テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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カルミナとブラーナ(第20話)

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「親玉が、地上に降りてきたぞ」

 女性陣の見事な活躍もあり、そのほとんどの害蟲達が駆除されていく中ー。

 ついに、親玉クラスと目される個体が活動を開始した。

 今までは、周囲の手下たちに対して、主に力を送り続けていただけだったのが、そのほとんどがやられてしまったために、とうとう自らが戦いの場に躍り出てきたのだ。

 片方が腕3本、反対側が花弁、頭部がアンモナイト型という、なんとも不気味な形状の害蟲の姿に、思わず息を呑む《ラピュタ》の面々。今まではその姿を遠目で確認してはいたものの、さすがにこうも間近でこの形状を見ると、今までにない緊張感と恐怖心が湧き上がってくる。

「みんな、しっかりして!」

 そんな中、カルミナが檄を飛ばした。

「翔、卓、あたしたちも援護するから、何とかこいつを仕留めて!」

 周辺にいた害蟲をほぼ片付けたカルミナが、残りの害蟲を近づかせまいと、片っ端からチャクラムで切り裂いていく。「ライフ・リンク」による能力向上の効果は、まだしばらくの間は続きそうだ。

「敵も残りわずか・・・このまま押し切りましょう!」

 ブラーナも、軽やかに太刀を振るう。その動きは、まるで剣舞のようだ。これが舞台の上なら、まさしく彼女は見る者を魅了する存在となっていただろう。もちろん、ブラーナの今の動きも「ライフ・リンク」があってのことだが、例えそれがなくとも、この華麗な剣裁きは魅惑的なものだったに違いない。

「これは・・・男性陣のお二人に加勢した方がよさそうですね・・・他の害蟲なら、あとはカルミナとブラーナだけでも何とかなりそうですし」

 黒羽は、鎌の魔力濃度をさらに高めて、翔と卓のもとへと急いだ。

「黒羽!」

「加勢します、お二人とも」

 黒羽が黒光りする鎌を振りかざしながら駆け寄ってくる。その姿は、さながら命を刈り取るためだけに現れた死神といったところだ。

 辺りに黒い羽根が舞い散る。そして、まき散らされた羽根の奥に見えるその顔は・・・。

 氷の笑みだ。見る者に寒気を覚えさせるような、およそ年頃の少女のものとはかけ離れた、残酷な笑い。

 いや、年端もいかぬ少女だからこそできる笑いかー。

 翔と卓の背筋に一瞬悪寒が走った。まるで、心臓を鷲掴みにされたような錯覚を受ける。

「そりゃあ、手伝ってくれるってんなら、ありがたいけどよ・・・」

 翔が、隣の背の高い相棒を見上げる。声を潜めて、黒羽に聞こえないように語り掛けた。

「何か、こいつ怖いところあるよな・・・」

 卓も、黒羽に対して何か言い知れない不気味なものを感じてはいる。前に一緒に戦った時に、そのことに気が付いたのだ。翔も、多分その時に感じ取ったのだろう。

 黒羽の放つ異様さを。

 普段は、ただおとなしいだけの少女で、むしろ容姿の可憐さから《ラピュタ》のマスコット的な存在だった。

 だが、戦いの場で彼女が放つ独特のオーラが、この少女が自分たちとは相いれないを秘めた存在なのだということを痛感させるのだ。

 尤も、今はそんなことを気にしている場合ではない。敵は、もう目の前だ。

「翔、今は目の前の敵を討つことに集中しろ」

 卓は、相棒を叱咤する。今は、とにかくこの親玉クラスを倒さなければ。

 ーたとえそれが、悪魔や死神の力を借りることになったとしてもー。

「わかった、加勢助かる、黒羽」

「ええ、敵を倒しましょう」

 親玉クラスが咆哮を上げる。いよいよやる気のようだー。

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