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027『御息所のおりいった話・2』
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やくもあやかし物語 2
027『御息所のおりいった話・2』
じつは……
と、少し顔を上げて本題に入る御息所。
顔を上げると小じわもほうれい線も目立たなくなる。
「去年、二丁目断層がやってきたことがあったでしょ?」
「え、あ、わたしに化けて来た」
「はい、ほんとうはまっくろくろすけなんですけどね」
二丁目断層というのは、家と学校の間の坂道。一丁目の家から三丁目の学校に行く間に坂道があって、昔々に、断層がズレて坂道になった。
その断層じしんが妖で、ふだんはまっくろくろすけ。
その二丁目断層が、わたしに化けて会いに来たことがある(やくもあやかし物語・143『お客は二丁目断層』)。
「チカコの話とかしに来たんだよね」
そうだ、あれから色んなところに行って、みんな収まるところに収まって、気が付いたらうちの妖たちはわたしの部屋から卒業していったんだよ。チカコももとの親子(ちかこ)、すなわち和宮内親王になって家茂さんと再会してうちを出て行ったんだ。
「あれは、全部やくも、あなたの力があったからできたことなんですよ」
「え、そうなの?」
いろいろ走り回っていろんな目に遭ったけど、じぶんがやったって自覚はない。なんというか、災難に巻き込まれた感じだったしね。
「やくもの胸には大きなタマが宿っているんです、ソウルとも言います」
ソウル……デラシネもそんなこと言ってたなぁ。
「ところが、そのタマを実際の力にするためのタマノオが未熟」
「み、みじゅくぅ(;'∀')」
「ところが、やくもの家族は、タマは弱くて小さいんだけども、タマノオは十分以上に持っているんです。まあ、言ってみればデバイスやバッテリーが無いのにケーブルだけがいっぱいあるみたいな」
ああ、ケーブルって、本体がダメになっても捨てられないよね。
「方や、やくものタマにはタマノオが無い。それで、密かに家族のタマノオをやくもの胸に移植したのです」
「え、ええ!?」
「静かに、ルームメイトが起きてしまいます」
「あ、あ、ごめん(^△^;)」
「だからこそ、チカコもみんなも有るべきところに収まったんですよ」
「そ、そうなんだ……」
「そこで、こんどはデラシネを助けてやって欲しいのです」
「デラシネを……」
「デラシネは森の王の血筋なのです」
「森の王?」
森の王といえばティターニア、いやオーベロン?
「本来ならばあの子の家系が王の血筋なのですが、さまざまな経緯があって、本来は傍系であったティターニアの家系が王位を継いでいるのです」
「それって……」
日本での思い出がよみがえる。
いろんなイザコザに巻き込まれたけど、たとえ妖でも、やっつけたりぶちのめしたりというのは、ちょっとコリゴリなんだよ。
「ぶちのめす的なことでは解決しないと思いますよ」
「え、じゃあ、どうすれば……」
「軽々とは言えません……というか、分かりません」
「そんなぁ」
「ちょっと失礼します……」
「ムグ!?」
御息所の手が胸の中に入ってきた!
痛みとかは無いんだけども、ゲームのバグみたい気持ちが悪い。
「よいしょっと……よし、学校関係者にデラシネのことは見えないようにしておきましたから。やくもの周囲一キロ以内では気づかれません。必要なら森の住人からも見えなくできますが、トラブルのもとになりそう……まあ、慣れれば、やくもが自分で操作してくださいな」
「ええ、わたし任せなのぉ!?」
「大事なことは、デラシネに根を下ろす場所を見つけてやることでしょうねえ……あ、そろそろルームメイトがお目覚めになりそう」
え?
