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世紀の一戦 前編
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「サリア、もちろんまだ手に紋章はあるんだよな。」
「はいもちろん」
いつも通りに夜遅く、父親であるゲイルは家に帰ってきた。
もちろん夜なので、ヘクサはもう寝てしまっている。
そっと、ゲイルはヘクサの寝ている部屋に入る。
「本当だ。家に帰ってきて話を聞いたときは目を疑ったが、あるんだな。おれも結構いろいろな人を見てきた方だと思っていたが、まだまだ知らないことはたくさんあるようだな」
そういって、寝室から居間に戻る。
ゲイルは難しい顔をしている。
大方、人に言ってもいいのか、どうやって育てようか、あたりのことを考えているのだろう。
一応重要なことなので、使用人さんもその場にいる。
「まあ、まだスキルであると決まったわけではないので、帝王様に一応報告だけしておいて、とりあえずしゃべれるようになるくらいまで、公にせず育てませんか?」
サリアはそう言う。
ゲイルはまだ難しい顔をしていたが、まあそうだよな、とつぶやいた。
皆が思っていたよりあっさりと終わった家族会議であったが、あまりにも情報が少ないため仕方のないことである。
「明日、帝王様に謁見できれば言ってみるよ。」
帝王とは魔淵国のトップのことで、あまり血気盛んな方ではない。
ゲイルとは旧知の仲で、身分こそ違えど、頼めば謁見くらいはできるだろうと踏んでいる。
戦争などに利用される可能性も少ないと踏んでいた。
「今日は、寝るわ」
いつもの晩酌をせずに寝るゲイルを珍しい目で見つつ、サリアも寝床についた。
さすがに皆、疲れた表情をしていた。
「行ってくる、帰りが遅くなるかもしれないから」
「よろしくお願いしますね。」
明くる朝、そう言ってゲイルは家を出て行った。
あまり眠れていないのか、目の下にくまができていた。
「私も、ヘクサを起こしに行かないとね。」
今日、王様に報告したらヘクサが殺されるかもしれない。
私がどうなってもいいからヘクサだけは守る、母親としての決意はもうとっくの昔にできている。
もし、殺されるように仕向けられても、地の果てだろうが、世界の果てだろうが、どこまでも逃げてやる。
「絶対、守るからね」
優しい手つきで、でも真剣な表情でヘクサをなでる。
まだすやすやと気持ちよさそうに寝ていた。
その表情が少し笑顔になった気がした。
俺は今、とてつもなく緊張している。
帝王とは数えられないくらいにしゃべったことがあるのにもかかわらず、である。
朝、宰相に謁見の申し出をすると以外にも、午前中は時間があったようですぐに順番が回ってきた。
この緊張は、思っていたよりも順番が早かったため、まだ落ち着いていないというのもあるだろう。
あんなに眠れなかったのに、こんなに目は冴えている。
それもそのはず、俺の一言でヘクサはいなくなってしまう可能性がある。
俺の大事な一人息子をだ。
『次、ゲイル!はいれ!』
もう謁見の間の前まで来ていたようである。
豪勢な門の両端に仁王立ちしている守衛にそういわれ、身だしなみを確認し、中に入る。
頭を垂れて少しの間待っていると、足音がする。帝王だろうか。
「おお、ゲイル!顔を上げてよいぞ。そう固くなるな。私用であろう。」
「一応公式な謁見なのですが…」
そういって顔を上げた。
そこには、自分の悩みを知らない、いつものにこにこフェイスの帝王が座っていた。
「そういえばゲイル、子供が生まれたそうだな。何かあげないといけんな。どうだ、何かいるものはあるか?あ、娘はやらんぞ!」
そんなジョークを交えてきたのはいつも通りなのか、はたまた緊張を察してなのか。
ゲイルにとって世紀の一戦となる戦いが始まる。
「はいもちろん」
いつも通りに夜遅く、父親であるゲイルは家に帰ってきた。
もちろん夜なので、ヘクサはもう寝てしまっている。
そっと、ゲイルはヘクサの寝ている部屋に入る。
「本当だ。家に帰ってきて話を聞いたときは目を疑ったが、あるんだな。おれも結構いろいろな人を見てきた方だと思っていたが、まだまだ知らないことはたくさんあるようだな」
そういって、寝室から居間に戻る。
ゲイルは難しい顔をしている。
大方、人に言ってもいいのか、どうやって育てようか、あたりのことを考えているのだろう。
一応重要なことなので、使用人さんもその場にいる。
「まあ、まだスキルであると決まったわけではないので、帝王様に一応報告だけしておいて、とりあえずしゃべれるようになるくらいまで、公にせず育てませんか?」
サリアはそう言う。
ゲイルはまだ難しい顔をしていたが、まあそうだよな、とつぶやいた。
皆が思っていたよりあっさりと終わった家族会議であったが、あまりにも情報が少ないため仕方のないことである。
「明日、帝王様に謁見できれば言ってみるよ。」
帝王とは魔淵国のトップのことで、あまり血気盛んな方ではない。
ゲイルとは旧知の仲で、身分こそ違えど、頼めば謁見くらいはできるだろうと踏んでいる。
戦争などに利用される可能性も少ないと踏んでいた。
「今日は、寝るわ」
いつもの晩酌をせずに寝るゲイルを珍しい目で見つつ、サリアも寝床についた。
さすがに皆、疲れた表情をしていた。
「行ってくる、帰りが遅くなるかもしれないから」
「よろしくお願いしますね。」
明くる朝、そう言ってゲイルは家を出て行った。
あまり眠れていないのか、目の下にくまができていた。
「私も、ヘクサを起こしに行かないとね。」
今日、王様に報告したらヘクサが殺されるかもしれない。
私がどうなってもいいからヘクサだけは守る、母親としての決意はもうとっくの昔にできている。
もし、殺されるように仕向けられても、地の果てだろうが、世界の果てだろうが、どこまでも逃げてやる。
「絶対、守るからね」
優しい手つきで、でも真剣な表情でヘクサをなでる。
まだすやすやと気持ちよさそうに寝ていた。
その表情が少し笑顔になった気がした。
俺は今、とてつもなく緊張している。
帝王とは数えられないくらいにしゃべったことがあるのにもかかわらず、である。
朝、宰相に謁見の申し出をすると以外にも、午前中は時間があったようですぐに順番が回ってきた。
この緊張は、思っていたよりも順番が早かったため、まだ落ち着いていないというのもあるだろう。
あんなに眠れなかったのに、こんなに目は冴えている。
それもそのはず、俺の一言でヘクサはいなくなってしまう可能性がある。
俺の大事な一人息子をだ。
『次、ゲイル!はいれ!』
もう謁見の間の前まで来ていたようである。
豪勢な門の両端に仁王立ちしている守衛にそういわれ、身だしなみを確認し、中に入る。
頭を垂れて少しの間待っていると、足音がする。帝王だろうか。
「おお、ゲイル!顔を上げてよいぞ。そう固くなるな。私用であろう。」
「一応公式な謁見なのですが…」
そういって顔を上げた。
そこには、自分の悩みを知らない、いつものにこにこフェイスの帝王が座っていた。
「そういえばゲイル、子供が生まれたそうだな。何かあげないといけんな。どうだ、何かいるものはあるか?あ、娘はやらんぞ!」
そんなジョークを交えてきたのはいつも通りなのか、はたまた緊張を察してなのか。
ゲイルにとって世紀の一戦となる戦いが始まる。
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