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421『王室名誉衛士ボビー』
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せやさかい
421『王室名誉衛士ボビー』詩(ことは)
宮殿で暮らしはじめて、ほとんど時計を見なくなった。
宮殿には女王陛下を頂点として、王女のリッチ(頼子さん)、ガードのソフィー、それに、それぞれの部署や係りを担当する人たちが、分単位、秒単位の正確さで生活したり働いたりしている。
5時半には、宮廷庭師のチャーリーさんが猫車(一輪車)を押しながら庭園の花や草木を見回る。
6時には制服姿の衛士、これは当番制で日によって人は違うんだけど、どの衛士さんも同じ時間、同じリズムで同じ経路を通って巡回していく。窓を少し開けて耳を澄ますと、厨房や宮殿のあちこちで朝の準備をする声や物音がかすかに聞こえてきて、いとおかし。
7時には、宮殿の親時計が時報の鐘を鳴らして本格的に宮殿の一日が始まる。
そして、そこから始まる一日は、日本の鉄道並みの正確さで進行していって、そう言う正確さの中に身を置いていると、本当に時計を見なくなる。
実家もお寺だったので、宮殿ほどでは無いけどルーチンがあって、そういうルーチンの中で暮らしているのは心地いい。
サクサクサク……サクサクサク……
音で陛下と秘書のイザベラさんだと分かるんだけど、時間がルーチンじゃないし、ちょっと急ぎ足。
『なに急いでるんだ、マリアは?』
ナンシーが陛下を呼び捨てにしながら窓に張り付く。
『ああ、詰所の犬よ……たった今、くたばったみたいよ……』
バンは興味なさそうに、板書をノートに写すふりを続ける。
『バン、おまえ仮にもバンシーだろ、チラ見ぐらいして涙の一つも流してあげたら』
『バンシーは人専門なの、犬がくたばるのには関わらないわ。それに、今は授業中よ』
二人とも聖真理愛の制服姿で、日本の女子高生ごっこをするのが気に入ってる。
「詰所に犬がいるの?」
『居るよ、ボビー。躾がいいからむやみに吠えないし、決められた場所以外ではウンコもしないし立ち入らないし』
『十五年前にね、メグって女衛士が拾ってきて、ズーズーしく居ついたのよ』
「それに陛下が?」
『マリアは、そういう子なんだ。バン、おまえも行っていっしょに泣いてやりなよ』
『ナンシーこそ、愛情の妖精でしょ、あんたこそ行ってあげなさいよ』
「二人で行ってあげたら?」
『わたしたちに指図!?』
『なにを考えているのかしら、この東洋人は!?』
「指図なんかじゃないわよ。わたしの部屋に居るんだったら、優しい妖精でいてちょうだい!」
『え、追い出すつもり!?』
『鬼よ、この東洋人!』
「なんだってぇ……」
『わ、わかったわかった(;'∀')』
『行けばいいんでしょ行けば(;'∀')』
窓を開けると二人は白いオーブになって詰所の方に飛んで行った。
足元を見ると、ちょうどリッチも詰所の方に向かうところ。
コンコン
仮にも王女殿下、高いところから声をかけるのは憚られて、ちょっと強めにガラスをたたく。
「あ、コットン!」
気づいてくれて、わたしも電動車いすをトップスピードにして詰所に駆けつける。
ソフィーも駆けつけていて、ボビーは特製のベッドに寝かされて息を引き取っていた。
枕もとにはバンとナンシーも来ていて、さっきの憎まれ口はどこへやら、肩を震わせて泣いていた。
魔法使いのソフィーには分かってるはずだけど、気づかないふりをしてくれている。
ボビーは正式に飼われていた犬ではないので、法律的な処遇では衛生局が引き取ってゴミとあまり変わらない扱いで火葬にされるんだけど、陛下のお言葉で王室墓地に葬られる。
その墓誌には『王室名誉衛士ボビー』と記される。
わたしは、チェストの上に『南無阿弥陀仏』のお念仏を置いてお線香をあげた。
『ちょっと!』『なによ、この悪魔の呪文は!』
バンとナンシーに説明するのは、ちょっと骨が折れたけどね……。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行)
声優の人たち 花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎
さくらの周辺の人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
421『王室名誉衛士ボビー』詩(ことは)
