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水無杏里の物語(第9話)
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杏里たちを乗せた自動走行車は、そのまま街道を北へと進んでいく。聞いたところによると、杏里たちの街は浮遊大陸の中でも北方に位置しているらしかった。
「町・・・と言っても、そう大きな場所ではなくてね。みんな家族みたいなもんさ」
ははは・・・と笑いながら、杏里の父・壮太が町について語り始めた。
「もっとも、町からさらに北に行けば大きい都市もあるけどね・・・さて、もうすぐだ」
自動走行車は、浮遊大陸の決められたルートを走行する現文明の主要交通手段だ。そして、今カイトたちの車が走っている街道は、左手に湖と、その先は浮遊大陸の端ーつまりは断崖を臨む、浮遊大陸の中でも周縁部に近いルートでもある。
湖の先は断崖ーつまりは、湖の水が、滝のように浮遊大陸から流れ出ており、その受け皿が、さらに下方に位置する浮遊島の湖となっている。いや、下方の浮遊大陸の方が実は大きいので、ちょっとした海と表現した方がいいのかもしれない。おそらく、空から飛空船や飛空鎧で見れば、その光景がいかに幻想的な物なのかよくわかるだろう。
杏里も、小さい頃からよく父に聞かされていた話だが、実際にその光景を見たことはない。せいぜい、動画や写真で見たことがあるくらいで、実物を見たわけではなかった。彼女が、空にこだわるのも、実際に自分たちの住んでいる浮遊大陸が、外から見ればどのようなものなのか知りたいというのもあるのかもしれない。
「カイト、町についたら、さっそくお医者様に診てもらいましょう。念のためよ」
「そうだね・・・娘の能力を信用していないわけではないが、一度きちんと診てもらった方がいいだろう。グエン爺さんのところに行くか」
グエン爺さんーというのは、町で診療所を開いている老医者だ。元々は他の町で診療していたらしいが、数年前からこちらに診療所を開いて、町のみんなの面倒を見てくれている。人柄もよく、町中の人から慕われている人物だった。
杏里も、持ち前の治癒能力を生かして、しばしばグエン爺さんの手助けをしていたりする。この前など、このまま看護師にならんかと誘われたくらいだった。実際のところ、杏里の治癒能力はかなり高く、それゆえ人手不足になりがちな診療所にとって杏里がいかにありがたい存在であるかは、改めて語るまでもないことだ。
ただ、杏里にもやりたいことはある。それは、カイトとの出会いで、単なる憧れから、将来の夢へと強化されていった。
ーー
少しして、街道も終わりが近づいてきた。門が見える、どうやら、町の入り口に到着したようだった。
「よし、ここが町の入り口だ、ようこそ、カイト君。僕たちの町ナジェーツァへ」
「町・・・と言っても、そう大きな場所ではなくてね。みんな家族みたいなもんさ」
ははは・・・と笑いながら、杏里の父・壮太が町について語り始めた。
「もっとも、町からさらに北に行けば大きい都市もあるけどね・・・さて、もうすぐだ」
自動走行車は、浮遊大陸の決められたルートを走行する現文明の主要交通手段だ。そして、今カイトたちの車が走っている街道は、左手に湖と、その先は浮遊大陸の端ーつまりは断崖を臨む、浮遊大陸の中でも周縁部に近いルートでもある。
湖の先は断崖ーつまりは、湖の水が、滝のように浮遊大陸から流れ出ており、その受け皿が、さらに下方に位置する浮遊島の湖となっている。いや、下方の浮遊大陸の方が実は大きいので、ちょっとした海と表現した方がいいのかもしれない。おそらく、空から飛空船や飛空鎧で見れば、その光景がいかに幻想的な物なのかよくわかるだろう。
杏里も、小さい頃からよく父に聞かされていた話だが、実際にその光景を見たことはない。せいぜい、動画や写真で見たことがあるくらいで、実物を見たわけではなかった。彼女が、空にこだわるのも、実際に自分たちの住んでいる浮遊大陸が、外から見ればどのようなものなのか知りたいというのもあるのかもしれない。
「カイト、町についたら、さっそくお医者様に診てもらいましょう。念のためよ」
「そうだね・・・娘の能力を信用していないわけではないが、一度きちんと診てもらった方がいいだろう。グエン爺さんのところに行くか」
グエン爺さんーというのは、町で診療所を開いている老医者だ。元々は他の町で診療していたらしいが、数年前からこちらに診療所を開いて、町のみんなの面倒を見てくれている。人柄もよく、町中の人から慕われている人物だった。
杏里も、持ち前の治癒能力を生かして、しばしばグエン爺さんの手助けをしていたりする。この前など、このまま看護師にならんかと誘われたくらいだった。実際のところ、杏里の治癒能力はかなり高く、それゆえ人手不足になりがちな診療所にとって杏里がいかにありがたい存在であるかは、改めて語るまでもないことだ。
ただ、杏里にもやりたいことはある。それは、カイトとの出会いで、単なる憧れから、将来の夢へと強化されていった。
ーー
少しして、街道も終わりが近づいてきた。門が見える、どうやら、町の入り口に到着したようだった。
「よし、ここが町の入り口だ、ようこそ、カイト君。僕たちの町ナジェーツァへ」
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