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空と大樹(第10話)

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「おおーい、ミケさんや~大丈夫か~?」

 全く心配していなさそうな声で、晶が真っ白な状態のミケさんに呼び掛けた。

「お前さんが大丈夫かどうか、様子を見に来てやったぞ・・・」

 既に、真っ白に燃え尽きているミケさんを見れば、どんな状態なのかは一目でわかるが、ここは敢えてミケさん自身に問いかけることにする。

「も、もうだめニャ~」

 ミケさんが応えるが、その声にいつもの力はない・・・どうやら、本当に燃え尽きてしまったらしい。

「うーん、晶君。昨日の今日でこの状態だと、ミケさんがここでやっていくのは難しいかもしれないね・・・」

 早苗が、ミケさんを心配して頭をナデナデしてやる。

「こニョままでは、我輩過労死してしまいますニャー。お助けニャー」

 早苗に抱き着いた格好で、ミケさんが泣き言を喋る・・・さすがに、いつもの「ふふふ・・・」という不敵笑いはない。

「お前さんが過労死するレベルってのは、さぞかし低そうだな・・・」

 半眼状態の晶がミケさんを無理やり早苗から引きはがした。おそらく、こいつは少し作業しただけですぐにバテたのではないかと思われる・・・はっきり言って、過労死どころの騒ぎではないだろう。

「とにかく、昨日の今日で音を上げても、借金は返せないぞ、ミケさん。お前さんも、このままあいつらに追い掛け回されるのはごめんだろう」

 確かに、ここで働いて借金を完済しない限り、またポン太達に追い掛け回されることになる。そのたびに、あの「はらいた~まえ」コーラスを聞かされることとなるのだ。

「晶よ・・・少し相談があるニョだが・・・」

 よろよろと、おぼつかない足取りで晶に近寄ってくるミケさん。

「何だよ、相談って?」

 訝し気に、そして、どうせまた大した内容でもないだろうと思いつつも、ミケさんの相談に乗ってみる。

「晶よ・・・ここは一つ我輩を助けると思って、どうか、我輩ニョ連帯保証人に・・・」

 ぴきんと、晶の額に青筋が浮かび上がり、その口角は釣り上がった。そして、晶の会心の一撃が、見事ミケさんに炸裂したのだった・・・。

ーー

「誰が、なるかあぁぁぁーー!!」

 ・・・ミケさんのわがままな相談を、その右アッパーで一蹴した晶ー。

「ああ、猫さんが!!」

「晶君、いつも以上に気合が入ってるね・・・」

「ミケさんが飛んでっちゃったよ・・・」

 杏里はかなりの焦り顔、早苗も少々焦り顔、カイトは呆れ顔で、晶の右アッパーを食らい、天井に頭が突き刺さった状態のミケさんを見やったー。
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