テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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その頃の和泉姉弟(鏡香視点)

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 今、目が覚めたー。

 奏多君の膝の上ということで、つい安心しきって眠ってしまったのだろう。ここ最近はかなり無理をしていたので、知らぬうちに体が休息を欲していたのだということに気が付く。

 目が覚めて、すぐそばに彼がいる。愛おしい、私の双子の弟にして、恋人。

 そう、私たちは、お互いを想い合っているのだー双子でありながら。

 肉親に抱く恋愛感情など、社会的には受容されない関係であることもわかっている。だが、この想いだけは偽ることはできないー。

 普段、私たちはチームメンバーや他の人の前では普通の双子の姉弟として振舞っている。ゆえに、こうして恋人として振舞うことができるのは、私たち二人きりの時だけだ。決して誰にも打ち明けることのできない、私だけの秘密。決して壊されたくない、私たちだけの憩いの時間ー。

 そして、私の弱さを認識することになる、今にも壊れてしまいそうで、脆弱さを伴った、まるで薄氷のような空間ー。

 今、その時間と空間を二人で共有しているのだー。

 薄氷のような脆さと透明さは、私の中の弱さをも透過させてしまう。ゆえに、奏多君には私の弱い部分も見られてしまっているのだ。奏多君も、それを知りながら私を受け入れてくれている。

 これほど、私の想い人にふさわしい人もいないだろう。

ーー

「やあ、起きたんだね、姉さん」

 まだまどろみの中にいる私に、笑顔を向けてくれる奏多君。誰よりも大好きな、私の双子の弟ー。

「んん・・・」

 どちらからというわけでもなく、私たちはお互いの唇を重ね合わせた。そこから、奏多君の暖かさを感じることができた。

 誰も見ていないから、誰も侵せないから、だからこそ私たちは、お互いをさらけ出すこともできる。

 双子ではなく、恋人として、過ごすことができるのだ。

 私たちは、チーム《ユグドラシル》を率いる「双子の主」だ。だが、それは決して「二人そろってようやく一人前」ということを意味するものではない。少なくとも、私自身は周りに一人のマスターとして見えるようにふるまってきたし、それは奏多君も同様のはずだ。

 だが、今は一人ではなく、二人だ。お互いの想いを委ね、認め合う、ただの二人の男女なのだ。

 だからこそ、自分の弱さもまた見えてくる。彼と共にいるために、逆に私の脆さが隠し切れないほどあらわになってしまうのだ。

 でも、それが、とても心地よかったりもする。

 ああ、この人になら、自分の強さも弱さも、全て見せることができるーその安心感。

 これに勝る安らぎはないー。

ーー

「姉さん、いつの日か二人きりで旅行しようよ」

 いつだったか、彼が切り出した旅行の話。これが新婚さんなら、新婚旅行ということになる。もっとも、私たちは、既に想いの中では結ばれている。たとえ、社会的に認められずとも、誰にも分らなくとも。私たちは、双子ではなく「夫婦」なのだー。

 いつ、それが実現するのか、私には見当もつかないけれど・・・でも。

「そうだね。奏多君、いつか行きたいね」

 彼と共に旅をしたい。二人きりで、世界のいろんな場所を見てみたい。いつの日か、叶うならばー。

 他の人たちから見れば、ささやかで当たり前のことなのかもしれないけれど、私たちにとっては、いつになるのかわからない、遠い遠い未来の物語ー。

 

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