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モリガンの適正(第5話)

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 その後、ミケさんは無謀にも今度は囲碁でベンジャミンに勝負を挑んだ。ミケさんは、変なところで負けず嫌いだったりする。

 負けず嫌いなのはいいことなのかもしれないが、悲しいことに、彼には実力がなかった・・・。

 勝負の行方については、言うまでもなくー。

「また、おいらの勝ちだな」

「ウニャー、また負けましたニャー」

「・・・」

 本当に、ミケさんには何が向いているのだろうか・・・そもそも、酒とつまみを「召喚」する以外に、何か誇れるものが、こいつにはあるのか?

 誰であれ、何か一つくらいは取柄となるものがあるとは思うが、残念ながら晶には、ミケさんのそういう部分を見出すことはできなかった・・・。

「ニャらば、今度は五目ニャらべで・・・」

「ええい、やめんか!」

 ・・・これ以上、何の勝負をやらせても勝敗は見えているので、晶はいい加減、強制的にやめさせることにしたー。

「ミケさんよ」

「ニャンだ、晶よ」

「これだけは言っておくぞ・・・お前さんは確実に、勝負事には向いておらん!」

「ニャ、ニャンですと!!」

 ガビーンといった表情になったミケさん。ミケさんの落胆ぶりは、手に取るように分かった。漫画に例えれば、雷が落ち、周囲の背景がガラスのように砕け散って、そこにできた真っ暗い穴の中に、ミケさんが吸い込まれるというか、落ちていくような感じだった。

 要するに、コメディ漫画にありがちの「大変わかりやすい落胆ぶり」と言えよう。

 これでもし、ミケさんが周囲ともども真っ白くなっていたら、まさに燃え尽きた「明日の〇ョー」のあのコマの状態だっただろう。

「ば、馬鹿ニャ・・・晶たちニョ十数倍は生きているはずニョ吾輩が及ばニャいだニャンて・・・」

 がっくりと膝(と表現すべきか)を着き、さらには両手(前足というのが正解なのだろうが、敢えて両手と表現する)も地面に着いて、ミケさんがうなだれている。

 まあ、かなり同情できる姿ではあるが、一方で・・・。

「なんでオレらより長生きしてんのに、何をやらせてもこのざまなんだよ、ミケさん・・・」

 長生きしているからと言って、必ずしも技を磨けるわけではないということをよく物語っている。こればかりは、本人の素質の問題も・・・と思いかけたところで、よく考えてみれば、こいつが何か努力して打ち込んでいる姿というものを今まで一度も見たことがない。いつも見ていても、ただ酒を飲んで寝ているだけである・・・。

 典型的な酔っ払い駄目親父の姿しか、見たことはなかった。

 要するに、こいつの場合、素質以前に単なる「怠け者」ということなのではなかろうか・・・。

「ミケさんよ、酒ばかり飲んでないで、もう少し勤勉に生きようぜ」

「ニャ・・・」

 さすがに、ミケさんも自分で思うところがあるのか、晶の指摘に対して特に反論することもなく、力なく返事を返しただけであったー。
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