テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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黒羽一人旅(第9話)

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「・・・あれは・・・」

 ふと、何気なく見上げた空に、単眼の蝙蝠の姿をした魔法生物が飛び交っているのが確認できた。

「あれは、モリガンの使い魔ですね。どうやら、この辺りの警戒のために使い魔を出したようですが・・・」

 この使い魔だが、魔力の素質の低いものには視認することさえできない。黒羽は当然視認できるが、魔法よりも闘気の扱いを得意とするアサギはその存在に気が付かなかった可能性もある。

「・・・前回、この付近でアサギと戦った時には木が付きませんでしたが、もしかしたら、モリガンは以前からこの使い魔で・・・」

 自分たちのことを見ていたのかもしれない・・・と黒羽は思い至った。

「これは・・・なおのことこちらの正体がモリガン達に知られないように気をつけなければなりませんね」

 現在の状況は、黒羽はモリガンの正体(現在はメリル)を知っているが、モリガンは黒羽のことには気が付いていないといったところだ。しばらくは、この女子学生モードのまま過ごすことになりそうである。

「それにしても・・・あの戦いを見られていたのであれば・・・気恥ずかしいやらなんとやらですね」

 あの戦いのとき、黒羽もアサギもお互い高揚感に包まれ、なんとも言えぬ愉悦感を味わっていた。その姿を誰かに見られていたとなると、なんとも恥ずかしさが滲み出てくる。

「・・・今は、私の方が気が付いていて、あのお二人は気が付いていないようですし、少し悪戯してみたい気もしますね・・・もちろん、ばれない程度に、ですが・・・」

 黒羽は、口の端に笑みを浮かべると、せわしなく空を飛び回っている1匹の使い魔に意識を向けた。使い魔自身は、黒羽に対して関心はないようだ。主人であるモリガン同様、今の黒羽をただの女子学生だと思い込んでいるのだろう。

 黒羽は、1枚の黒い羽根を取り出すと、使い魔の死角になっている場所をめがけて羽根を飛ばした。羽根は見事、使い魔に突き刺さり、一瞬だが、使い魔の動きが硬直したかに見えた。

「・・・人間に例えれば、蚊に刺された程度のはずです」

 ゆえに、すぐには気が付かないはずだ。事実、使い魔は何ら気にするでもなく空を飛び回っている。使い魔に突き刺さった黒い羽根は、霧状になり、そのまま使い魔の体の中に吸い込まれたように見えた。

「これで、あの使い魔は、同時に私のしもべともなりました」

 これで、必要とあらば、いつでもこの使い魔の制御を奪うこともできる。

「アサギとの戦いをのぞき見された意趣返しというわけではありませんが・・・まあ、このくらいは、ね」

 黒羽の瞳が愉快気に細められたー。
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