宮殿で暮らしはじめて、ほとんど時計を見なくなった。
宮殿には女王陛下を頂点として、王女のリッチ(頼子さん)、ガードのソフィー、それに、それぞれの部署や係りを担当する人たちが、分単位、秒単位の正確さで生活したり働いたりしている。
5時半には、宮廷庭師のチャーリーさんが猫車(一輪車)を押しながら庭園の花や草木を見回る。
6時には制服姿の衛士、これは当番制で日によって人は違うんだけど、どの衛士さんも同じ時間、同じリズムで同じ経路を通って巡回していく。窓を少し開けて耳を澄ますと、厨房や宮殿のあちこちで朝の準備をする声や物音がかすかに聞こえてきて、いとおかし。
7時には、宮殿の親時計が時報の鐘を鳴らして本格的に宮殿の一日が始まる。
そして、そこから始まる一日は、日本の鉄道並みの正確さで進行していって、そう言う正確さの中に身を置いていると、本当に時計を見なくなる。
実家もお寺だったので、宮殿ほどでは無いけどルーチンがあって、そういうルーチンの中で暮らしているのは心地いい。
サクサクサク……サクサクサク……
音で陛下と秘書のイザベラさんだと分かるんだけど、時間がルーチンじゃないし、ちょっと急ぎ足。
『なに急いでるんだ、マリアは?』
ナンシーが陛下を呼び捨てにしながら窓に張り付く。
『ああ、詰所の犬よ……たった今、くたばったみたいよ……』
バンは興味なさそうに、板書をノートに写すふりを続ける。
『バン、おまえ仮にもバンシーだろ、チラ見ぐらいして涙の一つも流してあげたら』
『バンシーは人専門なの、犬がくたばるのには関わらないわ。それに、今は授業中よ』
二人とも聖真理愛の制服姿で、日本の女子高生ごっこをするのが気に入ってる。
「詰所に犬がいるの?」
『居るよ、ボビー。躾がいいからむやみに吠えないし、決められた場所以外ではウンコもしないし立ち入らないし』
『十五年前にね、メグって女衛士が拾ってきて、ズーズーしく居ついたのよ』
「それに陛下が?」
『マリアは、そういう子なんだ。バン、おまえも行っていっしょに泣いてやりなよ』
『ナンシーこそ、愛情の妖精でしょ、あんたこそ行ってあげなさいよ』
「二人で行ってあげたら?」
『わたしたちに指図!?』
『なにを考えているのかしら、この東洋人は!?』
「指図なんかじゃないわよ。わたしの部屋に居るんだったら、優しい妖精でいてちょうだい!」
『え、追い出すつもり!?』
『鬼よ、この東洋人!』
「なんだってぇ……」
『わ、わかったわかった(;'∀')』
『行けばいいんでしょ行けば(;'∀')』
窓を開けると二人は白いオーブになって詰所の方に飛んで行った。
足元を見ると、ちょうどリッチも詰所の方に向かうところ。
コンコン
仮にも王女殿下、高いところから声をかけるのは憚られて、ちょっと強めにガラスをたたく。
「あ、コットン!」
気づいてくれて、わたしも電動車いすをトップスピードにして詰所に駆けつける。
ソフィーも駆けつけていて、ボビーは特製のベッドに寝かされて息を引き取っていた。
枕もとにはバンとナンシーも来ていて、さっきの憎まれ口はどこへやら、肩を震わせて泣いていた。
魔法使いのソフィーには分かってるはずだけど、気づかないふりをしてくれている。
ボビーは正式に飼われていた犬ではないので、法律的な処遇では衛生局が引き取ってゴミとあまり変わらない扱いで火葬にされるんだけど、陛下のお言葉で王室墓地に葬られる。
その墓誌には『王室名誉衛士ボビー』と記される。
わたしは、チェストの上に『南無阿弥陀仏』のお念仏を置いてお線香をあげた。
『ちょっと!』『なによ、この悪魔の呪文は!』
バンとナンシーに説明するのは、ちょっと骨が折れたけどね……。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
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百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
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声優の人たち 花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎
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