やくもあやかし物語・2

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
30 / 84

030『勅使三方・1』

しおりを挟む
やくもあやかし物語 2

030『勅使三方・1』 




 たった半日の滞在だし、聖真理愛学院の修学旅行は300人の大所帯だし、まとまった行事は合同の昼食会だけ。

 300人はABCの三班に分かれて、宮殿の見学、湖の遊覧、森と周辺の散策の三チームに分かれてる。

 聴講生の詩(ことは)さん、衛兵士官のソフィー先生、それと畏れ多いことにヨリコ王女さまは日本語と英語の両方がいけるので、通訳としてそれぞれの班についている。わたしも頼まれたんだけど、もともとコミュ障だし、こっちの生徒だし、未成年だし、詩さんのサポートということで勘弁してもらったよ(^_^;)。

 いまは、校舎前の芝生広場で全体の説明、班分けは、あらかじめ言われていて、それぞれの班の前に並んで紹介があって、付き添いの先生が諸注意の真っ最中で、取りあえずは通訳、わたしは助手だけど、ヒマ。

 わたしたちはB班。

 ええと、いろいろ面白いこととかあったんだけどね、例の三方さんのことについて触れとくね。

『三方って、雛人形の三人官女の真ん中よ』

 胸ポケットに場所を移して御息所が説明してくれる。

「さんにんかんじょ?」

『ほら、お内裏様の下の段に三人並んでる』

 ああ、お祖母ちゃんがいっかい飾って見せてくれたっけ。

『あの真ん中の三方を捧げてる』

「あ、あの鏡餅の台みたいなの……」

 思い出した、お雛さんの段飾りの中で、ちょっと怖い印象だったよ。

 なんでだろ?

『あいつ、雛壇の中で、いちばんエライのよ』

「え、お内裏さまよりも?」

『うん、あいつ、男雛も女雛人もオムツの頃から世話してるから、もう怖いものなしって女。今風に言うとメイド長ね』

「オツボネサマなんだ(^_^;) オールドミスなんだろうね」

『旦那持ちよ』

「そうなの?」

『うん、眉毛剃ってるし鉄漿(おはぐろ)してるし』

 ああ……そうだった、眉毛無いし少し開いた口の中真っ黒だったし、だから怖かったんだ。

「あ、でもでも、あの三方さん眉毛もあったし、歯も黒くなかったよ」

『時代だからでしょ、あんな眉無しの鉄漿で外国に行ったら、みんな気絶しちゃうわよ』

 御息所と話してるうちに、諸注意とか終わって、いよいよ出発。

 うちのB班は森と周辺の散策から。

 うちの生徒たちは、所どころでプラカード持って人間案内板やったり、昼食会の準備に駆り出されたり。一応スマホに通訳アプリ入れてるから、最低の会話は出来るようになってる。

「あれ、森の住人たちも入り口で並んでるよ」

 見物に並んでるという感じじゃなくて、お出迎えという感じで、ティターニアさん、ドレスにティアラ。他の妖精たちも、おめかししてティターニアさんの後ろに並んでる。

 なんでだろ、森の住人は普通の人間には見えないのに。

 と、思ったら、三方さんが地上10センチくらいのとこをスーっと滑るように移動してティターニアさん達の方に行ったよ。

――パンパカパーーン♪――

 ファンファーレが鳴って、ちょっとビックリしたんだけど、それは妖精のパックが吹いたもので、人間には聞こえていないようだ。

 ティターニアさんが進み出ると、まるで王さまか皇帝陛下にするように、小さく腰をかがめてから三方さんに握手したよ!

 興味津々のわたしは、通訳助手の役割も忘れて聞き耳をたててしまったよ!



☆彡主な登場人物 

やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

処理中です...