テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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水無杏里の物語(第8話)

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 杏里たちは、自動走行車に乗り、一路町を目指した。

「そう言えば、杏里はなぜあそこにいたんだ?」

 カイトが、ふと気になって杏里に尋ねた。

 考えてみれば、あの辺りは本当に何もないところだ。道以外は草原と森が広がっているくらいで、それ以外は見渡す限り、何もない。もっとも、はるか遠くにはこの浮遊大陸を内包している惑星の外殻は見えるーが、しかし外殻は何もここでなくともみられるはずだ。ちなみに、外殻は公転しており、時間によっては、大地が外殻の影に隠れることもある。

「うーん、探し物、かな?」

「探し物?あんな場所で?」

 ますます不自然だ。あんな何もない場所で、何を探していたというのだろうか?

「いつもとは異なる日常ー実際、あそこであなたに出会うことができたわ」

 静かな微笑みをたたえながら、杏里は小首をかしげるような仕草をして、カイトのことを見つめた。さすがに、これだけ間近で見つめられると、カイトも気が気ではなかった。

 カイトがドギマギし始めたのを見て、少しからかいすぎたかなと思ったのか、本当の理由を打ち明ける杏里。

「ふふ、あそこの近くにはちょっとした用事があったのよ。朝にお父さんに送ってもらって、午後帰るつもりだったけど、そうしたら倒れていたあなたを見つけたってわけ。お父さん忙しかったから、私だけあそこに残ってたのよ」

「あそこの近くって・・・確か、飛空鎧の傍にあるのは森しかなかったような」

「そうね」

 杏里が目を細める。

 そんな場所に女の子一人で大丈夫だったのだろうか・・・と訝し気に思っていると、杏里がカイトの疑問に気が付いたのか、

「もちろん、一人じゃないわよ」

「え?」

「あの森の中には、知り合いが住んでいるのよ。まあ、町から離れて暮らしているから、少し変わった人だけど、私が安心して頼れる人よ・・・近いうちに、カイトにも紹介するわね」

 あの森の中に、杏里の知り合いが住んでいるのか・・・その話を聞いて、カイトがあることに気が付いた。

「大変だ」

「え?」

「飛空鎧をあんなに森の近くに不時着させてしまった・・・もしかして、森に被害とか出てないかな」

 この大陸に不時着する際、もはや飛空鎧は制御不能に近い状態だった。さすがに直接森に降りたわけではないが、それでも重量級の物体が地上に落下したのだ。かなりの衝撃と音が生じたことだろう。森の住民に対して、迷惑をかけてしまったのではないだろうか。

「それなら・・・多分大丈夫よ」

 杏里はくすくすと笑いながら、

「あの人、その程度のことじゃ動じないわ・・・さすがに自分の家を潰された・・・とかだったらまずいけど、基本周囲のことには無頓着なのよ。たとえハリケーンが来たって、自分の家さえ無事ならば何の関心もないわ・・・」

 そして、両手の上に顎を載せてカイトを見つめながら、軽く微笑んだ。

「言ったでしょう、変わり者だって」

 


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