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咲那・全裸の逃避行(第27話)

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「・・・そうですね、本当はあなたともっとお話ししたかったのだけれど、これくらいでお暇した方がよさそうですね」

 余裕の笑みを浮かべながら、ヴァルキリーは、昨日と同じく翼を広げ空へと飛び立とうとする。

「・・・これから先、わたくしの選定を待っている魂の下へと行かなくては」

「はん、仕事熱心なことで大変結構なこって」

 咲那が、ヴァルキリーに悪態をつきながら、昨日と同じく中指を立てる。つくづく、自分たちは嫌われているのだな・・・と、ヴァルキリーは思いながら、

「そう言えば、これから向かう浮遊大陸には、魔法系の魂も回収に行くのでした」

「・・・何!?」

 魔法系の魂・・・まさかとは思うが、魔道士とか魔法使いの類か・・・。

「その浮遊大陸で、ちょっとした戦闘がありまして・・・私にとっては、選定するための駒がたくさん手に入りそうだというわけで」

「・・・駒、ね・・・」

 ヴァルキリーの「駒」という言葉に不快感を覚える。彼女に選定されるということは、そいつは「もう死んでいる」ということだ。戦いがあれば、戦死者が出るのはやむを得ないとして、それを面前で嬉々として語られるのは、さすがに反感を覚える・・・が、それに対していちいち激昂していては、彼女のペースに呑まれていくだけだ。

 ヴァルキリーは、そんな咲那に対して挑戦的な笑みを浮かべながら、

「特に、はそろそろ欲しいと思っていたのですよ・・・」

「・・・」

 こいつ、まさか・・・。

 咲那は、怒りをこらえつつ静かにヴァルキリーに尋ねた。

「お前がこれから向かおうとしているっていう浮遊大陸は、どこにある?戦いがあった場所というのは、どこだ?」

 翼をはためかせ、咲那を面白そうに見下ろしながら、ヴァルキリーは口角を釣り上げて告げるー。

「あなた方の世界で、惑星Σ-11と呼称されている場所ですよ・・・」

「・・・てめえ!!」

 咲那の顔が険しくなる。どうやら、この戦女神さまには、こちらの事情はかなりお見通しらしかった。

「そんなに睨まないでください、咲那さん。綺麗なお顔が台無しですよ」

「黙れ!!」

 まさかとは思いたいが、モリガンが戦いに巻き込まれた可能性も出てきた。ゆえに連絡が取れない状態になっているのだと。

「フフフ・・・咲那さんのお友達は、果たして今頃どうしているのかしら?」

 翼を強くはためかせたかと思うと、ヴァルキリーは一瞬で姿を消した。空間転移の術だ。

「・・・モリガン、お前・・・」

 咲那も鏡香も、モリガンの実力はよく知っている。ゆえに、そう簡単にやられることは無いとは思いたいが・・・。

「焦るな・・・とにかく、明日鏡香と合流したら、すぐにでもモリガンを迎えに行くぞ」

 焦りは禁物とは言うが、何もできない今の自分が非常にもどかしい咲那だったー。
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