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ユグドラシルの双子の主・和泉奏多(第11話)
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ーー吾妻晶視点ーー
「これで終わりだ」
奏多さんはそう言い放つと、蟲にとどめを刺すべく魔力を集中し始めた。さすがに彼の魔力は桁違いだ。これならば、まともに食らえば、例えこの巨大な蟲でもひとたまりもないだろう。
おそらく奏多さんは、屋敷や蔵、周囲の林への影響を最小気に抑える形でこいつに引導を渡してくれるはずだ。そのために、魔導書を多数配置し、相手の行動範囲を狭めたのだから。
これで、こいつともようやくおさらばできる。
さすがに、いつまでもこんなのと暮らすわけにもいかない。そもそもオレの張った結界は、いつ内部から壊されてもおかしくない状況だった。
奏多さんの全身から魔力が放たれる。その魔力の圧倒的な波動を実感し、これですべてが終わると確信した膨大な魔力が、ほとんど棒立ち状態といってもいい蟲と文字「達」を貫き、消滅させていく。これには相手の複写も間に合わないだろう。そもそも、魔導書の文字による反発力のおかげで、思うように複写もできない状態に追い込まれているはずだ。
全身を消し去ってしまえば、そもそも「核」の位置がわからずとも倒すことができる。これで完全に決まりだ。
蟲の体を構成していた文字「達」が、膨大な魔力の輝きの前にかき消されていく。すると、上部-少し右側あたりに、ひときわ黒く目立つ毛玉のようなものの姿が見て取れた。これが、やつの本体であり、「核」だった。
とはいえ、もはや関係はない。蟲の本体は、奏多さんが放った魔法の前になすすべもなく消滅させられた。
「ふう」
思わず、安堵のため息がこぼれ出た。これで、この屋敷や近くのコミュニティに影響が出ることはない。
もっとも、今回の一件で、我が家の蔵書のうち、魔導書以外の本の文字が失われてしまったということについては、読書家としては嘆くべきなのかもしれないが・・・やはりこの事件を解決してくれた奏多さんには感謝の念しかない。
「やりましたね」
オレは奏多さんの方に駆け寄ると、
「ありがとうございました、オレ一人ではもうどうすることもできませんでしたよ」
実際に、オレ一人ではせいぜい相手の動きを封じ込めておくくらいしかできなった。
「いや、それを言うなら僕の方こそ、君の結界術がなければ、こいつを今まで封じ込めておくことはできなかっただろうし、周囲への被害を未然に防いでくれていたのは何よりもありがたかった」
逆に、今度は奏多さんからお礼を言われてしまった。
「もし、こいつがここを離れて他のコミュニティに向かっていたら、まず間違いなく被害は拡大していただろうしね。君の力がそれを防いだんだ」
なんだか照れくさい限りである。
「しかし・・・それにしても魔導書の文字それ自体に反発するとは、なんか蟲の世界ってよくわからないですよね」
「そうだね」
と、同意する奏多さん。
「長いこと害蟲駆除やっているけど、僕にもいまだにわからないことだらけだ」
別に謙遜しているというわけでもないようだ。今回のケースは、彼にとってもレアケースだったということか。
「とにかく、今回の一件はこれで終わりだね。もう二度とこういうことが起きないように、一応屋敷に蟲除けの札でも貼っておくかな」
「ありがとうございます」
「おっと、その前に」
奏多さんは、蟲を倒した後も空中に浮かんだままの魔導書を操作し、そのまま地面へと降ろした。
「まずは、後片付けしないとね」
「そうですね」
魔導書のことをすっかり忘れていたが、持ってきた魔導書の回収や蔵の中の確認など、まだまだやることがある。それらを全て片付けてからこの一件は終了だ。
オレは、とりあえずさっきの魔導書を書斎に戻すため、屋敷へと向かうことにした。蔵の中については後回しとなりそうだー。
「これで終わりだ」
奏多さんはそう言い放つと、蟲にとどめを刺すべく魔力を集中し始めた。さすがに彼の魔力は桁違いだ。これならば、まともに食らえば、例えこの巨大な蟲でもひとたまりもないだろう。
おそらく奏多さんは、屋敷や蔵、周囲の林への影響を最小気に抑える形でこいつに引導を渡してくれるはずだ。そのために、魔導書を多数配置し、相手の行動範囲を狭めたのだから。
これで、こいつともようやくおさらばできる。
さすがに、いつまでもこんなのと暮らすわけにもいかない。そもそもオレの張った結界は、いつ内部から壊されてもおかしくない状況だった。
奏多さんの全身から魔力が放たれる。その魔力の圧倒的な波動を実感し、これですべてが終わると確信した膨大な魔力が、ほとんど棒立ち状態といってもいい蟲と文字「達」を貫き、消滅させていく。これには相手の複写も間に合わないだろう。そもそも、魔導書の文字による反発力のおかげで、思うように複写もできない状態に追い込まれているはずだ。
全身を消し去ってしまえば、そもそも「核」の位置がわからずとも倒すことができる。これで完全に決まりだ。
蟲の体を構成していた文字「達」が、膨大な魔力の輝きの前にかき消されていく。すると、上部-少し右側あたりに、ひときわ黒く目立つ毛玉のようなものの姿が見て取れた。これが、やつの本体であり、「核」だった。
とはいえ、もはや関係はない。蟲の本体は、奏多さんが放った魔法の前になすすべもなく消滅させられた。
「ふう」
思わず、安堵のため息がこぼれ出た。これで、この屋敷や近くのコミュニティに影響が出ることはない。
もっとも、今回の一件で、我が家の蔵書のうち、魔導書以外の本の文字が失われてしまったということについては、読書家としては嘆くべきなのかもしれないが・・・やはりこの事件を解決してくれた奏多さんには感謝の念しかない。
「やりましたね」
オレは奏多さんの方に駆け寄ると、
「ありがとうございました、オレ一人ではもうどうすることもできませんでしたよ」
実際に、オレ一人ではせいぜい相手の動きを封じ込めておくくらいしかできなった。
「いや、それを言うなら僕の方こそ、君の結界術がなければ、こいつを今まで封じ込めておくことはできなかっただろうし、周囲への被害を未然に防いでくれていたのは何よりもありがたかった」
逆に、今度は奏多さんからお礼を言われてしまった。
「もし、こいつがここを離れて他のコミュニティに向かっていたら、まず間違いなく被害は拡大していただろうしね。君の力がそれを防いだんだ」
なんだか照れくさい限りである。
「しかし・・・それにしても魔導書の文字それ自体に反発するとは、なんか蟲の世界ってよくわからないですよね」
「そうだね」
と、同意する奏多さん。
「長いこと害蟲駆除やっているけど、僕にもいまだにわからないことだらけだ」
別に謙遜しているというわけでもないようだ。今回のケースは、彼にとってもレアケースだったということか。
「とにかく、今回の一件はこれで終わりだね。もう二度とこういうことが起きないように、一応屋敷に蟲除けの札でも貼っておくかな」
「ありがとうございます」
「おっと、その前に」
奏多さんは、蟲を倒した後も空中に浮かんだままの魔導書を操作し、そのまま地面へと降ろした。
「まずは、後片付けしないとね」
「そうですね」
魔導書のことをすっかり忘れていたが、持ってきた魔導書の回収や蔵の中の確認など、まだまだやることがある。それらを全て片付けてからこの一件は終了だ。
オレは、とりあえずさっきの魔導書を書斎に戻すため、屋敷へと向かうことにした。蔵の中については後回しとなりそうだー。
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