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土竜の街は・・・?(第2話)

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 通行の許可が下りたので、門番のドワーフに軽く挨拶をしてから、ベンジャミンの集落に入ることにする。

「へえ~、ここが土竜さん達の街か~、いかにも地下の街って感じだねぇ」

 入り口で、物珍し気に周囲を一通り見まわしてから、早苗が感嘆の声を上げた。

 建物の作りなどは、至って大樹のものとそんなに大差はない。当たり前だが、地上とは異なり空ーというか、天井や街を覆っているのは自然の外壁だ。天井というか、空に該当する部分に、この地下世界の都市を照らす人工太陽のような大型照明が存在している。そして、街を覆う外壁にも窓があることから、どうやらその部分にも居住空間があるようだった。

 また、不思議なことに、別に蒸気機関を用いているわけでもないのに、あちこちにパイプがある。前文明時代、蒸気機関は、後に内燃機関に取って代わられ、その後それ以上の革新は途絶えたはずだ。

 もし、蒸気機関が内燃機関にとって代わられることなく、そのまま進歩していれば、それを活用している都市は、きっとこんな光景になっていたのかと思わせるようなものだった。

「別に、蒸気機関を用いているわけでもないよな、この街」

「おいらは難しいことはわからないけど、少なくとも蒸気機関のためにこの配管があるわけではないよ」

「ふむ」

 モリガンが、近くの建物につながれている配管を見ながら、

「これは・・・魔力の供給用の配管じゃな。わしも、実物は初めて見るが・・・まあ、確かにかつて蒸気機関とやらが盛んだった頃の配管に作りは似ておるな。紛らわしいが、これは魔力結晶から出る魔力を送るために、特殊金属を加工して作られたものじゃ・・・見た目は似ておるが、全くの別物じゃ」

 さすが、魔女なだけあって、魔法絡みのものには詳しいモリガンである。ただ、彼女が蒸気機関についてもある程度かじっていたというのはいささか意外だった。
 
「まあ、わしも前文明時代の文献にある写真を見たという程度じゃがな、蒸気機関に関しては」

 頭を掻きながら、モリガンは他の建物も確認する。魔女としての性なのか、どれだけの魔力が供給されているのか、それが気になるといった感じだ。

「魔力結晶は、大きさにもよるが、凝縮された魔力が膨大じゃからのう。取扱いに気をつけんと、とんでもない事故につながりかねん」

「・・・そういえば、前文明時代においても結構ガス爆発とか原発事故とかそういう大事故が絶えなかったという話を聞いたことがあるな・・・」

「まあ、今の時代はそれほどでもなくなったがのう。ただ、やはり魔力結晶を扱う以上は、やはり注意せねばならん」

 それを聞いた晶が、モリガンを皮肉る。

「・・・毎回アトリエを爆破する誰かさんに言われたらおしまいだな」

「む・・・」

 言い返せないモリガンであった。

「難しい話はいいよ~晶君。私、違う場所も見てみたいな~」

「我輩も、どこかで休憩したいですニャー」

 早苗とミケさんがせかしてくる。

「そうだな、すまなかった、ベンジャミン。足を止めて。さっそく街を案内してくれないか」

「いいぞ」

 こうして、晶たちはベンジャミンの後に続いて、街を見て回ることにしたのだー。
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