。

「榊原さん、申し訳ない。こんなに目立ってしまって(-_-;)」

「あ、いえ、瀬川さんは?」

「お仕事よ、うちにも一応要請が来てね。いちおう署長命令でね。ほんとうにごめんなさいね(-_-;)」

 ものすごく申し訳なさそうな瀬川さんに申し訳なくて、思わず空元気を発してしまう。

「あ、いえ、大丈夫です! わたしも、一度はテレビ出てみたかったですし!」

「いやあ、それは良かったぁ!」

 声に振り返ると、見覚えのあるディレクターが揉み手して近づいてくるところだった。

 

 
☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)
  

 

 
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