テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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ユグドラシルの双子の主・和泉鏡香(第5話)・・・お尻ぺんぺんですよ(*ノωノ)

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ーーモリガン視点ーー

「お、お仕置きじゃと!?」

 わしは、なんだかいやな予感がして、和泉の顔を見上げた。

 笑顔ーじゃが、なんだか目が笑っていないような・・・。

 和泉は、わしの腰をつかまえると

「ええ、お仕置きです。お尻ぺんぺんですよ」

と、お仕置きを宣言した。そして手を振り上げる。

「お、おい、何をするか!」

 和泉の顔を覗き込むと、やはり笑顔・・・なのだが、やはり、目が笑っていないぞ(汗)。

 さらには、

「ふっ」

と、かすかな笑い声が一瞬聞こえたような・・・?それになんだか、和泉の背後に般若の面のようなものがうっすらと見えるような・・・?

「では、行きますよ!」

 口調はさっきまでとほとんど変わらないが、何だか、今までとは別な気迫みたいなものを感じるような・・・?

 和泉の手が、わしの尻めがけて振り下ろされた。

 バシイィィィィ!!

 ・・・。

 ・・・・・・!

 ・・・・・・・・・@;?X/!!

「いっっっでぇぇぇぇ!!」

 わしは、今までにないくらいの悲鳴を上げる羽目になった・・・。

ーー

「お、お、お主、わしを殺す気かーー!!」

 和泉鏡香のお尻ぺんぺんは、先ほどの髪の毛の一撃よりもはるかに痛かった・・・。1発喰らっただけで、尻が痛すぎて動く気になれない・・・(涙)

「お主、わしにとどめを刺す気じゃろう!!」

 わしは、これはたまらんとばかりに抗議の声を張り上げた。これマジで死ぬからほんと勘弁してくれ・・・。

「さすがに建物を破壊して畑に大穴開けるような子には、これくらいのお仕置きが必要ですよ」

 ひぃぃぃぃ!!

「さあ、あと2発行きますよ」

「や、やめてーーー!!」

 ・・・わしはこの日、初めて地獄というものを味わった・・・。

ーー

 その後、わしが何とか自力で動けるようになるまで回復するのに、何時間も要することになった。マジで死ぬかと思った(涙)。この和泉という女は、外見に似合わず容赦ない・・・。

 それから、わしは、和泉に連れられてコミュニティまで赴き、建物壊してごめんなさい、畑に穴をあけてごめんなさいと謝罪行脚をする羽目になった。

 もちろん、和泉に強制させられたというのが事実だが、もし断ればー

「お尻ぺんぺんですよ」

と、優しく微笑みながら(しかし、絶対に目は笑っていない)、しかも背後に般若の面のようなものを浮かび上がらせて(多分これは他の人には見えていないだろうが)喋るものだから、断るという選択肢は全くなかったのじゃ(涙)。

 この和泉という女、見かけは大変穏やかで優しそうに見えるが、やることはかなりえげつない。わしが少しでも逃げるそぶりを見せれば、すぐにわしの首根っこをつかまえて「お尻ぺんぺんですよ」と脅す・・・しかも笑顔で(しかし、目は笑っていない)。さらには、わしの首根っこをつかまえる時の速度がなぜか異様に速かったりする。

 要するに、相手に自分のやることに異議を唱える余地は与えない、自分の行動は決して曲げないという我の強さみたいなものがある・・・。

 そういえば、この女、確かチームの「双子の王」とか名乗っておったな。王ーということは・・・。
 
「お、お主、もしかしてマスターランクか!?」

 次の目的地に向かう道中、わしは気になって和泉に尋ねてみた。ちなみに、次の行き先はこの森に生息している大型の蟲の巣だそうだ。おそらく、わしのいる縄張りよりもさらに奥のエリアだろう。

「はい~、そうですよ。なんたって、双子の王ですから」

と、にっこり微笑みながら和泉は答えた。

 ・・・なんてこった。マスターランクが相手ならどうやっても勝てるわけないじゃろうが。

 わしは、がっくりとうなだれた。

 ・・・ん、待てよ。

 もう一つ気づいたことがあるので尋ねてみる。

「双子の王ということは、《ユグドラシル》とやらにはもう一人王がいるということか?」

 双子を名乗るくらいだから、多分双子の兄弟姉妹に当たる人物はおるはず。

「ええ、双子の弟がおりますよ」

 なるほど、この女と同じくらいの怪物がもう一人いるわけか(汗)。

 わしは、先ほどの戦いと・・・彼女のお仕置きを思い出した。

 ・・・もっとも、お仕置きの方が苛烈だったような気がするが・・・。

「私たちは奏多君と二人で双子の王と呼ばれておりますね」

 弟の名前は奏多というのか。

「もっとも、双子の王だからといっても、二人そろって一人前という意味ではありませんよ~」

 ふっふっふ・・・という笑い声が聞こえてきそうな笑顔(背後には般若の面が見えるような・・・)で、和泉は語る。

 ・・・美人を怒らせると怖いという話はよく聞くが、こいつはそれとは別に相当やばい(汗)。冷汗が止まらん・・・。

「あらあら、怖がらせてしまいましたね」

と言いつつ、なぜか笑顔は全く崩していないような気がするのじゃが。

 まあ、あまり深く考えないようにしよう。

 今は、和泉に協力する形で(ほぼ強制的に協力させられる羽目になったが)、森の奥の蟲を退治しなければならない。

 わしの住みかともいうべきアトリエがあるエリアは、森の西側の方で、比較的コミュニティにも近い場所だ。つまりは、比較的森の入り口付近ということになる。

 そのため、たびたびコミュニティのシヴィリアンズどもに勝手に入られてキノコを採られたりするわけだが(キノコは調合に必要な材料だ)、まあ、今回和泉がシヴィリアンズどもに事情を説明してくれたため、今後は勝手に採るということもないじゃろう。

 わしは、実は森の奥を見たことがない・・・別に怖くて入らないというわけではないぞ、決して!

 ただ、厄介な蟲どもがうじゃうじゃいるというのは、時折やつらが放つ魔力の波動によりすぐにわかる。もっとも、全力のわしの敵ではなかろうが、自分に危害を加えるのならともかく、今のところはおとなしくしているようなので、放置しているというわけじゃ。

 和泉は、今回その中でも害蟲と呼ばれるやつを倒しにここへ来たらしい。今のところ、周囲には何の被害もなさそうに見えるのだが、和泉にとってはどうしても駆除しなければならない対象のようだ。

 紅葉著しいーといっても、ここは秋の領域じゃから、年中こんなものだがー森林地帯を奥へと進む。そしてー目の前に巨大な枯れ木を見つけ、そこで和泉は止まった。わしも彼女に倣って歩みを止める。

「ここが、目的地のようです」

 和泉は静かにそう告げた。
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