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089『御神楽采女はあくびをかみ殺した』

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

089『御神楽采女はあくびをかみ殺した』   





「あら、本職だと思ってた?」


 鏡に映った御神楽さんが巫女服の襟を直しながら意外の声。

 結婚式場の仕事に来ると、たいてい同じ神主さん、同じ巫女さんなので、巫女の御神楽さんも本職だと思っていた。

 ボスの直美さんは仕事にきっちりした人で、開式の一時間前には式場の公民館に来て待機する。むろん、助手のわたしも写真館での機材の積み込みをやって、ホンダZでいっしょに来る。

 式場に隣接するスタジオで機材や照明のチェックが終わったら控室で待機。

 控室は他のスタッフとも共用で、御神楽さんとは一緒になることが多い。

「だって、名札……」

 スタッフは館長以下全員が胸に小さな名札を付けている、わたしも直美さんも『須之内写真館』と名前の入った名札を付けている。名札を付けないのは神主さんと巫女さんぐらいのもの。

「神主や巫女が名札って、ちょっと変でしょ?」

「あぁ、それもそうですね(^_^;)」

「神主さんは本物よ。宮之森や大浜の神社の神主さんと契約してるの。そういう神社は常勤の巫女なんて置いてないしね」

「え、そうだったんですか?」

「うん、でも、神主さんもたいてい兼職してるから、いつでも来られるわけじゃないからね。巫女はバイトだけど公民館と年季契約、身分は非常勤職員なんだよ。ちょっと特別職的だから、時給は400円」

 さっき目についた給与明細をヒラヒラさせる御神楽さん。

「そうなんですねぇ、お名前も御神楽さんだから、てっきり神社関係の人だと思ってました」

「そうねえ……御神楽采女、いかにもって感じよね」

「采女(うねめ)っておっしゃるんですか?」

「あはは、ま、親が適当につけた名前。まあ、不足は無いけどねぇ……フワァ~~~( ´⚰︎` ) 」

 御神楽さんは今日何度目かのノビをしてあくびを噛み殺した。

 けしてノドチンコが見えてしまうようなことはないけど、いつも端正に座っている御神楽さんなので、ちょっと意外だ。

「いかんいかん、また襟元がぁ……」

 ササッと襟元を直すと、袴の結び目のところをポンと叩いて式場に向かった。



☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
辻本 たみ子            1年5組 副委員長
高峰 秀夫             1年5組 委員長
吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
藤田 勲              1年5組の担任
先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)
須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
​御神楽采女             結婚式場の巫女
時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
  
 
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