ツイノベ置き場

椎名サクラ

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病院嫌いの受けが攻めに囲い込まれる話

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病院嫌いの受け。

ちょっとの病気は当たり前、高熱を出しても病院に行く選択肢がない。

市販薬飲めば大丈夫と気力で乗り切ってしまう。

そんなある日、久しぶりに体が動けないほどの風邪をひいてしまう。

このまま死ぬんじゃ……とベッドでぼんやりと考えていたら、誰かが部屋に入ってくる気配。

「受け、大丈夫か?」

声をかけたのは大っ嫌いな同僚の攻め。

なんでここにいて、どうやって入ってきたんだという疑問すら湧いてこない。

「すげー熱。こりゃ病院だな」

攻めは受けの額に手を当てると冷静に判断した。

「や……、だ」

条件反射のように拒否すれば、攻めはすっと目を細めた。

「バカ言うな。このままほっといたら死ぬぞ」

「いい……びょ……い……やだ」

「病院嫌いにもほどがあるだろ。診察嫌だったら寝てろ。その間に終わらせてやるから」

いつもは飄々として厭味な正論しか言ってこない攻めがこんな優しいはずがない。

これは夢だ、絶対夢だ。

納得した受けは言われるがままに目を閉じた。

次に目を開けたとき、薄暗い空間にベンチが並べてある一角で、移動ベッドに乗せられていた。

ここが魔の巣窟、病院だと気づくのに時間がかかった。

「おっ、目が冷めたか。もうちょっと待ってろ、院内処方もらったら帰るからな」

その言葉だけで診察が全部終わっていることが知れた。

「……病院やだって言っただろ……」

文句にまったく力が入ってないと自覚しても、まだフラフラの受けの精一杯の怒りだ。

だが攻めは受けの頭を撫でてくる。

「肺炎一歩手前だったんだ、無理して喋るな。入院よりはマシだろ」

手の優しさに驚き、むっつりと黙り込む。

薬を受け取った攻めは、車の助手席に受けを乗せると、当たり前のように自宅に戻りベッドに病人を押し込んだ。

「なんで、お前んちなんだよ……」

「病人は素直に看病されろ」

「一人で平気だし……」

薬と栄養が入った点滴を打たれ症状が良くなったとはいえ、まだ起き上がることができないのに、つい強がる。

「無理するな。俺を男やもめにするつもりか」

「えっ、お前結婚てたのか??」

女子社員憧れの出世頭が密かに結婚していたなんて……だがそれと自分がどう関係あるのかがわからない。

男やもめとは寡夫のことだろう。秘密の妻が危ない状態なのだろうか。

「俺のことよりかみさんのそばにいてやれよ……」

言って、なぜか心がチクリと傷んだ。

その理由に目を背け、わずかに布団の中に潜る。

「ばーか。お前がさせるんだよ。受けが死んじまったらもう一生誰も好きになれねぇからな。男やもめと同じだろ」

「……なんだよ、それ」

胸がぎゅっと締め付けられるのを感じた。同時に顔が赤く熱くなる。

「治ったらしっかり考えてくれ。今は素直に看病されろ」

ポンポンと頭を軽く叩いてから攻めが部屋を出た。

パタンと閉まるドアの音を聞いて、受けはさらに布団に潜った。

ニヤけてる自分を隠すように。



でも素直じゃない受けは完治した日に「そんなに好きなら俺をその気にさせろよ」

なんて生意気なことを口にして、攻めの本気を病み上がりの体で受け止めちゃったり。

すっかり付き合ってるつもりでいる攻めと煮え切らない受けとの間に行き違いがあってトラブったり。

うっかり軽口で後輩に「好き」って言ってるところを攻めに見られて逆に追いすがったりと紆余曲折の末、落ち着くようになるまで1年もの月日(ただし肉体関係継続)を要するが、収まるところに収まると受けがツンデレ女王猫のような甘え方をするようになって、攻めは鼻の下を伸ばしながら甲斐甲斐しく世話をするのだった。

そして社内で流れてきた「攻めは気の強い彼女にメロメロ」の噂に「お前浮気してるのかーっ!別れる、もう別れる!!!」って勘違いしてひと悶着あって監禁されればいいと思う。



おしまい
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