テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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水無杏里の物語(第2話)

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「お前か・・・ギムナ」

 姫ーと呼ばれた女性は、振り返ることもなく、おのれの従者に問いかけた。

「ギムナ、やつらの動きはどう?」

 ギムナと呼ばれた忍び装束の男は、主が見つめている少女を一瞥し、そしてすぐに視線を戻してから答えた。

悠久王国レギューム・エタールヌムの連中が、主に大樹で活動を再開したようです。このところ、大樹に蟲どもが湧いているのも、それに関係のあることかと」

「あの不死者ども・・・」

 忌々し気に、女性は呟いた。

 悠久王国レギューム・エタールヌムは、今までに何度も、刃を交えてきた相手だ。不死者と呼ばれる、死を超越した者達が率いる能力者組織ーその目的は、不死者による永久の王国の建造とされている。そして、彼らと幾度となく続いてきた戦いの結果、彼女は額に傷を負うことになる。

「あいつらのことだから、陰でこそこそと蟲を放って大樹を内部から腐らせようとしているのでしょうね」

 皮肉と侮蔑を込めて、女性は独り言ちる。やつらには、それこそ永遠にも等しい時間がある。それゆえに、物事を性急には進めず、対象をなぶるかのようにじわじわと侵食していくような、そのようなやり方を好んだ。

「蟲どもを放ち、自分たちは高みの見物ー暇を持て余した不死者ならではのやり方・・・でしょうか」

「そんなところかしらね・・・」

 最近、大樹において蟲の活動が活発化している原因も、やつらにあるー。

「まあ、お前たちにはしばらくの間、大樹を監視してもらうことになるわ」

「御意のままに、世羅姫様」

 彼女-世羅姫は、従者にそう告げると、再び幹の中から上半身をさらけ出している少女ー水無杏里へと視線を向け、そしてー。

「気になるかい?彼女のことが・・・ギムナ」

 ギムナに尋ねる。ギムナは、主人の問いかけに、逡巡を見せたが、すぐに気を取り直して、

「いえ」

「別に、正直に答えていいよ、ギムナ。お前だって男だ。これほど美しい女性の裸体を見て、心動かぬほど朴念仁でもないだろう」

 クスクス・・・と小さく笑いながら、自身の従者をからかい始める。
 
 確かに、水無杏里は美しい。年は15,6といったくらいだが、たわわに育った乳房などは、既に立派な女性そのものだった。肩までの髪は、ゆるくウェーブがかかっており、それが天空世界の風に靡いている。肘とへその真下の部分からは幹の中に埋まっているが、上半身だけでも十分、男たちの目をくぎ付けにするだけの魅力はあった。

「姫・・・」

 返答に困るギムナ。そんな様子を見て、満足したのか、世羅姫は得意げに説明した。

「綺麗な娘だろう・・・名前は水無杏里というんだ」

 再び、杏里の方に手を伸ばす。

「彼女は・・・私の可愛い傀儡だよ。まだ眠りから目覚めないけどね・・・彼女の「相手に共感する力」は、これからの戦いで必要となるわ・・・絶対に」

 ふいに、世羅姫の体が宙に浮かぶ。そしていまだ眠りから覚めない少女ー水無杏里の頬を両手で包み込んだー。

「さあ、早く目を覚まして・・・私の可愛い傀儡」
 
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