テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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スライ蟲退治(第2話)

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 そのレシピノートに書かれていたのは、なんと・・・!

「調合に必要なキノコリスト

1.ツキヨタケ
2.ベニテングダケ
3.カエンタケ
4.ニガクリタケ
5.クサウラベニタケ
6.イッポンシメジ

 気を付けて採取しましょう♡」

 ・・・。

 レシピノートの記述内容を確認した晶は、ある「重大なこと」に気が付いた。

「おい、モリガン・・・」

「何じゃ、晶」

 モリガンは不思議そうな表情で晶を見返す。

 晶は盛大にため息をついた。そして・・・、

「オレが知っている限りでは、このリストに上がっているのは、全てやばいキノコばかりだが?」

 言うまでもなく、どれもこれも猛毒性のキノコばかりである。

「このカエンタケなんて、触れただけで炎症を起こすタイプだろ?確か」

「そうじゃな」

 モリガンは、何をいまさらといった表情でいけしゃあしゃあと答える。

「調合に使うキノコなんてそんなもんじゃろ」

「お前、調合で何作る気なんだ・・・」

 これだけ毒キノコばかり集めて暗殺用の毒物でも作る気なのか・・・。

「いや、新種のポーションを作ってみようかと・・・」

「どう調合すりゃこれでポーションになるんだ?」

 頭を抱えながら、モリガンに問いかける。ポーションは、比較的簡単に調合できる回復用アイテムで消耗品だ。しかし、原材料に毒物「だけ」を用いて作るポーションなんぞ聞いたことがない。

「あっはっはー!晶よ、昔からよく言うじゃろが。毒と薬は紙一重じゃと」

「それを言うなら、馬鹿と天才は紙一重だろうが」

 こいつに調合をやらせると、何かとんでもないことになりそうな予感がする・・・。

「まあまあ、毒薬変じて薬となるというし」

「お前にやらせると、さらに毒がバージョンアップされそうなんだがな」

 さすがに、毒キノコばかりの調合となると、さらに毒性が強まるだけのような気がする。

 それでなくとも、モリガンの調合は失敗続きであると聞いている・・・。

「第一、なんだって新種のポーションなんか作るつもりなんだ?手持ちでも十分間に合ってるだろ」

 一応、これでも害蟲駆除を専門的に行っている以上、害蟲からの攻撃で傷を負った時のために余分のポーションは常に日向荘において確保している。危険な害蟲を相手にするだけあって、ケガや病気、あるいは魔法による呪いなどは常に想定しておかなければならないのだ。

「ふっふっふ、晶よ。わしとて魔女の端くれ・・・せっかく発見したレシピを調合して試してみたくなるのは当然ではないかの」

 モリガンが得意げに胸を反らしながら笑う。

「単なる好奇心でやばいもん作られてはたまらんわ!」

 とにかく、これはやめさせよう・・・。

 晶がそう思った時、通りの向こう側から、何かが躍り出てきた。あれは・・・蟲だ。

「晶君、蟲が飛び出してきたよ!」

 早苗は叫ぶと同時に、一瞬の早業で、自身の武器である2枚の「鉄扇」を取り出した。普段はおっとりとした印象を与える早苗であったが、さすが「鉄扇士」と呼ばれるだけのことはある。戦闘状態に入る可能性がある時には素早く反応できるのが彼女の強みなのである。

「あいつらは・・・スライ蟲か」

 目の前に現れた青いアメーバ状の蟲の姿を確認し、晶も自身の武器である蟲笛を取り出し構えた。晶の二つ名は「蟲笛士」だ。この笛からは魔力の刀が出現する。

「やれやれ・・・雑魚連中が群れてきおって」

 モリガンも臨戦態勢をとる。

 唯一ミケさんだけが3人の背後でのんきに顔を洗っていた・・・つくづく役に立たないニャンコもどきである。

「まあ、軽くウォーミングアップするのにはちょうどいい相手かもしれないな」

 もともと、モリガンの調合素材採取ばかりではなく、「秋の領域」の森に出没する害蟲もいくらか退治するつもりだった。

「数は多いがなんとかなるじゃろ」

「じゃあ、頑張って退治しよう!」

 早苗が右手に持った鉄扇で顔を隠すように構える。もう、戦闘準備は整った。

「よし、駆除開始だ!」

 晶の宣言とともに、3人は無数のスライ蟲に立ち向かっていったー。
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