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カルミナとブラーナ(第35話)

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 いきり立った害蟲が、カルミナ達に襲い掛かるー。

 とはいえ、さすがに腕3本を行動不能にされ、自慢の毒も使えないとあっては、もはや趨勢は決したも同然だった。先ほどの目くらましも、もはや黒羽に能力を抑えられており、使用することができない。何より、全員にもう油断は、ない。

「喰らいやがれ!」

 卓の棍による打突が連続で繰り出される。それらをまともに食らい、ひるんだ害蟲に、翔が追い打ちをかけた。

「おらあ!」

 翔のツメが、害蟲の胸部を切り裂いた。人間に例えれば血液に相当する体液が噴き出す。体液・・・とはいっても、害蟲の根源は怪異ー液体状に見えても、その実態は魔素だ。したがって、害蟲の体液をまともに浴びると危険である。

「アブね!」

 何とか返り血を避けるため、後方へと跳躍する翔。少量ならそれほど影響はないとはいえ、浴びる量は最小限に抑えなければならない。

「これでどう!?」

 カルミナが、翔よりもさらに後方からチャクラムを放ち、弱った害蟲の体をしたたかに切りつける。

 害蟲には、実は再生能力がある。したがって、3本の腕や花弁も、ある程度の時間経過で復元することは可能だ。ただし、それなりに時間を要するので、戦いの最中に再生できるほどの能力を持つ個体は限られてくる。

 この害蟲は、そこまでの再生能力はないようだ。もちろん何日かすれば腕も花弁も再生できるのだろうか、残念ながら、何日も待ってくれるほどカルミナ達はお人好しではない。

 黒羽の能力封じとカルミナ達の攻撃によるダメージのためか、もう害蟲には激しく動き回るほどの活力は残されていないようだ。

「これで・・・止めよ!!」

 ブラーナが太刀を振り下ろすー害蟲との距離は離れているはずだが、太刀から放たれた衝撃波が、害蟲を頭から股間まで真っ二つに切り裂いたー。




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