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日向荘の皆さん

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 害蟲駆除チーム《ユグドラシル》のメンバーが生活している元旅館の「日向荘」ー。

 現在、ここでは「双子の王」である和泉奏多、和泉鏡香、清野江紀、薬師寺咲那、吾妻晶、清野早苗、そして自称「夜の領域最大の魔女」ことモリガンが暮らしている。

 基本的に、害蟲駆除の依頼がないときは、各々が自由行動となり、大抵は自身の趣味や修行に明け暮れる日々を送っていた。元旅館なので、部屋の数は多く、しかも今は旅館業としては廃業しているので、新たに客が訪れるということもない。時々、《ユグドラシル》のメンバーたちが自身の親しい間柄の人々を宿泊させたりするくらいだ。別にそれで利益を得ているというわけではない。

 露天風呂もあるし、中はかなり広々としていて、その上景色もいい。風光明媚とはまさにこのことだ。まだまだ旅館としても成り立つが、生憎「日向荘」の住人達は、ここで客商売をしようとは考えていないようだった。彼らにとって、気ままな今の暮らしの方が性に合っているからだ。

 たまに訪れるメンバーの客人相手に、女将さんのような立場で接するのが和泉鏡香である。旅館ではないので、厳密には「管理人」なのだが、訪れる者達にとっては、彼女はもはや女将さんで定着しているようなものだった。「日向荘」名物の美人女将として通っている。

 もっとも、訪れる客は人間ばかりではない。人外の存在ー蟲もやってくるのだー。

 この世には2種類の蟲がいる。害蟲と益蟲だ。どちらも読んで字のごとく、人間や生態系に対して害をなすものが害蟲で、こちらは《ユグドラシル》の駆除対象となる。それに対し、益蟲は人間や生態系にとって益となる存在だ。基本的に人間に対して有効的なものが多く、中には害蟲の亜人種型デミヒューマンタイプのように高い知性を持ち、人間と共に生活しているケースもある。

 この《ユグドラシル》を訪れる蟲は多くが益蟲だ。害蟲は、さすがに害蟲駆除チームの拠点にはほとんど寄り付かない。自分たちが狩られるのがわかっているからだ。

 もっとも、害蟲の中でも好戦的な奴はおり、たまに《ユグドラシル》に挑戦してくる場合もあるが、それらはことごとく返り討ちとなっている。たとえ亜人種型デミヒューマンタイプでも、和泉姉弟ーマスターランク2人がいるチームを相手に勝てる道理はなかった。
 
 もっとも、和泉姉弟が実際に戦うまでもなく、江紀と咲那だけで駆除されてしまうのがオチではあったが。

 そして、今回この「日向荘」に少し変わった住民が加わることになる。これが、今から始まる物語であるー。


 
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