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本編18

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「竜?」

 山一つあるような巨大な存在がかつてこの世界を支配していた。

 だが竜族はあまりにも大きすぎた。地上すべてのものというものを食べ尽くし、歩くだけで生物がぶつされていく。そんな存在では、子孫を増やすことができなかった。

 竜は考えた。

 この世界と共存する方法を。そして目を付けたのは、自分たちと似た知能指数を持った人間だった。魔法を使い人間に姿を変え、交尾をし、どんどんとその身体を小さくしていった。だが元々は山ほどある巨大な身体だ。小さくなるにも限界があった。

 大きな岩くらいまでは身体を小さくできたが、人間と同じ大きさになることは叶わなかった。

 しかも長い間魔法を使い続けた反動か、本来の姿を失いかけてしまった。

 そのため、この世界の竜は、生まれて間もなくは本来の姿をしているが徐々に人間になり、幼少期を人の姿で過ごした後、成人すると両方の姿を取ることができるようになったが、徐々に竜の姿を維持するのに莫大なエネルギーを費やすようになってしまった。

 寿命も縮み、今では500年生きるのがやっととなっている。

 そんな竜族の歴史が一気にソーマの頭の中へと飛び込んできた。映像とともに。

 そして、光が収まったころには今まで感じたことのない力がその身に宿ったのを感じた。

「これ……」

「それが成人した竜族の力だ。人の子とともに過ごす間には不要な知識や力で、これがあるために、狂ってしまう竜が多かったんだ。だから先人は竜族が持って当たり前の知識を、成人するまでこの岩に閉じ込め、今お前がしたように岩に触れた時に戻すという方法を編み出した」

「そう……だったんだ」

 掌を見つめる。

 仄明るく光る地面よりも強い光を放つ己の手。今までとは違う、人では持ちえない力がそこに備わっているのを感じる。これが竜族の力なのか。

「凄い……」

「ソーマはどんな魔法を持っているんだろうね。竜族はそれぞれ生まれ持った魔法が違うんだよ」

 そう言いながら父は掌を頭上高く上げ、掌から光を放つ。それは天上にぶつかると星屑のように空間内に散らばり落ちると、その空間が全く異なった物へと変わっていった。洞窟の行き止まりだというのに、明るい林の中の風景が広がっている。

 小川が流れ、鳥の声が響き渡り、苔が生えていたはずの地面には丈の短い草が生えている。今にも木陰から兎が飛び出してきそうな風景への変貌に驚くなというほうがおかしい状態だ。

「父さんこれ……」

「魔法だよ。幻影じゃない。他の場所をここに移してきたんだ。これが父さんが持っている魔法・瞬間移動だ」

「凄いよ、父さん!」

 ソーマは素直に感嘆した。
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