チラッとネルのベッドに目をやると、ネルはまだ静かに寝息を立てている。
ハッと思って向きなおったら、もう御息所の姿は無かったよ。
☆彡主な登場人物
やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン 教頭先生
カーナボン卿 校長先生
酒井 詩 コトハ 聴講生
同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち マッコイ(言語学)
あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン
027『御息所のおりいった話・2』
じつは……
と、少し顔を上げて本題に入る御息所。
顔を上げると小じわもほうれい線も目立たなくなる。
「去年、二丁目断層がやってきたことがあったでしょ?」
「え、あ、わたしに化けて来た」
「はい、ほんとうはまっくろくろすけなんですけどね」
二丁目断層というのは、家と学校の間の坂道。一丁目の家から三丁目の学校に行く間に坂道があって、昔々に、断層がズレて坂道になった。
その断層じしんが妖で、ふだんはまっくろくろすけ。
その二丁目断層が、わたしに化けて会いに来たことがある(やくもあやかし物語・143『お客は二丁目断層』)。
「チカコの話とかしに来たんだよね」
そうだ、あれから色んなところに行って、みんな収まるところに収まって、気が付いたらうちの妖たちはわたしの部屋から卒業していったんだよ。チカコももとの親子(ちかこ)、すなわち和宮内親王になって家茂さんと再会してうちを出て行ったんだ。
「あれは、全部やくも、あなたの力があったからできたことなんですよ」
「え、そうなの?」
いろいろ走り回っていろんな目に遭ったけど、じぶんがやったって自覚はない。なんというか、災難に巻き込まれた感じだったしね。
「やくもの胸には大きなタマが宿っているんです、ソウルとも言います」
ソウル……デラシネもそんなこと言ってたなぁ。
「ところが、そのタマを実際の力にするためのタマノオが未熟」
「み、みじゅくぅ(;'∀')」
「ところが、やくもの家族は、タマは弱くて小さいんだけども、タマノオは十分以上に持っているんです。まあ、言ってみればデバイスやバッテリーが無いのにケーブルだけがいっぱいあるみたいな」
ああ、ケーブルって、本体がダメになっても捨てられないよね。
「方や、やくものタマにはタマノオが無い。それで、密かに家族のタマノオをやくもの胸に移植したのです」
「え、ええ!?」
「静かに、ルームメイトが起きてしまいます」
「あ、あ、ごめん(^△^;)」
「だからこそ、チカコもみんなも有るべきところに収まったんですよ」
「そ、そうなんだ……」
「そこで、こんどはデラシネを助けてやって欲しいのです」
「デラシネを……」
「デラシネは森の王の血筋なのです」
「森の王?」
森の王といえばティターニア、いやオーベロン?
「本来ならばあの子の家系が王の血筋なのですが、さまざまな経緯があって、本来は傍系であったティターニアの家系が王位を継いでいるのです」
「それって……」
日本での思い出がよみがえる。
いろんなイザコザに巻き込まれたけど、たとえ妖でも、やっつけたりぶちのめしたりというのは、ちょっとコリゴリなんだよ。
「ぶちのめす的なことでは解決しないと思いますよ」
「え、じゃあ、どうすれば……」
「軽々とは言えません……というか、分かりません」
「そんなぁ」
「ちょっと失礼します……」
「ムグ!?」
御息所の手が胸の中に入ってきた!
痛みとかは無いんだけども、ゲームのバグみたい気持ちが悪い。
「よいしょっと……よし、学校関係者にデラシネのことは見えないようにしておきましたから。やくもの周囲一キロ以内では気づかれません。必要なら森の住人からも見えなくできますが、トラブルのもとになりそう……まあ、慣れれば、やくもが自分で操作してくださいな」
「ええ、わたし任せなのぉ!?」
「大事なことは、デラシネに根を下ろす場所を見つけてやることでしょうねえ……あ、そろそろルームメイトがお目覚めになりそう」
え?
チラッとネルのベッドに目をやると、ネルはまだ静かに寝息を立てている。
ハッと思って向きなおったら、もう御息所の姿は無かったよ。
☆彡主な登場人物
やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン 教頭先生
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酒井 詩 コトハ 聴講生
同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
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