やくもあやかし物語・2

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
20 / 84

020『デラシネの全力攻撃』

しおりを挟む
やくもあやかし物語 2

020『デラシネの全力攻撃』 



 散れ!


 ネルが両手を広げて叫んだ!

 わたしは左! ネルは右!

 ハイジは、いっしゅん迷って後ろに逃げた! 真ん中に居たので、どっちへ行っていいか分からず逃げるしかなかったんだろう。仕方がない(-_-;)。

「フフフ……目くらましのつもりか」

 ドラゴンの背に跨ったデラシネは不敵に笑うと、ドラゴンと共に空に飛んだ。

「森は、わたしの庭のようなもの、チョロチョロ走り回っても居所は知れている……そこだ!」

 ビシ!!

 すぐ後ろ、木々の枝や葉っぱを貫いて電撃みたいなのが地面に突き刺さる。

 一年前のわたしだったら、悲鳴も上げられずにうずくまるか気絶してしまうかだったと思う。

 でも、いろんな妖たちと戦ったり、時には共通の敵から身を守ったりしてきたから、取りあえずは逃げられる。

 ビシ!

 離れたところに衝撃、ネルの方を攻撃したんだ……でも、走る気配はしているから、命中はしていない。

 来る……ビシ!!

 直前にゾワってくるんで、しゅんかんで横っ跳び。左の頬に痛みが走る。

 破片が当たったんだ、拭った拳に血が付いた。

 ビシ!

 今度はネル。でも、気配は同じテンポで走ってる。まずは大丈夫。

「ちょこまかと三月うさぎのように……まあいい、いつまでももつはずもない、ゆっくり退治してやるからね……そこだ!」

 ビビッシ!!

 さっきの倍ほどのが落ちてきた! 直前に速度を上げて無事だったけど、髪の焦げる臭いがする。

 ちょっとヤバイ、続けられたらもたないかもしれない。

 ビシビシ!

 二連発……それもネルじゃなくてわたしに!?

 そうか、わたしの方がチョロいと踏んだんだ! くそ、集中攻撃されたらもたないかもしれない(;'∀')!

 ビ ビシビシ!

 次のは遅れたし、微妙にためらいが……?

『ネルよ、ネルが直前に後ろを走ってドラゴンを惑わせたのよ』

 御息所が首だけ出して後ろを指さしている。

 そうか、フェイントをカマシてくれたんだ。

 ビビ ビシビシ!

 次もズレた。今度はいっしゅんだけネルの後すがたが見えた。

 今度はわたしが助けなきゃ!

 走りながらネルの居所を探る。

 ん?

 ネル以外にもチラホラと気配がする。木の上……岩の陰……窪地のヘリ……倒木の洞……そうか、森の妖精や精霊たちが、あちこちで様子を伺ってるんだ。

 面白がってるのや迷惑がってるのや怯えているのや、なかには感情の読めないのも居る。

 ビビ ビシビシ!!

 ネルの気配が近づいたので、こちらからネルの後ろに走る。案の定、狙いは大きく外れて、離れたところで火のついた葉っぱや枝が舞い上がった。

――あたしはいい、体力的にはヤクモの方が弱い、庇っていてはもたないぞ!――

 あ、それもそうだ。

 鬼の手のお蔭で瞬発力は鬼強いけど、これを何時間もやられたら、ちょっと自信ないかも。

「そうか、ヤクモうさぎの方がねらい目か……」

 グゥゥゥーーーン

 くそ、高度を落として真後ろに貼り付かれた(;゚Д゚)!

 ビシビシビシ!!!

 っく!

 かろうじて避けたけど、右足と左手に痛みが走る。

 トリャーーー!!

 ネルが飛び蹴りを食らわせて、当たらぬまでもドラゴンの進路を狂わせる。

 でも、次はダメかもしれない(;'∀')。

 ビシビシビシ!!! ビシビシビシ!!!

 あ、もうダメだ……

『ヤクモ、あの岩壁をめざして』

 御息所が小さな声で言う。

「右、左、どっち?」

 それまでも、二度ほど岩壁の前まで走って曲がっている。

 岩壁は単なる障害物、飛び越えるには高すぎる。曲がるしかないんだ。

『直前でストップ、ぶつかる覚悟で』

「え、あ、うん」

 理解したわけじゃないけど、このままじゃもたないからね。

 ズザザザザ……ドシン!

 なんとか急ブレーキ! やっぱり岩にぶつかって、死にはしなかったけど、そのまま仰向けに倒れてしまう。

 倒れながら見えた。

 ドラゴンは岩にぶつかって粉みじん……じゃなくて、岩に吸い込まれるようにして消えてしまい、デラシネ一人、岩に顔をこすり付けながら急上昇し、悔しそうにブンブン手を振って飛んで行ってしまった。

 プギャァァァァ……ドシン!

 そして、なぜかハイジが遅れて岩にぶつかって落ちてきた。

 
☆彡主な登場人物 
やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学)
あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...